#1560『ジェレマイア・サイマーマン / Decay Of The Angel』

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text by Keita Konda 根田恵多

5049 Records / 5049-007

Jeremiah Cymerman – clarinet, electronics, percussion

1. The Violence Of Stupidity
2. With Ten Thousand Shields And Spears
3. Spheres Of Dissonance
4. The Canto Of Ulysses
5. Decay Of The Angel
6. The Body Becomes Fetid
7. Out Of Many Waters

All music performed, recorded and mixed by Jeremiah Cymerman, NYC 2018
Mastered by Matt Mehlan
Original Artwork by Bea Kwan Lim
Layout by Toby Driver

エヴァン・パーカー、エリアーヌ・ラディーグ、サルヴァトーレ・シャリーノ、DJマグス、ウィリアム・バシンスキー、アルヴィン・ルシエ……。これらは本作の「謝辞」に掲げられた音楽家の名前である。三島由紀夫『天人五衰』の英題をアルバムタイトルとする本作は、これらの音楽家たちの要素を端々に感じさせつつ、そのどれにも似ていない傑作に仕上がっている。

ジェレマイア・サイマーマンは、NYを拠点に活動するクラリネット奏者、作曲家、サウンドアーティストである。ジョン・ゾーンのTzadikや自身のレーベル5049 Recordsから刺激的な作品のリリースを続けているが、日本では未だほとんど紹介されていないと言って良いだろう。その経歴や活動の概要については、本誌掲載のインタビュー(→リンク)を参照してほしい。「私の教育のバックグラウンドは音楽制作とオーディオ製作です」と語り、サウンドエンジニアとしての顔も持つサイマーマンは、多重録音やカットアップを巧みに使いこなす。たとえば、2011年リリースの『Fire Sign』(Tzadik)では、ピーター・エヴァンスとネイト・ウーリーという2人の強靭な奏者のトランペット演奏を切り刻み、エレクトロニクスとともに再構成するという離れ業を見せている。

本作でも、その才能は遺憾なく発揮されている。全7曲中、クラリネットソロが2曲、クラリネットとエレクトロニクスを組み合わせたものが2曲、それに若干のパーカッションを加えたものが3曲。アコースティック管楽器特有の響き、アナログシンセによるドローン、アンプリファイしたクラリネットのフィードバック奏法などが重層的に用いられ、凄まじいうねりが生み出されている。管楽器から発せられる電子音。電子楽器から放出される生々しさを帯びた音。1人の音楽家の手によって、両者が見事に融和している。

サイマーマンは、本作を「ヘッドフォンもしくは大音量のスピーカー」で聴くようにと強く勧めている。この倍音と重音に満ち満ちた狂気のサウンドを、ぜひ大音量で堪能してほしい。

 

 

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根田 恵多

根田恵多 Keita Konda 1989年生まれ。大学院生。専門はアメリカ憲法、とくに政教分離、精神的自由権。主な著作に『平等権と社会的排除 ―人権と差別禁止法理の過去・現在・未来』(共著、成文堂、2017年)など。ただのジャズファン。ブログ http://zu-ja.hatenablog.com/

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