#1385『川崎燎 Ryo Kawasaki/Level 8』

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text by Keiichi Konishi 小西啓一

Vivid Sound VSCD4370  ¥2,808円(税込) 3/22発売予定

Level 8;
Ryo Kawasaki (g)
Raun Juurikas (key)
Kaarel Liiv (elb)
Eno Kollom (ds)

Guests;
Denise Fountoura (Vocal on Track 3)
Lisa Kawasaki (Flutes on Track 3)
Kristi Volmer (Cor-anglais on Track 10)

01.Agana
02.Sometime
03.Trinkets and Things*
04.Raisins
05.Morning Light
06.Letter From Green Butterfly
07.Level 8
08.Seasons
09.Fonky Tonk
10.Evening Mist
11.Maximillian
12.Salty Iron
13.Luiza**

All music by Ryo Kawasaki except *by Ryo Kawasaki, Denise Fontoura and Radha Thomas, and **by Antonio Carlos Jobim.

Produced, Arranged, Mixed and Mastered by Ryo Kawasaki at Ryka Studio, Tallin, Estonia for the period of June-November, 2016
Recorded by Johannes Lohmus at Matrix Studio, Tallin, Estonia for the period of July-October, 2016

真のコスモポリタンにして多才で多彩なギター・レジェンド、川崎燎。偶然訪れた北欧エストニアの首都タリンに居を構え、その地から欧州・日本・世界各地にジャズ発信を続け既に15年余り。その彼も今年で古稀(!)を迎えることになったが、その記念アルバムが届いた。白髪・白鬚で温厚、哲学者にも似た深味ある佇まいは、70という齢どおりだとも言えそうだが、内に秘めた情熱・闘志は健在で、未だ枯淡などという言葉を微塵も感じさせない。その良き証座とも言えるのが本作で、ラウン・ジュリアス(key)以下のタリンの気鋭リズムメンを従え、”エレクトリックの申し子“とも呼ばれた、20~30才台のジャズ・ロック~フュージョン路線時代を彷彿させる、溌溂として覇気あるプレイが全編展開されている。

2012年にリリースされた前作『スペイン』は、タイトル曲などの有名ナンバーをアコギ・ソロで演奏したもので、内省的な印象も強く、ある意味 “渾身” とも言えそうな自信作だった。だが今作は一転、エレギでかなり攻めに転じた感もあり、自身のオリジナルで纏められ、そのギター・テクも流石と思わせる流麗さで、“あの頃” の川崎をこよなく愛している人、最近彼に注目し出した若いファンなど、多くのギター・ファンを魅了するに違いない。実質上の初リーダー作『プリズム』(75年)収録の軽快な <アガナ>(鈴木良雄とのデュオ/07年もあり)、ブラジリアン・フュージョンの銘品として再脚光浴びている <トゥリンケッツ&シングス>(『ミラー・オブ・マイ・マインド』79年)等、意気・血気盛んな時代の懐かしいフュージョン・チューンも収録されており、それらを ”今” を意識しつつ、伸びやかかつ刺激的に再演している。他にもバルトの涼やかで晴れやかな空気を漂わせた<モーニング・ライト>、バラード表現も巧みな<レター・フロム・グリーン・バタフライ>、典型的なジャズ・ロック・ナンバー<ライジンズ>等々、彼ならではの好曲・妙演が並び、とくにスケール感豊かなスペーシー・サウンドが鳴り響くタイトル・チューンは、意欲的でありつつ達観も感じさせる現在の彼の心根を、しなやかにしたたかに活写している様だ。

彼は東京からNY、タリンへと移動して来た、デビュー以降のこれまでの活動軌跡を8つの期間(8レベル)に分類、原ライナーでそれぞれを紹介しているが、”レベル7” はタリン移住から13年迄のエストニア初発期、そして現在の”レベル8“は、それ以降同地に根を下ろし、若いミュージシャン達と ”燎流“ にアダプトした、いわゆる ”フュージョン・ミュージック“ をメインに据えた時期と規定、このアルバムでは全13曲を通し、”レベル8“(どうやらユニット名でもある様だ)に於けるこれまでの成果(そこには当然50余年に亘るギター人生も反映されているが…)を、無理ない形でしかもきっぱりと開示する。

中でもオーラスの3分に満たない短いソロ・ギター・チューン<ルイザ>。温かくも透徹した眼差しから紡ぎだされるこの音群は、同世代のぼくには心に沁み渡った。

人生の達人=川崎燎に祝杯を…。

 

【関連記事】

特別寄稿 「良い音、忠実な音、心地よい音、太い音、細い音、歪と飽和の識別原理」 by 川崎燎
http://jazztokyo.org/category/column/special/

Interview #152 川崎 燎 Ryo Kawasaki (Part 1)
http://jazztokyo.org/interviews/post-12996/

 

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小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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