#1373 『井上陽介 / Good Time Again』

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Text by Hideo Kanno 神野 秀雄

ポニーキャニオン Pony Canyon / M&I MYCJ-30655

井上陽介 Yosuke Inoue (Bass)
秋田慎治 Shinji Akita (Piano)
荻原 亮 Ryo Ogihara (Guitar)
江藤良人 Eto Yoshihito (Drums)
大西順子 Junko Onishi (Piano, 10)

Watch Out (Yosuke Inoue)
Agua de Beber おいしい水(Antonio Carlos Jobim)
Close To You (Burt Bacharach)
Fragile (Sting)
Bluesette (Toots Thielemans)
Birdland (Joe Zawinul)
Shiny Stockings (Frank Foster)
What A Wonderful World (Bob Thiele / George Weiss)
Night Train (Duke Ellington / Billy Strayhorn)
Never Let Me Go (Jay Livingston / Raymond Evans)

プロデューサー:山下正博
エンジニア:菊地健太郎
ライナーノーツ:佐藤竹善

 

穏やかで優しい時間を楽しむ「気負わない意欲作」第二弾

「このCD2014国内編」に私は前作『Good Time』を選んだ。多忙な4人のカルテットなだけにライブの機会も限られていたが、この路線でのレパートリーを積み重ねてきており、同メンバーによる待望の二作目が実現した。井上陽介は1964年大阪生まれ、13年間ニューヨークを拠点に第一線ミュージシャンと共演し、レコーディングや全米・世界ツアーへの参加を重ねた。ハンク・ジョーンズのグレート・ジャズ・トリオへの参加は特筆したい。2004年から日本に拠点を移し、渡辺香津美、大野雄二、小曽根真、塩谷哲らに重用されて、さまざまなグループに参加し、J-Popでも井上陽水、絢香、Superfly、佐藤竹善などのツアーに参加。現在では国立音楽大学で後進の指導にもあたっている。中でも山木秀夫を含む塩谷哲トリオは私の理想とするピアノトリオのひとつだし、モントルー・ジャズ・フェスティバルのリハーサルで偶然見かけた林正樹、山木、井上のトリオも素晴らしかった。

タイトルが『Good Time Again』と来れば、明らかに”二匹目のどじょう狙い”だが、冒頭の井上のオリジナル<Watch Out>に始まり、カヴァーも歌ものからインストルメンタルの名曲まで厳選され、期待を裏切らない。<Bluesette>は2016年に亡くなったトゥーツ・シールマンスへの想いだろうし、ジョー・ザヴィヌル作の<Birdland>にはジャコ・パストリアスへの想いが込められていると思う。21世紀も大分経っていわゆる”スタンダード曲”には距離を感じるようになって来た、というかオリジナル演奏を知らないことが多いのではないか。前述の2曲や、カーペンターズの<Close to You>やスティングの<Fragile>など収録された曲の半分は、井上にとってもリアルタイムで顔が見えた”新しいスタンダード”と言えると思う。強いて言えば、井上のオリジナルをもう少し聴きたい気はする。

井上の幅広い音域でよく歌うベースと、井上が最も信頼し気心が知れた名手3人が確かなテクニックと感性に支えられながら、ほどよいダイナミクスとグルーヴで心地よく響き合う。音楽の歓びに満ちていて、心地よい切なさとともに穏やかで優しい空気が聴く者を包み込む。

井上は昨今、大西順子トリオのベーシストとしても活躍しているが、最終曲では大西がゲストピアニストとして<Never Let Me Go>に参加、しっとりとしたバラードを聴かせる。

塩谷哲的な表現を借りて、私は前作を「気負わない意欲作」と呼んだが、その発展的な継続に見事に成功した快作だし、音楽の歓びを伝えながらリラックスした時間を演出してくれるこの1枚を多くの方に聴いていただきたいと思う。多忙なメンツにして貴重な発売記念ライブも楽しみだ。(神野秀雄)

 


Good Time (ポニーキャニオン)

【ライブ情報】『Good Time Again』CD発売記念ライブツアー
井上陽介(Bass)、秋田慎治(Piano)、荻原亮(Guitar)、江藤良人(Drums)

3月1日 渋谷JZ Brat
3月4日 名古屋ラブリー
3月5日 徳島スイング
3月6日 岡山ルネスホール
3月7〜8日 大阪ミスターケリーズ
3月9日 豊橋コティ

【関連リンク】

井上陽介ホームページ
http://www.geocities.co.jp/MusicHall/3814/

【JT関連リンク】

『井上陽介 / Good Time』
http://www.archive.jazztokyo.org/five/five1153.html
塩谷哲トリオ “ライヴ 2014”
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report726.html

モントルー・ジャズ・フェスティバル 2014
ブルーノート東京・オール・スター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ with スペシャルゲスト 小野リサ
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report728.html

 

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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