#1404『Theo Bleckmann / Elegy』

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text by Masanori Tada 多田雅範

 

ECM2512

Theo Bleckmann  (Voice)
Ben Monder  (Guitar)
Shai Maestro  (Piano)
Chris Tordini  (Double Bass)
John Hollenbeck  (Drums)

1. SEMBLANCE
2. COMEDY TONIGHT
words by Stephen Sondheim
3. FIELDS
words by Theo Bleckmann
4. THE MISSION
5. LITTLEFIELDS
6. ELEGY
7. TO BE SHOWN TO MONKS AT A CERTAIN TEMPLE
words by Chiao Jan (from The Poetry of Zen)
8. CORTÈGE
9. ELEGY (VAR.)
10. TAKE MY LIFE
words by Theo Bleckmann
11. WITHER
12. ALATE

Music by Theo Bleckmann, except <Comedy Tonight> by Stephen Sondheim

Recorded January 2016 at Avatar Studios, New York
Engineer: James A. Farber
Assistant: Akihiro Nishimura
Cover and liner photos: Caterina di Perri
Design: Sascha Kleiss
Produced by Manfred Eicher

 

駅前のあゆみブックスでマガジンを読んでいると、本盤が輸入盤コーナーに取り上げられていた、ファンとしてはありがたい、「冥界のジャズ・カンタータ」との評、すばらしい、

テオ・ブレックマンとベン・モンダーが来日公演をしたのは01年と02年だった、『Origami』(songlines)というヴォイスとギターが浮遊するイマジネイティヴな逸品を引っ提げてのツアー、この頃の二人をECMは捕獲すべきだったのでは、と思うが、モンダーのECM初リーダー作は昨年2016年、ポール・モチアン絡みでようやくだったから、

ケイト・ブッシュ・ファンが必聴なのはその名もズバリな『Hello Earth!』(Winter & Winter)、2012年、テオ・ブレックマンの音楽愛が溢れた名品だ、ケイト・ブッシュも成熟して失ってしまった狂気の本質をテオはしっかりと再現してみせている、もちろんテオらしいやり方で、

テオ・ブレックマンと一緒にやっていたのは天才ピアニスト安田芙充央(やすだふみお)、まったく似つかわしい透明さと勁さを備えた音楽家である、...おお!このGWに安田芙充央とヨアヒム・バーデンホルストや井野信義らとライヴがあるのを今見つけた、ヨアヒムのような柔軟で全方位的なインプロヴァイザーは21世紀的に新しいし、やはりつながるべき人はつながるのである、

本作は、テオ・ブレックマンとベン・モンダーに3人が加わった構成で、トルディーニとホーレンベックは近しいサーキットにいる演奏家だが、ピアノのシャイ・マエストロは初共演になるのではないかな、その采配こそはECMらしいところであるし、作品を強く印象的なものにしている、

イントロがシャイ・マエストロのソロが一筆、90秒ほどの、心憎いスタート、宣言にも似た魅惑のイントロダクション、

そして、ブレックマンはヴォイス・パフォーミングではなく、歌詞を朗々と響かせはじめるのだ、

チガウじゃん、なんて野暮なことを言ってはいけない、これこそ、ECMアイヒャー・マジック、伝統工芸品となった勝利の方程式、なのだ、たまらん、引き込まれる、これを70年代ECM諸作と並べて聴いてみてもまったく引けを取らない美と透明と浮遊のECMワールドではないか、ギターはリピダルのよう、タイコはクリステンセンのよう、

ECMレーベルの作品は、マンフレート・アイヒャーによるひとつのミュージックなのだ、

3曲目を聴いていると、モンダーの弾きがメセニーちっくに鳴るものだから、妄想に走るのだ、これはパット・メセニーがECMにケンカを売ったかのように『ファースト・サークル』を、あのECMにはあり得ない1・2曲目(素っ頓狂なマーチと疾走するロックビート)をかまして表題曲の天国的名曲を叩きつける、ペドロ・アズナールのヴォイス、そこが反響しているのではないか、もとい、一瞬の妄想だ、やっぱ、今のなし、

それにしても、シャイ・マエストロは見事にECMワールドに弾くものだ、この、どのようにも弾ける、どんな音楽にも適切に対応するピアニズムの正体が見えない、いや、もうこれだけの素晴らしいECM作品をサポートしてくれたのだから文句を言うべきではないんだが、なんだかんだ言いながらシャイ・マエストロ参加盤をレビューしているおいら、当たり前の正しい適切な演奏ってどうなの、

ある若いピアニストが、ECMでレコーディングというと、そういう演奏しますわよ、と事もなげに言っていたっけ、さて、ECMレーベルがいつからそのような抑圧装置になってしまっていったのか、それはさ、ECMが父の名を明かしてしまったジミー・ジュフリー盤(他レーベルの復刻)のときにはすでに、というやつさ、怪物はその死の予兆として、とかさ、

後半、エレジーのリプライズからの4トラック、への展開が、特に素晴らしい、ブレックマンの声が躍動する、このセッションの熱気が一体化している到達、同じドイツのWinter & Winterレーベルから引っこ抜いただけある、ブレックマンの世界に打って出る名刺的一枚、良かったなあテオ・ブレックマン、

 

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多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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