#87 『地下音楽への招待』

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書名:地下音楽への招待
著者:剛田武
編集:加藤彰
初版:2016年9月22日
版元:ロフトブックス
定価:3000円+税

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“ 九月毎夜うごめくマイナーの気配、そして傷”

単行本『地下音楽への招待』の表紙を取ると、ライブスペース吉祥寺マイナーの閉店する80年9月のスケジュールが...、休みが無い、見物料¥300、25日(木)竹田賢一(大正琴)チョン・ドウハンをいつか殺してやる!、28日(日)山ざき春美(vo)+? 泣いても笑ってもマイナーの夜はこれが最後です。みなさんごきげんよう。出演アーティストによる一行コメント、おお、

70年代後半から80年代の日本で特異に存在していたフリー・ジャズとパンクとノイズとアヴァンギャルドが交差していたシーン、

個々に思いつくままに、灰野敬二、阿部薫、高柳昌行、町田町蔵、フリクション、のいずんずり、グンジョーガクレヨン、連続射殺魔、メルツバウ、竹田賢一 A-Musik 、、、を、80年に北海道から上京してきたおいらは、松田聖子、あがた森魚、オフコース、ヤン・ガルバレク、パット・メセニーなどなどと同列に夢中になっていたたわけ耳な態度であり、

筆者の剛田武は当サイト Jazz Tokyo に彗星の如く現れたのだった、小学生の姪っこに「ジャイアンのなまえー!」と肩越しに言われるまでペンネームだと気付かなかった、ニューヨークの現代ジャズシーンを紹介する記事たちに瞠目する、剛田武のサイト「 A Challenge To Fate 」ではロフト・ジャズから灰野敬二、さらにアイドル・シーンまでカットアップする濃密な記事が並ぶ、触発されてでんぱ組 Inc.にハマる、

「パンクよりも自由な世界へ 70年代後半から80年代前半の日本に興った特異な音楽とその目撃者=体験者による遍歴の記録」とある、いや、そこにとどまるものではない、

シーンのキーマンである園田佐登志とのインタビューから始まり、藤本和男、鳥井賀句、竹田賢一、白石民夫、工藤冬里、原田淳・増田直行、安井豊作、生悦住英夫、山崎尚洋、山崎春美が次々と召喚されるようにインタビューがなされ、シーンのそれぞれの点からの風景が肉声となって示される、個々がそれぞれこれだけ異なる重力をもって同時代に近しい距離にいたのか、40年も経っているのに懐古ではなくまったく生々しい、

山崎春美の項は、「わたしはこの本を認めない」という前文、檄文が配置される、園田佐登志に対して激怒している、大里俊晴は死ぬまで「園田佐登志だけは許せない」と言い続けたとも、インタビューの校正の戻しに書かれたテキスト、何があったんだー、

97~98年頃にFM東京ミュージックバードで大里俊晴「越境するジャズ」を聴いて、そこからガセネタを聴き、ゲストのサックス奏者金野吉晃さんと文通した群馬県在住リスナーだったおいらは大里俊晴に対するリスペクトは大きい、今年になって友人宅で聴いた園田佐登志『耳抜き』のトラック、レノン(Revolution No.9) meets ライヒ(It’s Gonna Rain)的な天国的なコラージュ作品にのけぞっていたばかりだ、スタジオヴォイス誌で越境的なECMレーベルセレクト記事を書いた竹田賢一さんちに出かけてラスクの最新作を聴かせてもらったり、A-Musik のライブの前座で聴いた奥村チヨを超絶技巧脱構築するチヨズの演奏にノックアウトされたこともあった、本書を読みながらフラッシュバックする点と点、

この本はインタビュー&アーカイブではない、博物館なディスクアーカイブとも無縁だ、70年代後半から80年代にあったとされる音楽は今もリアリティを持って生きていることに愕然とさせられる、付録CD 18トラックがそれを補完している、

おいらはこのあたりのシーンの音楽は終わったものだと昨日まで思っていた、それがどうだ、4000万曲が聴けるスポティファイ Spotify が日本上陸した2016年9月に、ウソと劇場と電通と経団連に蹂躙されている左手に茶碗を持った鼻も耳も口もないきれいなわたしたちに、山崎春美が友部正人の「乾杯」「反復」を挙げるのはストライクだ、

学校に馴染めない理数系得意の中学生が多いのは単なる偶然なんだろうか、おいらも発達障害で数学科だけどさ、理に適っていることの不快と快楽の衝突は地下音楽へ向かうエナジーだとか?そんなことはないか、あるか、

平和台駅前のあゆみブックスでも売れて入荷待ち、アマゾンでも在庫無しで早くもプレミア出品になっている、400ページを超える、詳しすぎる脚注にも眩暈がする、これまで誰も踏査していなかった地下世界の一端に、それこそ感染させられる一冊だ、続編を望む、(多田雅範)

編集部 注;
「地下音楽への招待」刊行記念イベント
日時:10月16日 20:00
会場:新宿ネイキッドロフト
出演:剛田武、加藤彰
ゲスト:山崎春美、宮沢章夫(劇作家)
料金:前売り¥2500 当日¥3000

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多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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