#1425『今井和雄 / the seasons ill』

閲覧回数 2,750 回

Text by 剛田武 Takeshi Goda

Hitorri CD: hitorri -989 1,500円(+税)

Kazuo Imai – electric guitar

1. Delay 160925 26’28”
Performed at Soup, Tokyo, September 25th, 2016

2. Delay 160407 28’29”
Performed at Earthdom, Tokyo, April 7th, 2016

Recorded by Shingo Matsuoka
Mastered by Takeshi Yoshida
Produced by Kazuo Imai and Shingo Matsuoka
Design by Kazuo Imai
Special thanks to Yoshihisa Furukawa, Cal Lyall and Keiko Higuchi

 
暫しも休まず弦打つ響き 飛び散る旋律 はしる轟音

ギターと格闘する男――――それが今井和雄を初めて観たときの印象である。それ以来決して回数は多くはないが、折に触れて今井のギター演奏を目の当たりにしてきた。6年半経っても最初の印象はまったく変わっていない。両腕でギターを抱え込み、左右10本の指ばかりか、バイオリンの弓、金属板、鎖など様々な異物を弦に叩きつけて音を削り出す今井の汗の滴る額は、格闘家というより「トンテンカン、トンテンカン」と槌を打つ村の鍛冶屋を思わせる。

正直に告白すれば、筆者は今井の熱心なファンとは言えず、音源も所有していなかったが、つい最近、偶然今井のCDを入手することとなった。ある来日ミュージシャンに手渡すように託けられたCDが、相手が現れなかったために、代わりに拝受する幸運に恵まれたのである。ちょうどスタートしたPSF関連リリースやイベントに今井和雄の名前を見つけ、気になっていたところにだったので、単なる偶然ではないかもしれない。

ライナーノーツによると、録音機器が誤動作するほどの大音量のため録音に苦労を重ね、なんとか成功した7回の録音からベストなテイクを選出したという。1972年、高校2年生のとき入学したギター教室の講師がたまたま高柳昌行だったという偶然の運命で、ギターを弾き続ける人生を選んだという今井のエッセンスが集約された本作を、聴取印象に基づいて新たに言語で再表現するよりも、レビューとしては聊か破格ではあるが、筆者が体験したライヴ観戦記を羅列することで<不吉な季節>により近づくことが出来るのではないだろうか。

【今井和雄ギター演奏 観戦記】(ブログ A Challenge To Fateより抜粋・一部改編)

① 2011年2月6日 六本木Super Deluxe『Oslo-Tokyo Connection』
ポール・ニルセン・ラヴ(ds)、中原昌也(electronics)と共演した今井はフルアコ・ギターをチェーンや金属棒を使って弾き倒す過激なプレイを見せた。45分に亘る熱演の後、中原は「終ろうと思って今井さんを見ると首を横に振るので演奏を続けた。音が大きすぎて自分の演奏が全然聴こえず苦労した」と語った。

② 2011年4月12日 六本木SuperDeluxe『Test Tone』
藤川義明(as)、ASTRO(electronics)、ヒグチケイコ(vo)とのセッション。今井は最初からギターの弦の間にメタルプレートを挿入しての反則プレイ。それを皮切りにASTROの轟音エレクトロ・ノイズとヒグチの多彩なヴォーカリゼーションが炸裂。面白かったのは藤川がサックスを吹かずに奇妙な身振りで踊っていたことだった。どんどん高まるテンションに藤川もフリークトーンを吹き鳴らし、リズム楽器が無いのに踊りだしたくなるビートの饗宴だった。

③ 2012年8月25日 福島・飯坂温泉『ノイズ列車・ノイズ温泉』
大震災による原発事故をきっかけに開催された「フェスティバルFUKUSHIMA」の2年目の目玉イベント。走る電車の中でノイズ演奏をするという破格の試み「ノイズ電車」が終了したあと、宿泊先の老舗旅館の地下の宴会場でノイジシャンに混じって今井がソロで演奏した。持ってきた2台のギター・アンプの1台がサウンドチェックで飛んでしまったというが、アンプ1台で十分すぎる爆音演奏。フィードバックを使わずに絶え間なく激しく弾きまくりの演奏は、デレク・ベイリーの対極にあるパワー即興。あまりの激しさに、電車酔い以上に頭が朦朧とした20分。

④ 2012年11月29日 渋谷WWW『阿部怪異と集団投射』
ノイズバンド非常階段のメンバーを中心とする「阿部怪異」との対バン。「集団投射」は、今井の他に井野信義(b)、藤川義明(as)、本田珠也(ds)の4人。高柳昌行の提唱した演奏コンセプトを名前に冠したユニットは、それまでに今井、藤川、井野のトリオで新宿ピットインで2度出演したが、ドラムが参加するライヴは初めてだった。冒頭からすべてを忘れさせる激烈な演奏。機材トラブルで今井のギターの音が出ないが、他の3人は我関せずと自分の演奏に没頭している。機材が直り鬼の形相で髪振り乱してギターを掻き毟る今井の迫力で、演奏が俄然パワーアップ。40分間一瞬も立ち止まらず超ハイテンションが持続する演奏は、音楽を聴くというレベルを遥かに超えたひとつの「体験」だった。「ホント疲れたわ~」と疲労困憊の本田を除いて他の三人が淡々と楽器を片付けていたのが印象的だった。

⑤ 2017年4月7日 大久保ひかりのうま『第三回天下一Buzz音会 -披露”演”-』
Shogo Haraguchi(b)とのデュオ。鎖やガラス瓶、金属板など異物を使いながら、自らの10本の指と6本のギターの弦との摩擦熱をダイレクトに音に転化するプレイは、今井の胎内で共振して歪んだ表情を表出する。その波動に対峙するHaraguchiのベースは幾多のエフェクターに濾過されて空間の歪みを助長する。共演という名の共犯者。

⑥ 2017年6月25日 六本木SuperDeluxe『Tokyo Flashback P.S.F. 発売記念 ~Psychedelic Speed Freaks~生悦住英夫氏追悼ライブ』
灰野敬二(g)+今井和雄(g)で出演。灰野と今井の初共演は2006年2月6日中野Plan Bだが、その時灰野はパーカッションだったので、ギター同士では初共演。導入の灰野の「浜千鳥」のソロ歌唱に続き、アンプのノイズを引き裂く今井の硬質な音と、深い残響に拡散する灰野の音が絡み合う。誰かがゴジラ対キングギドラと形容したが、両者の間に産まれた共感の嵐がPSFが提唱したインディベンデント精神の継続を約束するように思えた。

(2017年6月29日記 剛田武)

Share Button
剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↓ ロボットでないかお知らせください。 * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.