#1361 『望月治孝 / ガラスをとおして』

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text by Hideaki Kondo 近藤秀秋

Armageddon Nova, AN-R 5

望月治孝 Harutaka Mochizuki: alto saxophone

1. (*タイトルなし) (19:42)
2. (*タイトルなし) (10:21)

Recorded at Shizuoka Ezaki Hall, 03 June 2016
Mastered by Takanao Shinohara
Designed by Harutaka Mochizuki
Produced by Yukiteru Asai

 

アルトサックス奏者・望月治孝による2016年発表作。同年、静岡江崎ホールを借り切っての録音で、アルトサックス独奏。

形を成すか成さぬかの境にあるフラグメンツとそのヴァリエーションは、ブレスの背後に隠され、戻るたびにフラジオが交ざり、ようやく形が見えたところでメロディに繋がる。謡いに入った息とメロディは分離することなくグラデーションを作り上げ、始まりから終わりまでの意志あるドラマに強烈な抒情性を与える。ブレスとメロディの関係が何を取り払おうとしたものであるのか、ここに気づきが無ければ音痴な演奏と言われるかもしれない。しかし気づきさえあれば、まったく違うものが見えてくるだろう。彼らの演奏行為というものは、決して舞台上の見世物として提示されたものではない事、そしてそこで乗り越えられようとしているものが演奏行為や音楽形式の写像にまで至っている事が分かるはずである。

実に自然に展開されるドラマの構造。日本独特ともいえるこうしたアルトサックス独奏ほど、インプロヴィゼーションとかフリーという言葉が似合わないものもない。この異形の音楽劇のスタイルは、近年の浦邊雅祥と望月治孝のパフォーマンスによって完成を見たと言えるのではないだろうか。なお、帯裏やレーベルコピーには「初のスタジオ録音盤」とあるが、正確には静岡江崎ホールを借り切っての録音だったそうで、恐らく「ライブコンサートの録音ではない」という意味かと思われる。

(近藤秀秋、2016.12.4

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近藤秀秋

近藤秀秋

近藤秀秋 Hideaki Kondo 作曲、ギター/琵琶演奏。越境的なコンテンポラリー作品を中心に手掛ける。他にプロデューサー/ディレクター、録音エンジニア、執筆活動。アーティストとしては自己名義録音 『アジール』(PSF Records)のほか、リーダープロジェクトExperimental improvisers' association of Japan『avant- garde』などを発表。執筆活動としては、音楽誌などへの原稿提供ほか、書籍『音楽の原理』(アルテスパブリッシング)執筆など。

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