よしだののこのNY日誌 第4回

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text and photos by 吉田野乃子 Nonoko Yoshida

全国的に猛暑が続いているようですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。今年のNYの夏は大変過ごしやすく、日当りのほとんどない、洞穴のような部屋に住んでいる私は、まだ扇風機すらフル稼働させずに過ごしています。

私事ですが、7月上旬、地元北海道で妹の結婚式が行われたため、急遽短期の帰国をしておりました。こちらの記事でも告知させていただいておりましたが、帰国中には、北海道、東京、愛媛で、ソロやコラボレーションのライヴがあり、どのイベントでも素敵な共演者の方々、お客様に恵まれ、大変楽しい帰国ライヴとなりました。お世話になった方々、応援してくださった皆様、どうもありがとうございました!

NYに帰って来てからも、早速、楽しいイベントをいろいろと見て回りました。

■ 7月25日(土)
THE GATE(野瀬栄進、武石聡)@ Scholes Street Studio, Brooklyn

北海道小樽市出身、在NY20年のコンテンポラリージャズピアニスト、野瀬栄進さんと、伝統音楽から前衛まで幅広いシーンでご活躍のパーカッショニスト、武石聡さんのデュオプロジェクト『THE GATE』のライヴを見に行きました。

長めの1セットライヴは、全編、野瀬さんのオリジナル曲です。ツアーに行かれた土地で書かれた曲、亡くなった先生へ捧ぐ曲、NYから北海道へ、様々な苦難を乗り越え海を渡った歴史あるピアノの曲・・・。深い思いがこもった独特でユニークな各曲が、野瀬さんの持つ、クラシックとジャズの強靭なバックグラウンドによる、超絶で力強いテクニックによって演奏され、様々な風景や物語が浮かび上がります。

モートン・フェルドマンが「作曲する時、オーケストラ曲とピアノ曲の違いはなんですか?」と聞かれたときに「ほぼ一緒です。ただ、オーケストラにはペダルがついていない。」と答えた、ということを昔、音楽の授業かなにかで聞きましたが、本当にピアノは、オーケストラのように縦横無尽で、一人でなんでもできてしまう楽器だと思います。それを自由自在に扱う野瀬さん、更に、武石さんの演奏される様々な種類のパーカッションも、お一人でパーカッションアンサンブルを引き連れているかのような迫力とバラエティなのです。決して大きくはないセッティングから、絶妙なタイミングで繰り出されるカラフルな音色と、うねるようなグルーヴ……。(音楽の授業の成績がいつもトップだった、コロンビア出身の大学のクラスメートが「世界一好きな打楽器奏者は武石聡!」とよく言っていましたが、私も全く彼女と同意見です。)デュオでありながら、フルオーケストラが演奏しているかの様な広がりを感じるのです。フェルドマンではありませんが、「オーケストラにできて、このお二人にできないことはないのではないか……」と思うほどでした。

そんな素敵な道産子ニューヨーカー先輩、野瀬栄進さんは現在ご帰国中です!武石さんもご帰国されて『THE GATE』でのツアーや、ピアノソロなどで8、9、10月に全国各地で演奏があるようなので、スケジュールをぜひチェックしてみてください!

>> 野瀬栄進オフィシャルHP

■ 7月28日(火)
DJ Brother Mister (a.k.a. Christian McBride) @ Don Pedro, Brooklyn

「なんと、あの大人気ベーシスト、クリスチャン・マクブライドがDJセットをやるらしい、そして5ドルで見られるらしい」という情報をお友達からもらい、いそいそと夜遊びに出かけました。会場は、こぢんまりとしたステージが奥にある、そんなに大きくないバーで、地元のファンク・ジャズ・バンドが数組演奏、その後、ステージ上にDJセットを組み、マクブライド氏が登場です。70、80年代の王道ファンクを中心に曲をかけ(ジェームス・ブラウン、スライ、プリンス、クール&ザ・ギャングなど)更には曲に合わせて時々ベースを生演奏しちゃうマクブライド氏。

前衛音楽関係の知り合いにはあまり知られていないのですが、私は中学生の頃からアース、ウィンド&ファイアーがとんでもなく大好きで、アース周辺のファンク、ディスコ・ミュージックもお気に入り、そしてマクブライド氏の音楽も大好きで、高校時代に彼のファンキーな曲をカバーしていた程だったため、「こ、これは私のためにやってくれたイベントなのでは・・・」と大変テンションが上がりました。アースの曲のベースラインをマクブライド氏がかっこよく演奏してくれたときは鳥肌が立ちました。ご本人が楽しんでやっているような、NYならではのイベントだったのではと思います。

■ 7月30日(木)
Cyro Baptista’s Banquet of the Spirits@ Lincoln Center Out of Doors

「世界一好きな打楽器奏者は武石聡!」「私も!」と言ったばかりですが、この、ブラジル出身の世界的なパーカッショニスト、シロ・バティスタ氏も本当に最高です。彼のバンド、Banquet of the Spiritsは、メンバー全員が、超一流でなんでもできちゃうけど、遊び心が満載の凄腕面白ミュージシャン(シロさんはハービー・ハンコックやポール・サイモンなどとの共演でも知られるメジャーなパーカッショニストでもありますが、他の3人は基本的に前衛音楽のシーンで大活躍の中堅ミュージシャンです)。エンターテインメント性と、ものすごくハイレベルな音楽性、そしていつもビックリなことをしてくれる創造性を持った、私がNYで好きなバンドベスト3に入るグループです。

夏の間、約3週間ほぼ毎日行われる、このリンカーンセンターの無料野外ライヴは、NYの夏の風物詩になっていて、老若男女が楽しめる“わかりやすい”バンドが出ることが多いのですが、このハチャメチャで楽しすぎるバンドは、お客さんに媚びることなく(当たり前ですが!)彼ら独自の世界観を提供します。ジョン・ゾーン・ファミリーのボキャブラリーを強く感じさせる、“カット&ペースト(様々な雰囲気の音楽ジャンルが、映画のシーンが切り替わるかの様に次々と演奏される)奏法”や、ハンドキュー(シロさんのその場の合図に従って曲が変化します)を多用した演奏、はたまた、いつもの調子(?)でとんでもない下ネタの歌が出て来たり・・・。“こっちのシーン”の関係者はニヤニヤしっぱなしの、楽しいライヴでした。(なにも知らない一般のお客さんにしてみたらショッキングだったでしょうか。うふふふ。)

>> 参考動画 Cyro Baptista’s Banquet of the Spirits

この日はブラジリアン・サマーフェスタということで、トリに、アメリカ初登場のブラジリアンジャズオーケストラ、Letieres Leite & Orkestra Rumpilezzが出演しました。20人ほどの大人数編成で、大迫力の演奏。会場は大盛り上がりでした。今年の夏も、楽しい音楽に囲まれて過ぎて行きます。

参考リンク:

>> 『野瀬栄進+武石聡/The Gate~Live at Bechstein, New York』

>> 『野瀬栄進マンハッタン・トリオ/ウェイティング』

>> 野瀬栄進インタヴュー

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吉田 野乃子

1987年生まれ。北海道岩見沢市出身。10歳からサックスを始め、高校時代、小樽在住のサックス奏者、奥野義典氏に師事。2006年夏、単身ニューヨークに渡る。NY市立大学音楽科卒業。ジョン・ゾーンとの出会いにより、前衛音楽の世界に惹かれる。マルチリードプレイヤー、ネッド・ローゼンバーグに師事。2009年、前衛ノイズジャズロックバンド"Pet Bottle Ningen(ペットボトル人間)"を結成し、Tzadikレーベルより2枚のアルバムをリリース。4度の日本ツアーを行う。2014年よりソロプロジェクトを始動。2015年10月、ソロアルバム『Lotus』をリリース。現在、活動拠点を北海道に移す。

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