#1358 『板橋文夫FIT!+MARDS/アリゲーターダンス 2016』

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text by Yumi Mochizuki  望月由美

MIX DYNAMITE RECORD MD-019  2500円

 

板橋文夫(p,per)
瀬尾高志(b,per)
竹村一哲(ds,per)

MARDS
類家心平(tp)、纐纈雅代(as)、後藤篤(tb)、高岡大祐(tuba)
レオナ(tap dance)

1. Alligator Dance(板橋文夫)
2. SPARK! (板橋文夫)
3. Gray&Yellow (板橋文夫)
4. ふと!?(板橋文夫)
5. 天岩戸 (板橋文夫)
6. GRAND OPEN(後藤篤)
7. 福島の春 (板橋文夫)
8.‘O sore mio (Neapolitan fork song)
9. がんばるばい!くまもん (板橋文夫)
10. ホイヤー!(板橋文夫)
11. FOR YOU(板橋文)

プロデューサー:板橋文夫
エンジニア:小川洋
録音:2016年6月6日、7月26,27、28日@千葉市稲毛区jazz spot candy

 

ジャズはライヴだ!を実践している板橋文夫の新作は板橋文夫FIT!+MARDSという強力な布陣で、まさにミックス・ダイナマイト。

MARDS のMは纐纈雅代(as)、Aは後藤篤(tb)、Rはレオナ(tap dance)、Dは高岡大祐(tuba)そしてSは類家心平(tp)の名前の頭文字を綴ったもので、この5人を迎え入れる板橋文夫FIT!は板橋文夫(p,per)、瀬尾高志(b,per)、竹村一哲(ds,per)という強力な個性が8人揃ってのレコーディングである。

今回の板橋文夫FIT!の 拡大版からはライヴの最先端で、聴きにきてくれる人と心を通じ合わせようと、ピアノと格闘する板橋文夫の熱い情熱そして強い意志が伝わってくる。

公開レコーディングとあって楽器の音合わせから(1)<アリゲーターダンス>が始まる。

名盤『濤』(FRASCO、1976)の初々しい初演から森山・板橋クインテット『ストレイトエッジ』(PIT INN MUSIC,2014)の爆発にいたるまで、多くのジャズ・ファンの耳に自然と馴染んでいるこの名曲を、チューバ・リードのアンサンブルからスタートし高岡大祐のチューバがロング・ソロをとる。メロディアスなチューバのソロは50年代コルトレーンとのコンビで鳴らしたレイ・ドレイパー(tu)のようになめらかでスイート。

うってかわって(2)<SPARK!>は高速のフォー・ビート。ガレスピー(tp)が聴いたら笑い出してしまうような純正ビ・バップ調。

女性アルトが沢山いる中で最も大胆不敵にしてフリーキーなアルト纐纈雅代(as)のハイ・スピードのソロを先頭に後藤篤(tb)、板橋(p)、瀬尾(b)、竹村(ds)と矢継ぎ早やのソロが続くが、この目まぐるしいまでのスピードそしてダイナミック感という板橋文夫FIT!の特徴がいかんなく発揮されている。

今回の作品ではFIT! をクッションにMARDSの面々が大きくクローズ・アップされていて、まるで望遠レンズで撮ったように夫々の個性が前面に広がってくる。

(3)<Gray&Yellow>では類家心平(tp)がフィーチャーされる。吐息が漏れるようなハスキーなカデンツアは類家の真骨頂、頬を膨らませてスローにささやく類家の姿がボディ&ソウル、身に心にそして耳にしみる。

(5)<天岩戸>は纐纈のオリジナルで、昔話の天照大神を天岩戸から誘い出して世の中を明るくしようとするアメノウズメノミコトのようになりふり構わず持っている心情の全てをありのままアルトにのせてむせび泣く。

(6)<GRAND OPEN>の、一転して軽快なアンサンブルはかつてのウエスト・コーストのショーテイー・ロジャースかライトハウス・オールスターズのようなノリである。

この<GRABD OPEN>は後藤篤(tb)のオリジナルで後藤はこの3か月前に自己のファースト・アルバム『Free Size』(DOSHIDA、2016)でオープニングとクロージングに演奏している。

(7)<福島の春>は板橋文夫ののどかなピアノから始まる。板橋の書く曲はどれも優しく夢があるがこの曲も小学唱歌にしたいような素朴な愛らしさを感じさせる。

板橋はおりにふれて被災地に思いをはせる曲を創っているがこのアルバムにはこのほか(9)<がんばるばい!くまもん>で熊本へのエールを送っている。

(8)<‘O sore mio>はナポリ民謡のオー・ソレ・ミオ、タップのレオナのショーケースとなっている。ホーン陣はおやすみし、レオナとFIT! との打々発止のガチンコ対決、と行きたいところだがそこはどっこい板橋さん、ソロ・モンク風のユーモラスなタッチでレオナにジャブ、さらに興にのってかオー・ソレ・ミオ!と声を張り上げて唄っている。

(10)<ホイヤー!>はドラムの竹村一哲がリードするリズムの祭典。FIT! の3人が、パーカッションを打ち鳴らし、メンバーが<ホイヤー・アー・アー・ア・ホイヤ>と威勢のよい掛け声をかけるなかFIT!の3人が疾走する。この高揚と一体の祭りごとがFIT!の醍醐味。

エンディングは(11)<FOR YOU>板橋のピアノがきれいなメロディーをゆっくりとつむぎ、アルコが絡み、さらにタップが加わりピアノ、タップ、ベースという珍しい会話が楽しい。

板橋文夫FIT!は、2011年3月11日の東日本大震災から一か月後のレコーディング『New Biginning』(MIX DYNAMITE)からスタートした。

以来3人は 板橋文夫FIT! として5年間沖縄から北海道まで完全地域密着型のライヴ活動を続け日に日にパワーを増してゆき、昨年の沖縄録音『みるくゆ』(MIX DINAMITE)からちょうど一年、ついにMARDSというライヴ・シーンの名うての強者5人を入れて『アリゲーターダンス2016/板橋文夫FIT!+MARDS』(MIX DINAMITE)の録音に至ったのである。

草の根活動のように日本全国をまわり、地道に一夜一夜あらん限りの力を発散し、また次の夜はそれ以上の発熱を繰り返し、増殖を続けてきた板橋文夫FIT!は板橋文夫の、いや日本の鏡である。

 

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望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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