JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 51,117 回

CD/DVD DisksNo. 228

#1393『Craig Taborn / Daylight Ghost』

text by Masanori Tada  多田雅範

現代ピアノ・ジャズ・シーンの諸相をあぶり出す6アルバム連続試聴記

 

ECM2527

Craig Taborn (piano, electronics)
Chris Speed (tenor saxophone, clarinet)
Chris Lightcap (bass)
Dave King (drums)

01 The Shining One 3:34
02 Abandoned Reminder 7:46
03 Daylight Ghosts 7:36
04 New Glory 3:14
05 The Great Silence 5:37
06 Ancient 8:15
07 Jamaican Farewell 5:39
08 Subtle Living Equations 4:31
09 Phantom Ratio 8:29

Recorded May 2016 Avatar Studios, New York
Engineer: James A. Farber
Assistant: Tim Marchiafava
Cover photo: Thomas Wunsch
Liner photos: Bart Bathinski
Design: Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher

 

現代ジャズの最高水準問題集が登場だ!伝統的なピアノ・カルテットのフォーマットで、この2017年に、R&Bやポップスや皇帝カート・ローゼンウィケルがブラジル音楽にうつつを抜かして失脚罷免される2017年に、ジャズを聴く気が起こるのかとおのれに問う、おれはコレを聴く、

みんなはバッド・プラスは好きかい!おれはキライだね、新しくて痛快じゃないかって?、そのとーり、それは認めます、だけどそこで生起している演奏のジャズのレベルは驚くほど低いものだ、クイーン「伝説のチャンピオン」そのまま演るなんて、つい聴いてしまうオイラだが、このやろう、ジャズ・ミュージシャンはジャズを演れと言いたい、ピアノのアイヴァーソンはプーさんのピアノに心酔していたり、そこんところもちょっと掘ってみてほしい、

そのバッド・プラスそのものであるタイコのデイヴ・キングが?テイボーンの新作カルテットのタイコなのだってか!

そして、この『Daylight Ghost』を聴くのだ、わきまえたいい叩きをするじゃねえか、デイヴ・キング、

この『Daylight Ghost』の最大のポイントは、ズバリ、管のクリス・スピードの存在だ、このナナメになった棒読みトーンの官能だ、なに?難しいソロまわしや見栄を切るフレーズが無いだと?だったらコルトレーンとかジョシュアを聴いてろ!、もしかしてジミー・ジュフリー、リー・コニッツ、マーク・ターナーという感性のリレーといったものを認識しておらないでジャズがどうこう言うのか、お前さん、

いや、ジャズ・ミュージシャンはジャズの歴史のために演奏しているわけではない、もちろん、最初に到来するのは官能だ、持続するのは謎だ、

1曲目から9曲目まで、そうさな、ひとつ、聴取の実験をしてみてほしい、いいだけ様々なジャズを聴いてきただろう?、サウンドの行方、打音、和音、タイミング、その瞬間瞬間に運ばれていっている音楽のラインを瞬時瞬時に予測して聴くものだよ、な!、その予測をはぐらかす謎のようなもの、宙釣りされて未可決に漂う成分、その持続がジャズというものの正体だと言えば語弊があるかもしれないが、

ジャズ演奏の文法は日々更新されているだろう、プレイヤーにとってジャズは言語である、ジャレットは部族の言語とか言っていたな(それはウィスパーノットやレイディアンスまでは成功していた)、テイボーンら4にんは自覚的である、彼らは一刻一刻のジャズから目をそらしてはいない、

5曲目あたりから、どこまで行くのかと思わされる、聴き流し不可能、現代ジャズ源泉かけ流し、

それにしても、モーガン、クリーヴァーではなく、この4者の人選は?、もちろん大賛成だ、レーベルも主宰しシーンのセンターに躍り出た感のあるクリス・スピードの存在を微細に探るのだ(この大看板を失ったジム・ブラックがクリス・スピードのそっくり奏者を配置しているのも微笑ましい)、ベースのクリス・ライトキャップの距離の保ちかたも的確だ、ECMアイヒャーの錬金術と言えるだろうか、

http://player.ecmrecords.com/taborn-2527/cms/project

参考記事:
ECM新時代を告げる重要盤。中心にはまたしてもトーマス・モーガンが!

http://tower.jp/article/series/2013/07/11/craig_taborn

多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください