#1362 『柳川芳命 / 2016』

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text by Hideaki Kondo 近藤秀秋

極音舎、GO-09

柳川芳命 YANAGAWA Homei: alto sax
新井田文悟 NIIDA Bungo: electric bass, #1
藤田亮 FUJITA Ryo: drums, #1
Meg: drums, #2
依田拓 YODA Takumi: percussion/electronics, #3
佐藤シゲル SATO Shigeru: electric bass & bass-taishogoto, #4
石井正典 ISHII Masanori: drums, #4
大庭彰恵 OOBA Akie: drawing (cover art)

  1. Naked Soul (23:14)
  2.  Hyper Fuetaico (10:55)
  3.  Dual Expansion (20:05)
  4.  Break Open (22:41)Live at Nanya on Sep.7 (#1), studio session Aug. 23 (#2), live at Nanya on Aug.20 (#3), live at K.D.japon on Sep.14 (#4)Recorded and Mastered by YANAGAWA Homei

名古屋を拠点に活動するアルトサックス奏者・柳川芳命(やながわほうめい、数年前に「やながわよしのり」より改名)による、2016年のパフォーマンス集。4つのパフォーマンスを収録、そのすべてが共演者違い。レーベルは柳川自身が運営する極音舎。

本作がロック寄りの色彩を帯びているのは、柳川自身の音楽性以上に、彼の周辺の音楽シーンの嗜好が反映された結果だろう。キャリアの最初からフリージャズ寄りのインプロヴィゼーション志向である柳川の演奏は、録音でいえば2004年の傑作『グライン・ジ・エアー』(極音舎、GO-07)から加速度的に熱を帯びたものとなった。強度と速度感を伴ったその自在なアーティキュレーションは驚異的なもので、大きな達成と思う。そして、このCDに収められた共演者違いの4つのパフォーマンスに共通するのは、打楽器もしくは打楽器とベースという編成であり、アルトサックスがどのような音を選ぼうとも、音がぶつかりにくい。要するに、現時点の柳川は、ある程度他の音楽的局面を犠牲にしてでも強い演奏や表現を重要とみているようで、この認識がブレーキのかかる事のない圧巻のパフォーマンスに繋がっているように感じる。また、柳川以外にも、M2「Hyper Fuetaico」やM3「Dual Expansion」の共演陣が作り出す明確な音楽イメージ、冴えたシンバルワークを聴かせる藤田亮の演奏など、共演陣もそれぞれ出自の違う自らの主張を貫いており、好演が揃う。惜しむらくは録音で、ステレオマイク一発録音は熱気を伝えるが、引きかえにどのトラックも楽器間バランスも楽器内バランスも極端に悪く、せっかくの共演陣の演奏が大変に聴きづらい。柳川の白熱した演奏のみならず、柳川周辺の音楽シーンの熱気をも伝える好盤であるだけに、次回からはせめて最低限のEQ補正ぐらいはしてから出して欲しい。

(近藤秀秋、2016.12.4)

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近藤秀秋

近藤秀秋

近藤秀秋 Hideaki Kondo 作曲、ギター/琵琶演奏。越境的なコンテンポラリー作品を中心に手掛ける。他にプロデューサー/ディレクター、録音エンジニア、執筆活動。アーティストとしては自己名義録音 『アジール』(PSF Records)のほか、リーダープロジェクトExperimental improvisers' association of Japan『avant- garde』などを発表。執筆活動としては、音楽誌などへの原稿提供ほか、書籍『音楽の原理』(アルテスパブリッシング)執筆など。

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