#1297 『Grégoire Maret / Wanted』

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text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦

Sunnyside Communications Inc. SSC1417

Grégoire Maret (harmonica)

Gerald Clayton (p,kb)
Jon Cowherd (p,4,5)
Shedrick Mitchell (org.4)
Bobby Sparks (kb,except 8)
Federico G. Peña (kb,8)
Gil Gold Stein (kb,10)
James Genus (b,el-b)
Ricardo Vogt (ac-g)
Marvin Sewell (el-g.1,3,7)
Kevin Breit (el-g, el-mandolin, 5,10)
Mino Cinelu (perc)
Kofo(the Wonderman) (talking drums,9)
Desmond Scaife Jr. (background vo, 4)
Terri Lyne Carrington (ds,vo)
Eriko Sato (vln)
Louise Schulman (viola)
Dave Eggar (cello)
Roger Rosenberg (b-cl)
Elizabeth Mann (alto fl)

Guest
Kokayi (rap,1)
Mark Kibble from Take 6 (vo,2)
Chris Potter (b-cl,3)
Frank McComb (vo,4)
Dianne reeves (vo,5)
Luciana Souza (vo,6)
Ivan Lins (vo,8)
Mino Cinelu (perc,9)
Jimmy Scott (vo,10)

  1. 2 Beats
  2. Wanted
  3. Blue In Green
  4. Diary of a Fool
  5. Heaven’s
  6. Groove
  7. Footprints
  8. Voo do Passaro
  9. Talking Drums
  10. 26th of May

Recorded by Andy Taub at Brooklyn Recording, NY on September 23rd 2013, by Alex Venguer at 333 Recording on January 6, 2014 and Steve Addabbo at Shelter Island Studio on March 19, 2014.
Produced by Grégoire Maret & Terri Lyne Carrington.

 

1990年代後半から、グレゴア・マレ(harmonica)はサイド・マンとして多くのグループに登用された。スティーヴ・コールマン(as)、チャーリー・ハンター(7strings g)、ジミー・スコット(vo)を皮切りに、カサンドラ・ウィルソン(vo)、マーカス・ミラー(el-b)、パット・メセニー(g)、ハービー・ハンコック(p)ら、2000年代半ばには、ビッグ・アーティストのライヴを撮影すると、必ずマレに会うと言うほどであった。この共演者リストは、ジャズ・フィールドにとどまらず、エルトン・ジョン(vo,g)、スティング(vo,el-b)まで及ぶ。いつしかマレは、2014年に引退したトゥーツ・シールマンス(harmonica)の後継者と称されるまでになった。

スイスのジュネーブ出身で、ジャズ・ミュージシャンの父と、ハーレム出身のアフリカ系の母を持つマレは、90年代にニュースクール大のジャズ&コンテンポラリー・ミュージック科に留学してニューヨークに渡り、卒業後、すぐに頭角を顕し多彩なアーティストと共演する。2003年にスイスの映画監督によって彼を主人公に起用したドキュメンタリー映画“Sideman”が制作され、高く評価された。マレが満を持して単独リーダー作『Grégoire Maret』をリリースしたのは2012年。カサンドラ・ウィルソン、マーカス・ミラー、ラウル・ミドン(vo,g)からトゥーツ・シールマンスまで、オールスターの共演者を迎えて制作された。あれから4年、ヴァージョン・アップしたセカンド・アルバム『Wanted』が届いた。

『Wanted』は、共同プロデューサーにテリ・リン・キャリントン(ds)を起用し、ジェラルド・クレイトン(p,kb)、ジェイムス・ジナス(b,el-b)、キャリントンのクァルテットを中核に据え、豪華絢爛なゲストを迎えた作品だ。特筆すべきはゲスト・ヴォーカリスト陣だろう。ダイアン・リーヴス、イヴァン・リンス、フランク・マッコーム、ラッパーのコカイ、テイク6のマーク・キブル、ブラジル出身のルシアナ・ソーザらが参加している。ジャズ、ヒップホップ、ソウル、ブラジリアンとフォーマットが変わっても、マレのメロディアスな歌心は、シンガー達を刺激する。エンディングを飾る“26th of May”は生前のジミー・スコットの歌声に、ストリングスを含むギル・ゴールドステイン(p,kb) がアレンジしたチェンバー・ユニットをオーヴァー・ダブで加えて、美しいバラードに仕上げている。スコットは1998年にマレを自らのグループに起用した、最初のビッグ・ネームであり、マレはバラード奏法について多くを学んだ恩師である。インスト陣も多彩である。“Blue in Grenn”で繊細なバス・クラリネットを聴かせるクリス・ポッター、“Talking Drums”はミノ・シネルとコフォがカラフルなパーカッション・ワークで彩りを添える。ジョン・コウハードや、マーカス・ミラー・バンドの同僚のフェデリコ・G・ペーニャ、ボビー・スパークスらのキーボード/ピアノや、マーヴィン・セウェル、リカルド・ヴォグト、ケヴィン・ブレイトらギタリスト達も、スパイスの効いたプレイで、存在感を放っている。マレ自身とキャリントンの卓越したプロデュースによって、けっしてオールスター顔合わせセッション的作品ではなく、ビッグ・ネームが適材適所に起用された、コンセプシャルで現代音楽シーンの縮図がみえるアルバムとなった。

4/7のミート・パッキング・エリアにあるラテン・クラブ“Subrosa”におけるリリース・ギグでは、クリス・ポッターをゲストに迎え、ケヴィン・ヘイズ(kb)、ジョン・デイヴス(ds)、そして5月にユニバーサルからデビュー・アルバム『Greek Fire』をリリースする、ヒップホップ・シーンで活躍するBig Yukiがシンセ・ベースを担当し、アルバムの世界観を踏襲しつつ、ライヴの躍動感溢れるサウンドを聴かせてくれた。客席にも、ベン・ウィリアムズ(b)、クラレンス・ペン(ds)、マイケル・ロドリゲス(tp)、中村恭士(b)、小川慶太(perc)ら多くのミュージシャンの姿が見られた。エンディングでは、ミノ・シネル(perc)、スナーキー・パピーのコーリー・ヘンリー(melodica)、ロジェリオ・ボカット(per)がシット・インして大セッションとなり、セレブレーションの幕を閉じた。さらなるパワー・アップした次回作、今後のグレゴア・マレのリーダー活動が期待される。

関連リンク

Grégoire Maret  http://www.gregoiremaret.com/

”Wanted”より

 

 

 

 

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常盤武彦

常盤武彦

常盤武彦 Takehiko Tokiwa 1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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