トランスワールド・コネクション

閲覧回数 4,918 回

text by 剛田武 (Takeshi Goda)

前回のコラムでニューヨークを訪れる異邦人について書いたが、当然ながらニューヨークの音楽家が異国を訪れて、現地の音楽シーンで表現活動を行う例も多数ある。

50年代末に勃発したジャズの新しい波に同調する演奏家は、その志の高さに反して、本国アメリカでは経済的バックアップが得られず、不遇な境遇にある場合が多かったが、現代音楽の伝統があり先進的なジャズへの理解があるヨーロッパには、そういったアメリカのミュージシャンを受け入れる土壌があり、マーケットがあった。

オーネット・コールマン、エリック・ドルフィ、アルバート・アイラー、ドン・チェリーなどフリージャズのオリジネーターの多くがその活動の中で何度もヨーロッパを訪れ、現地のミュージシャンとの交流を通して、肥沃な音楽畑を耕した。現地のシーンに与えた影響が多大なものであったことは、例えばエリック・ドルフィの晩年のアルバム『ラスト・デイト』で共演したオランダのミシャ・メンゲルベルグとハン・ベニンクが、1967年にInstant Composers Pool(ICP)を創設し、現在に至るまでヨーロッパ即興音楽の中心的存在として活動することでも明らかだ。また、パートナーのモキ・チェリーの故郷のスウェーデンに移住し、世界中にオーガニック・ミュージックの種を蒔いたドン・チェリーのような存在もいる。

ヨーロッパだけではなく日本を耕したミュージシャンも少なからず存在する。ジョン・ゾーンは90年代に暫く日本に滞在し、ジャズや即興音楽のみならずパンクやノイズや歌謡曲のミュージシャンと交歓し、日本の音楽シーンに大きな影響を与えた。ゾーンは現在もTZADIKレーベルから日本の先鋭的音楽作品をリリースし世界に紹介している。他にも活動の場をNYから日本へ移し、今では日本の地下音楽シーンに欠かせない存在であるサム・ベネットやジム・オルークなども思い浮かぶ。

今号のFIVE by FIVEで紹介したNYのクリス・ピッツイオコスとドイツの演奏家による『Protean Reality』のように、インターネットを通して異国の表現者が出会い素晴らしい作品を生み出す例もある。テクノロジーの進歩で世界が狭くなったと言われるが、そんな時代だからこそ生まれる新たな<トランスワールド・コネクション>に音楽表現の未来があるのは確かである。

関連リンク
FIVE by FIVE #1278『Protean Reality (Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz) / Protean Reality』

剛田 武 Takeshi Goda
1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。レコード会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。80年代東京地下音楽に関する書籍を執筆中。
ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

Share Button
剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↓ ロボットでないかお知らせください。 * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.