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このパフォーマンス2017(海外編)No. 237

#04 V.A / Asian Meeting Festival 2017 Day5 Sapporo

text by 細田成嗣 Narushi Hosoda

2017年9月23日 札幌芸術の森 大練習室 (札幌)

dj sniff(turntable)
イ・カホ(bamboo flute, etc.)
C・スペンサー・イェー(violin, voice)
大友良英(guitar, etc.)
カリフ8(mpc, electronics, etc.)
グエン・タン・トゥイ(Dan Tranh)
張惠笙(voice)
ムジカ・テト(double bass, laptop)
アーノント・ノンヤオ(self-made instruments)
ユエン・チーワイ(guitar, electronics, etc.)
灰野敬二(electronics, voice, etc.)
勝井祐二(electric violin)
宝示戸亮二(piano, etc.)
吉田野乃子(alto sax)


今年の9月14日から24日にかけて初の全国ツアーという形態で開催されたアジアン・ミーティング・フェスティバル。筆者は全行程に同行し、そのレポートは別の場所に掲載する予定だが、なかでも最後に札幌で行われた演奏が出色の出来だった。アーティストは会場内に点在し、中には時折持ち場を離れて座り込んだ観客の間を歩きながら演奏する者も複数いた。音の生態系にどっぷりと浸かってしまったかのような感覚は、同フェスティバルがコラボレートした札幌国際芸術祭に展示されていたいくつかの作品を彷彿させる。まるでサウンド・インスタレーションのようだったと言い換えてもいい。いや、インスタレーションというとちょっと離れてしまうかもしれない。パフォーマンス・アート、ハプニング、イヴェント等々、様々な用語があるもののどれもこのライヴを語るのに適切ではない。もっと音楽的な出来事だった。にもかかわらずそれを音楽と呼ぶことには若干の躊躇いを抱かせる。その担い手がアジア各地から来日した一流のミュージシャンだということもまた、音楽や美術といった西洋由来の価値観で捉えることを拒んでいるのだろうか。もちろん「日の出るところ」「東方」といった意味が由来になっているという「アジア」という言葉がそもそもアジア各地とは関係がないところで勝手に名付けられたものに過ぎない。こっちからしたらアメリカとその先のヨーロッパから日が昇るのだ。だがいずれにしてもこのフェスティバルが音楽の評価軸にあらゆる意味で根底から揺さぶりをかける捉え難さを提示したという点において今年最も優れた「音楽」の一つだったということは間違いなさそうだ。

細田成嗣

細田成嗣 Narushi Hosoda 1989年生まれ。ライター/音楽批評。2013年より執筆活動を開始。編著に『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(カンパニー社、2021年)、主な論考に「即興音楽の新しい波──触れてみるための、あるいは考えはじめるためのディスク・ガイド」、「来たるべき「非在の音」に向けて──特殊音楽考、アジアン・ミーティング・フェスティバルでの体験から」など。2018年より「ポスト・インプロヴィゼーションの地平を探る」と題したイベント・シリーズを企画/開催。

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