#1364 『Rudy Royston Trio / Rise of Orion』

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text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦

Greenleaf Music Inc GRE-CD-1052

Rudy Royston (ds)
Jon Irabagon (ts,ss)
中村 恭士 (b)

  1. Rise Of Orion
  2. Nautical
  3. Alnitak
  4. Sister Mother Clara
  5. Man O To
  6. Alnilam
  7. Make A Smile For Me
  8. Kolbe War
  9. River Styx
  10. Dido’s Lament
  11. Mintaka
  12. We Had It All
  13. Belt

Recorded by Tom Tedesco at Tedesco Studios on February 29, 2016.

Produced by Rudy Royston  Executive Producer : Dave Douglas


2年前に、初リーダー作『303』でルディ・ロイストン(ds)は待望のデビューを飾った。2ホーン、2ベース、ギター、ピアノ、ドラムスの野心的なアンサンブルの前作だったが、セカンド・アルバムの『Rise of Orion』では、前作のメンバーのジョン・イラバゴン(ts,ss)と中村恭士(b)とのトリオで、スポンテニアスに凝縮された音世界を構築した。

ルディ・ロイストンは、テキサス州フォート・ワースに生まれ、コロラド州のデンバーで育った。音楽を愛する家族とともに打楽器に囲まれ、教会で演奏する幼少期を過ごす。デンバー大に進学後、ロン・マイルス(tp)に見出され、その薫陶を受ける。卒業後はデンバーのローカル・シーンで、ジャズ、ゴスペル、オルタナティヴ・ロックを演奏しつつ、公立学校で教鞭を執り10年を過ごす。。そして2006年大学院進学で満を持してニューヨークに進出し、その才能を広く知られるようになる。ブランフォード・マーサリス(ts,ss)・グループやジョン・パティトゥッチ(b)、ミンガス・ビッグバンドに参加。現在は、ビル・フリゼール(g)、デイヴ・ダグラス(tp)のグループのレギュラーを務め、ファースト・コール・プレイヤーとしての評価を確立した。本作では、デイヴ・ダグラス・クインテットの同僚で、2008年のセロニアス・コンペティションの優勝者のジョン・イラバゴン(ts,ss)、若手から大ヴェテランまで多くのグループで活躍し、初リーダー作をリリースしたばかりの中村恭士(b)をパートナーに迎え、異なるバックグラウンドの3人が緊密なインタープレイを聴かせてくれた。

『Rise of Orion』は、2曲のカヴァーを含む13曲で構成されている。”Alnitak”、”Alnilam”、”Belt”の3曲の短いブルース・トラックと、ドラムス・ソロの”River Styx”と”Mintaka”が句読点のように散りばめられ、アルバムにアクセントを加えている。ロイストンは「音楽で、闇にさす明るい光、強さ、叡智、憧れ、失意、歓喜、男らしさ、優しさ、孤独といったことを象徴的に描こうとしたが、制作のプロセスの中で、愛と希望こそを表現したいと思った」と語る。冒頭の”Rise of Orion”、”Nautical”は、テンションの高いスウィング・チューンで華々しいキック・オフを飾る。コード・バッキングを削ぎ落としたトリオにもかかわらず、ハーモニーが響いて聴こえるのは、この3人の卓越性を表している。フェード・インからアウトするブルースを挟んだ後の”Sister Mother Clara”は、幼い頃から、音楽の道を進むことをいつも励まし勇気づけてくれた母に捧げた曲だ。イラバゴンのソプラノ・サックスが、ロイストンの母への思慕を歌い上げる。”Man O To”は13世紀に活躍したペルシャの神秘主義詩人であるジャラール・ウッディーン・ルーミーの愛を讃えた詩からインスパイアされて作曲された。タイトなビートのパターンからスウィングに変貌する瞬間がスリリングだ。グローヴァー・ワシントン・Jr(ts,ss)の”Just Two of Us”でフィーチャーされたビル・ウィザース(vo)のカヴァーの”Make A Smile For Me”は中村のリリカルなベース・ソロに導かれて、ミニマルで深遠なゴスペル・バラード・プレイが展開される。”Kolbe War”は、ロイストンの愛息コルビーが、レゴ・ブロックで遊びながら口ずさんでいたメロディから生み出された。シンプルなメロディを、アップ・テンポのスウィングに乗せて激しく展開されるインター・プレイは、ソニー・ロリンズ (ts)が、かつてヴィレッジ・ヴァンガードで繰り広げたサックス・トリオのセッションを彷彿させる。”River Styx”は、ロイストンの詩的感情をドラム・ソロで描き、その空気感はバロック期のイギリスの作曲家ヘンリー・パーセルの”Dido’s Lament”へと繋がる。本作中最も内省的な瞬間だ。激しいドラムソロの小品”Mintaka”から、牧歌的なメロディが明日への希望を象徴する”We Had It All”がクライマックスを迎え、”Belt”がエンドロールのごとく流れ『Rise of Orion』は幕を閉じた。今のルディ・ロイストンの心の葛藤の中から生み出された、自らに誠実なスピリチュアルなサウンドが響き渡る。

12月17日のニューヨークのThe Cellにおけるリリース・ライヴは、ヨーロッパ・ツアー中の中村恭士に代わりトムソン・ニーランド(b)が参加した。アルバム収録曲から、デューク・エリントン(p)の”Take the Coltrane”のスウィング、フリー・ジャズ、ゴスペルとアルバム以上に多彩な内容だった。イラバゴンの激しいプレイと、ロイストンのドラミングの相乗効果で、3人とは思えない広がりを持つ音空間が広がった。自らの内面を探求し、音楽を創造するルディ・ロイストンのミュージック・ジャーニーは続く。

Rudy Royston Website http://www.rudyroyston.com/

 

 

 

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常盤武彦

常盤武彦

常盤武彦 Takehiko Tokiwa 1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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