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CD/DVD Disks~No. 201

#295 『Misha Mengelberg / Afijn』

text by Kazue Yokoi 横井一江

DVD ICP044 DADA IMAGES 03(蘭)

Documentary: Afijn
on composer, bandleader and improviser, Misha Mengelberg

Extra features
Pief - cat on the piano, filmed by Misha Mengelberg, 1967
Eeko - a duet of Misha Mengelberg and his parrot, 1972
Met welbeleefde groet van de kameel (With Sincerest Regards from the Camel) - ICP orchestra and Anthony Braxton
Improvisation - Misha Mengelberg & Han Bennink duo
Kneef - Misha Mengelberg & Dave Douglas duo
Gare Guillemin - Misha Mengelberg & Dave Douglas duo
Kachel - ICP orchestra at Mahogany Hall, Edam
Baltimore Oriole - ICP orchestra at Mahogany Hall, Edam

*英語字幕付
*録画方式の関係で、日本では普通の家庭用 DVDプレイヤーでは再生できないが、パソコンで再生可能。(ただしすべての機種で保証するものではない)

Distribution: http://www.toondist.nl
Mail order: http://www.subdist.com/home.htm
(日本国内の流通状況については不明だが、上記 CD通販ショップで購入可能。ただしHPは英語のみ)

10月から11月にかけて来日し、数カ所で公演を行ったICPオーケストラ。その最初のライヴが行われた横浜の「エアジン」のCD販売コーナーを物色していたら、トロンボーンのウォルター・ウィールボスにこのDVDを薦められた。ウィールボス自身のCDもそこに置いてあったのだが、それを差し置いて「これは絶対に買うべきだ」という。そして、次の公演が行われた新宿ピットインで顔を合わせると「見たか?」と聞いてくる。頷くと満足げに「よかっただろう!」という言葉が返ってきた。
『Afijn』は、オランダのジニアス、類い希な音楽家ミシャ・メンゲルベルクpの生涯とその音楽を追ったドキュメンタリー。メンゲルベルクだけではなく、ハン・ベニンクなどのミュージシャンや作曲家、ビジュアル・アーティスト、マネージャーなどにもインタビュー、さまざまな証言からメンゲルベルクの特異なキャラクターと音楽性が徐々に浮かび上がってくる。メンゲルベルクのハービー・ニコルス感やセロニアス・モンク感が、また、貴重な映像や写真から60年代の前衛の空気も読みとれる。現在に至るICPオーケストラの数々の映像やメンゲルベルクの70才記念コンサートの様子も。ドキュメンタリーとしての構成もよく、メンゲルベルクの世界を知る最良の資料であると共に、映像として見ていても面白く、彼やICPの音楽の秘密に少しだけ近づいた気持ちになれる。1960年代以降のヨーロッパのジャズ・即興音楽に興味のある人には必見のフィルムだ。
また、 DVDにはドキュメンタリー以外にICPオーケストラにアンソニー・ブラクストンsaxも加わったコンサート、デイヴ・ダグラスtpとのデュオなどのライヴ映像、飼い猫Piefがアップライト・ピアノを弾いている(?)姿をメンゲルベルクが撮った短いフィルムも収録されており、これがそれぞれ楽しめる。ジャケットの写真はそのピアノを弾く(?)猫Pief。ジャケットを見ながら「これは僕の猫でねぇ。この猫には多くのことを教わったのだ」と呟いていたメンゲルベルク。
そこにいるだけで圧倒的な存在感があり、その表情はどんな時も絵になる。やはりメンゲルベルクは特別な存在だ!

初出:Jazz Tokyo 2006年11月30日

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。ドイツ年協賛企画『伯林大都会-交響楽 都市は漂う~東京-ベルリン2005』、横浜開港150周年企画『横浜発-鏡像』(2009年)、A.v.シュリッペンバッハ・トリオ2018年日本ツアー招聘などにも携わる。フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)、共著に『音と耳から考える』(アルテスパブリッシング)他。メールス ・フェスティヴァル第50回記。本『(Re) Visiting Moers Festival』(Moers Kultur GmbH, 2021)にも寄稿。The Jazz Journalist Association会員。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

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