#1405『沖至 井野信義 崔善培/Kami Fusen』

閲覧回数 11,290 回

text by Kazue Yokoi 横井一江

NoBusiness Records NBCD 100

沖 至  (trumpet, bamboo flute)
井野信義(bass)
崔善培  (trumpet)

1. Pon Pon Tea (Itaru Oki) 12:16
2. Yawning Baku (Nobuyoshi Ino) 14:47
3. Ikiru (Itaru Oki) 10:38
4. Kami-Fusen (Nobuyoshi Ino) 9:02
5. I Remember Clifford (Benny Golson) 6:40
6. Old Folks / Tea For Two (Dedette Lee Hill / Vincent Youmans) 11:31

Recorded live on the 2nd January 1996 at Café Amores, 山口県防府市
Engineer: 末冨健夫
Concert produced by 末冨健夫
Mastered by Arūnas Zujus at MAMA studios
Photo of 崔善培 by 松本晃弘
Liner notes by 末冨健夫 and 金野晃吉
Design by Oskaras Anosovas
Produced by Danas Mikailionis and 末冨健夫 (Chap Chap Records)
Co-producer: Valerij Anosov


ライヴという現場では、さまざまな出会いや試みが行われている。なかには思いがけない出会いやまたとない演奏もあるのだが、そのほとんどはその場に居た人々の記憶の中に留まるにすぎない。だが、稀に一期一会ともいえる貴重な出会いが音盤として日の目をみることがある。本作はまさにそのような一枚だ。

日本のフリージャズ草創期の立役者のひとりながらフランスに移住にして長い沖至、80年代半ば過ぎに日本の音楽シーンに驚きをもって迎え入れられた姜泰煥トリオのメンバーだった崔善培、この2人は同じトランペッターながら異なる顔を持つ。そして、ジャズから即興音楽まで国内外のミュージシャンとの共演を重ねてきたベースの井野信義、特異な編成ながらも、いやそれゆえか、滅多にないセッションとなった。

冒頭の<ポン・ポン・ティー>から井野のベースラインに乗るようにして沖と崔の2管がスリリングに絡み合う。<マック・ザ・ナイフ>の引用は余興か。井野の代表的な作品<バクのあくび(Yawning Baku)>や<紙ふうせん>で、ふと故レスター・ボウイを思い出したのは、たぶんその2曲が井野とボウイのアルバム『DUET』(キング)収録曲だったからかもしれない。井野のアルコの上で奏でられるおおらかなメロディーから自由な即興演奏へ。トランペットのブリリアントな響きは人をときめかす。<生きる>で沖は横笛も用い、2人はアブストラクトな対話を時に叙情性をからませながら繰り広げる。リズムを決めるドラムスやコード楽器なしのベースとトランペット2本というシンプルな編成だからこそ、井野が拓く空間での自在な交歓が可能だったといえる。ベニー・ゴルソン作曲<アイ・リメンバー・クリフォード>やケニー・ドーハムやマイルス・ディヴィスの演奏で知られる<オールド・フォークス>が入っているのは、一歩先の音楽を歩んできた2人のトランペッターが共にジャズをバックグラウンドに持つからだろう。彼らの音楽もまた歴史上のリジェンドと繋がっているのである。

Share Button
横井一江

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。The Jazz Journalist Association会員。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。海外レポート、ヨーロッパの重鎮達の多くをはじめ、若手までインタビューを数多く手がける。 フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↓ ロボットでないかお知らせください。 * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.