よしだののこのNY日誌 第2回

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text and photos by 吉田野乃子 Nonoko Yoshida

みなさま、こんにちは。ののこです。5月も楽しいライヴがたくさんでした。個人的ハイライトは、NYハードコアシーンの聖地的ライヴハウスSaint Vitus Barにイギリスのメタル/グラインドコアバンド、Anaal Nathrakhを見に行ったことでしたが、それは置いておいて。

<同世代の友人達のイベント>

5月13日(水)
Greg Fox / Will Mason Ensemble / Jobs @ Cake Shop

3バンド対バンのイベントです。
1組目は、去年来日もしていた、Guardian AlienやZsのドラマー、Greg Foxのソロ。現代クラシックなども見事にこなしてしまうGreg、過去のZsのライヴでは、ミニマルな楽曲を寸分の狂いもなく、でも決して機械的ではなく、生き生きと鳴らす姿が印象的でしたが、この日のソロも、ものすごい音数を、ドラムマシーンのように打ち鳴らす一方、いろいろなところにアクセントを持って行き、まるでドラムが早口でしゃべったり歌ったりしているかのような、圧巻のパフォーマンスでした。

2組目は、作曲家でドラマーのWill Masonによる、ボイス、オーボエ、サックス、ギター2本、ベース、ドラムによるアンサンブル。こんなにバラエティに富んだ大人数編成のために曲を書くのは楽しいだろうなと思いました。Willの複雑かつ美しく、エネルギー溢れる楽曲に引き込まれました。

Will Mason Ensemble は今年の8月28日にアルバムをリリースするようです。
こちらのサイトから、先行予約や1曲試聴ができます。
>> https://willmasonensemble.bandcamp.com/

3組目の変態トリオJobsは、私がサックスを担当しているバンド、『ペットボトル人間』のギタリスト、Dave Scanlon(通称、デビちゃん)が大親友Max Jaffe (drums)、Rob Lundberg (bass)と共に2008年から活動しているバンドです。(ベースのロブが遠方に住んでいるため、この日のベースエキストラは、ビオラ奏者として有名なJessica Pavone姉さんでしたが。「ベースは私の秘密兵器なのよ」とのことです)。最近までは、killer BOBという名前だった彼らですが、初期は前衛ジャズロックのような感じ、最近は前衛ロックポップ?みたいになってきて、ますます変態度が上がっています。このトリオの楽曲の複雑さは、理解、分析しようとすると頭がおかしくなるほどで、一体何拍子なのか、どこまで楽譜が書いてあるのか、数えているのか、どうやって展開しているのか、全くわかりません。哲学的なコンセプトに基づいた、ポエトリーリーディングや、不思議な歌詞のボーカルなどもありますが、意味などわからなくても、涼しい顔して次々にとんでもない音楽的トリックを繰り出すこの3人のパフォーマンスは、とにかくかっこいいのです。

Jobsも、Will Mason Ensembleと同じレーベルから6月30日にニューアルバムをリリースします。試聴と先行予約はこちらです!
>> https://jobsband.bandcamp.com/

ミュージックビデオもあります。
>> https://www.youtube.com/watch?v=HkDQkXVN_ys

そして、Jobsは2016年の1月に、初の日本ツアーを計画しております。現在、全国各地でサポートしていただけるプロモーター、イベンターの方やバンドの方を探しておりますので、ご興味を持っていただける方がいらっしゃいましたら、御一報いただければと思います。Jobs初来日に向けてのご協力を、何卒よろしくお願いいたします。

<前衛演劇作家、リチャード・フォアマンの映画>

音楽レポートではありませんが、コアな前衛芸術ファンの方がうらやましがってくださるであろうイベントに行ってきましたので、自慢がてらご報告します。うふふ。

5月18日(月)
Richard Foreman Film Screening @ Segal Theatre (CUNY Graduate Center)

前衛演劇作家のリチャード・フォアマン氏は、ここ数年、舞台演劇から映画製作に完全移行されました。この日は、昼間から彼の過去の作品をぶっ続けで7本上映し、夕方から、彼の最近の映画製作現場を記録したドキュメンタリーのようなフィルム、そしてフォアマン氏の現在製作中の映画を少しだけ上映するという、1日がかりのイベントでした。私は夕方の部のみ見に行きました。

フォアマン氏が一体どうやって作品を組み立てているのか、とても興味があったので、映画製作現場の記録を見られたのは大変嬉しかったです。彼の作品はストーリーがあるわけではなく、まるで、個人の頭の中の断片的な、もしくは繰り返される意識をそのまま現実世界に持って来たかのようなもので、とにかくわけがわかりません。映画製作でも、元々固定のシナリオがあるのかさえわかりませんが、フォアマン氏が現場で「やっぱりこういう動きにしよう」「ちょっと違う、こうしてみて」「そこでこう言ってみて」「これ持ってみて」と言った指示をその場で出しながら撮影が進んで行きます。まさに実験的で前衛的です。役者さんやスタッフさんは大変そうです…。

イベントにはフォアマン氏本人も参加され、パネルディスカッションも行われましたが、彼の言った“Story hides reality”「ストーリーは、現実/真実を隠してしまう」という言葉が印象的でした。作られた、わかりやすい物語や、下手をすれば、世の中の秩序や、意味のあること全てが偽物で、実際、私たちの頭のなかにある、わけのわからない思考だけが真実だとしたら、フォアマン氏の作品は、真実の芸術といえるのかもしれません。

ここまで書いておきながら恐縮ですが、私のような小娘がフォアマン氏の芸術を語るのはおこがましいので、ご興味のある方は、巻上公一さん、鴻英良さん編集の『反響マシーン:リチャード・フォアマンの世界』をぜひお読みくださいませ。映画や舞台を見てみたい方はジョン・ゾーンのTzadikレーベルからDVDも出ておりますのでチェックしてくださいね。

<マーク・ドレッサーThe Stoneレジデンシー>

5月の最終週のThe Stoneレジデンシーは、前衛音楽界の重鎮ベーシスト、マーク・ドレッサー氏でした。

5月28日(木)@ The Stone
8 pm: Ned Rothenberg (sax) Mark Dresser (bass)

10 pm: Deep Tones for Peace Bass Ensemble
Rufus Reed, Mark Helias, Rob Nairn, Samir Basim, Lindsey Horner, Dave Phillips, Ken Filiano (basses) Sarah Weaver (conductor)

この日は、何度かこのサイトでも紹介されている、若手サックス奏者のクリス・ピッツィオコスと、だらだらおしゃべりをしながら会場に向かったため、最初のセットは少ししか見られずに残念でしたが、(クリスのせいにしましょう…)私の先生でありますネッド・ローゼンバーグ氏の、管楽器なのに打楽器の演奏のような、変拍子でリズミカルな即興に、ドレッサー氏の縦横無尽かつ力強いベースが乗っかり、ベテランインプロバイザー同士の会話を楽しむことができました。

2セット目は、コントラバス奏者7人と指揮者による、ドレッサー氏の長編楽曲の演奏でした。大迫力の『弓弾きロングトーン×7』や、誰かがベースラインを弾いて伴奏のようなことをし、他の人がハーモニーやバッキング、更にはまるでチェロを操るかのように高音で滑らかなメロディを奏でたりと、ベースだけなのに、フルオーケストラのような演奏でした。最後には、端の人から順に、一人ずつソロ演奏をしていったのですが、それぞれのプレイヤーが全く違う“持ちネタ”を繰り出し、こんなに個性的でハイレベルなベーシストを7人も集めて面白いことをしてしまうドレッサー氏はやっぱりすごいと思いました。

だんだん夏らしくなってきたニューヨーク、The Stoneには新しいエアコンが付きました。以前までのものは運転中のノイズが結構大きく、静かな演奏のときは切らないといけなかったのですが、今回のものはとても静かで、暑い日のライヴも快適に見られそうです。この夏も素晴らしいミュージシャンのレジデンシーが目白押しです。みなさま、演奏中の暑さの心配をせずに、ぜひお越しください。

The Stoneホームページ
>> http://www.thestonenyc.com/

 

吉田野乃子 JAPAN TOUR JULY 2015

この夏、短期で一時帰国をすることになり、北海道、東京、愛媛でライヴを行います。
お近くの方はぜひお越し下さいませ!

7月2日(木)
■『吉田野乃子サックスソロライヴ』
ドラマシアターども
北海道江別市2条2丁目7-1 TEL 011-384-4011
18:30開場 19:00開演
チャージ:1,500円

7月4日(土)
■『NYの尖鋭・吉田野乃子/色彩の舞踏・航×Praha』
1st stage:吉田野乃子(sax) Solo、2nd stage:航 (piano)×Praha(bellydance)
APIA40
東京都目黒区碑文谷5-6-9サンワホームズB1 TEL 03-3715-4010
13:00開場 13:30開演
前売り2,000円、当日3,000円、ワンドリンク付き
■『Neuromancer』~ “Almost” First Meeting?
坪口昌恭 (piano,electronics)、吉田野乃子 (sax -from NY)、北村京子 (vocal- from NY)、吉田隆一 (sax)、千葉広樹 (bass)
Velvetsun
東京都杉並区荻窪3-47-21 サンライズ ビル1F
18:30開場 19:00開演
チャージ:3,000円

7月12日(日)
■音溶
愛媛県松山市三番町2-10-9 第3クリーンビル3F
SPACEGRINDER presents…
『EXTREMEDIVES,vol.161』
-underground cult pop series-

castT ◆吉田野乃子 (Pet Bottle Ningen) [from New-York]
◆斜陽 [from 小倉]
◆SPACEGRINDER×Seiya Hoshino
and DJ’s…
ADV 1,500円/DOOR 2,000円
OPEN 18:30/START 19:00

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吉田 野乃子

1987年生まれ。北海道岩見沢市出身。10歳からサックスを始め、高校時代、小樽在住のサックス奏者、奥野義典氏に師事。2006年夏、単身ニューヨークに渡る。NY市立大学音楽科卒業。ジョン・ゾーンとの出会いにより、前衛音楽の世界に惹かれる。マルチリードプレイヤー、ネッド・ローゼンバーグに師事。2009年、前衛ノイズジャズロックバンド"Pet Bottle Ningen(ペットボトル人間)"を結成し、Tzadikレーベルより2枚のアルバムをリリース。4度の日本ツアーを行う。2014年よりソロプロジェクトを始動。2015年10月、ソロアルバム『Lotus』をリリース。現在、活動拠点を北海道に移す。

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