タガララジオ 48 「2017年、晩秋に聴かれるべき5枚のピアノ盤を!」

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track 400-404
Niseko-Rossy Pi-Pikoe

2017年、晩秋に聴かれるべき5枚のピアノ盤を!

 

「ECMレーベルはここ10年に、クレイグ・テイボーン、アーロン・パークス、ヴィジェイ・アイヤー、菊地雅章、ダヴィ・ヴィレージェスと、ダウンタンシーンからピアニストたちを世界にピックアップしてみせたが、それはそのままトップ5であり、ヴィレージェスは決定的に一歩リードしているようだ、」

とタンカを切っています、

 

<track 400> Chris Thile & Brad Mehldau (Nonesuch) 2017

たまらんぜよ、この音色の快楽、

メルドー、メルダウ?、

Chris Thile & Brad Mehldau – Scarlet Town (Live)

You Tube のライブ映像を観ていて、マンドリンの名手クリス・シーリ36と、まあこうなるわなー、メルドーはとびきりの伴奏になってしまう、やりたいならやらしときー、という構え、そこが期待値の上限、ではなかったー、

このスタジオ録音の演奏の見事さは二番目に言うところなんだ、この、耳をそばだてる快楽に焦点があたった”響きの快楽”なのだ、想定外に気持ちいい、さすが『ラーゴ』でジャンルを飛び出す音像挑戦を果たしただけあると思う、さすがメルドーの耳だ、2CDでももっと聴きたいと思わせるプラトー状態が続くよ、

益子博之×多田雅範四谷音盤茶会、年4回、現代ジャズ最前線を狩猟するリスニングイベントでも、楽器本来の音色を逸脱するもしくは読み替える、ブレンドする音色を導入するといった傾向を見るが、メルドーもまたジャズシーンの王道に居ながらにして、そういった拡張の欲望を自然に同期しているように感じられてこっそりうれしい、

 

<track 401> Komitas: Seven Songs / Lusine Grigoryan (ECM New Series 2514)  2017

ひっそりと話題にもならずにリリースされているECMピアノの神盤、見逃し厳禁アイテムだよECMファンクラブのみんな、

なんだろ、この切ない乾いたカンジ、1曲目はECMらしい極大化されたロマンチシズムの罠に響かせているところはあるんだが、2曲目からは、もう、

10分のトラック、次に長いのは4分のトラック、あとは2分や数十秒のトラック、星座のような並び、

映像的であり、想起的であり、抗いがたい郷愁の感情であり、でありながら、過剰も誘惑も怠惰もこけおどしもためにする議論もない、子どものためのピアノ小品集のような難易度、サティでもグルジェフでもなかとよ、...三善晃『海の日記帳』のとなりに置くかなあ...、おれ今いいこと言った?、

この屹立する、孤独に耐える精神、かつてジャレットはこの場所の近くまで行けたような気もする、

 

<track 402> Another Time: The Hilversum Concert / Bill Evans  2017

アナログ、世界的に売切れ続出、ジャズジャイアント、ビル・エヴァンス、お蔵音源の出現だ、1968年『アット・モントゥルー』(お城のエバンス)の7日後のライヴ音源、2日前にスタジオ録音『サム・アザー・タイム』をこなしたばかり、で、短期間でこうもコンビネーションの密度は変わるのかね、

お城のエバンスを聴いたのははたちの頃で文部科学省に行ってしまった三鷹の友だちんちで、こんなのやめてキースの『残氓(ざんぼう)』聴こうぜーと二人でショートピース吸っていたことしか憶えていない、

こっちのほうが断然に音がいいのでディジョネット(新人25さい!)のタイコがよく聴こえるし、おいらには常にエヴァンスのピアノ運指は定型にしか聴こえないのでラファロ~モチアンとかサイドメンしか耳にしない構えなのだが、ここでのゴメス~ディジョネットには大満足だ、

菊地雅章がおれはエヴァンスだめなんだよね例外は『トリオ64』でね、わたしもそうですよー!、そうかいゲイリー(ピーコック)も同じだって言っていたよ、ってあれはピーコックのベースじゃないですかー、あとから気付いた『トリオ64』はピーコック~モチアンであって菊地雅章テザートムーンの相方二人であって、

その時芸大のピアノはドイツ流儀なのであってフランス流儀じゃねーからな、とか(その逆かい?)話されてよくわからなかったです、

 

<track 403> To Sing From Memory / Satoru Ajimine (Waon Records)  2017

安次嶺悟(ピアノ) /小笹了水(ベース) /佐々田光則(ドラムス)

たまらない!このメロディストぶり、ピアノトリオの編成だけれどジャズピアノにアレンジしてみました的な逃げはみじんもない、旋律に思いを込めるピュアネス、極上のピアノタッチ、もうステンソントリオはいらない、これは渋谷毅のピアノ作品の横に並べることにします、

NHK連続ドラマ「まっさん」でエリーが歌った「The Water Is Wide」(ECMファンにはチャールズ・ロイドの名盤として有名)、ビリー・ホリディ『奇妙な果実』やシナトラで聴いた「I’ll Be Seeing You」、な、なんとスタレビ(Stardust Revue)のバラッド「木蘭の涙」まで演っている、

1. Words Get in the Way (Gloria Estefan)
2. The Touch of Your Lips (Ray Noble)
3. The Water Is Wide (Scottish Traditional)
4. I’ll Be Seeing You (Sammy Fain, Irving Kahal)
5. Two for the Road (Leslie Bricusse, Henry Mancini)
6. I’ll Remember April (Gene De Paul, Pat Johnston, Don Raye)
7. Solitude (Duke Ellington, Eddie De Lange, Irving Mills)
8. Les Parapluies De Cherbourg (Jacques Demy, Michel J.Legrand)
9. Blue Monk (Thelonious Monk)
10. Cry Me a River (Arthur Hamilton)
11. Mokuren no Namida「木蘭の涙」(山田ひろし, 柿沼清史)

ふと手にした日本の自主制作レーベル、録音の良さ、響きのまっとうさ誠実さにも聴き惚れるばかり、この演奏と録音は音楽の神さまに愛されていると思う、

 

<track 404> Silvestrov: Bagatellen Und Serenaden / Valentin Silvestrov (ECM New Series 1988)  2007

はからずもピアノ盤ばかり並べているのでこれもタガララジオに置かせて、

「この、即座に涙腺崩壊するシルヴェストロフ自身のピアノソロの冒頭は、ECMファンにだけ許された美しさだ、録音されることを前提としていないシルヴェストロフの演奏にアイヒャーが打たれて、ということだから、なのであまり聴かれてほしくない、未来の恋人とのひとときのために秘蔵しておきたい、おれは、だからみんな聴くなよ、どうせろくなことしか言わないだろうからよ、(冒頭のこのトラックをYouTubeで探しても無駄だぜ)、」多田雅範

異様な残響音、リヴァーブ、反則だろー、という前半14トラック、後半10トラックは映画音楽も嫉妬するだろうという喚起力に満ちたオケ作品、

こないだの「ECMレーベルの新作を聴くシリーズ2017秋、第七打席」は公演チラシをみんなで共有したい一心で載せていただきましたが、

わたしは年収200万未満の貧困リスナーなので入場料5千円どころか平和台から吉祥寺までの電車代すら出せなかったのでございます、シルヴェストロフ80歳の奇跡のコンサート、友人に感想をたずねると「最高でした!舞台と満員の客席との極限的な、交感とでも言うのでしょうか、彼方の気配が一人ひとりの意識の内部をめぐってゆく、降霊会みたいでした」と即座に返信メール、このやろってカンジですね、

ほんとはオザケン+セカオワを筆頭にしてノンジャンルでノータイムなタガララジオを書こうと思っていたのですが、ピアノ盤ならべていたら締め切り日になっていたという、

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多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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