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CD/DVD DisksNo. 217R.I.P. 菊地雅章

#1293 『菊地雅章/黒いオルフェ』

ECM 2459

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text by 稲岡邦弥 Kenny Inaoka
菊地雅章 (piano solo)

1.Tokyo Part I 05:52
2.Tokyo Part II 03:57
3.Tokyo Part III 05:33
4.Tokyo Part IV 07:27
5.Tokyo Part V 05:05
6.Black Orpheus (Manha de Carnaval) 08:17
7.Tokyo Part VI 06:38
8.Tokyo Part VII 07:38
9.Tokyo Part VIII 06:30
10.Tokyo Part IX 07:09
11.Little Abi 06:43

Recorded live at 東京文化会館リサイタルホール, October 26, 2012
Recording engineer by Masatoshi Muto
System Engineer: Shinya Tanaka
Recording Supervisor :高橋晢
Mixed at Rainbow Studio, Oslo
Mixed by Manfred Eicher
Mixing Engineer: Jan Erik Kongshaug
Liner Photos:菊地あび

 

このアルバムに収められた演奏が行われた2012年10月26日のLive Reportを読み返してみたところ、非常に極私的だが僕が言いたいことのほとんどが言い尽くされていた。
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report478.html
菊地さんにとってはずいぶん長い道のりの成果で、生前もこの記録の公開を待望されていたので、生前にリリースが実現されていれば、とは思うが、リリースに際してはミックスやマスタリングについての両者の意見の合意が果たせたかどうかという懸念も残る。ミュージシャンは誰でもそうだが最終的に公開される音(サウンド)にこだわる。音楽は音によって表情が変わるから当然のことだが、とくにピアノ・ソロで菊地さんのようにセンシティヴな音楽の場合はなおさらだ。
Live Report で「僕の胸を締め付けたのは<オルフェ>と<リトル・アビ>であった」と特筆した2曲が収録されているのは殊の外嬉しい。さらに嬉しいのは、<リトル・アビ>こと愛娘・菊地あびさん撮影のスナップが9点もブックレットに使用されていること。これはこれで立派な菊地さんのフォト・ストーリーになっており、父娘共演の珍しい1作となった。
最後になったが、この演奏が公開されたコンサート「Sound Live Tokyo」を企画制作したPARC(国際舞台芸術交流センター)の新井知之ディレクター(アルバムにクレジットされていないのはどうしてだろう)と菊地さんの窓口となった川田恒信マネジャー、高橋晢スーパーヴァイザーのリリースに向けての努力にリスナーを代表して感謝したい。

 

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*写真は、菊地さんのECMとのソロ・ピアノ録音の長い歴史の嚆矢となった2003年10月録音の「at home project」を収めたCDR。カバーのタイピングは菊地さん自身。
♩ 関連リンク
http://archive.jazztokyo.org/rip/kikuchi/kikuchi.html
新井知行さんによる菊地さんのソロに関する優れたエッセイと、ジェームス・アームストロングの<リトル・アビ>のトランスクリプションを掲載。

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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