#1446 『Cortex / Avant-Garde Party Music』

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text by 剛田武 Takeshi Goda

CD: Clean Feed CF441CD

Cortex:
Thomas Johansson (tp)
Kristoffer Alberts (sax)
Ola Høyer double (b)
Gard Nilssen (ds)

1. Grinder
2. Chaos
3. Waltz
4. (If you where) Mac Davis
5. Disturbance
6. Observe/Reverse
7. Perception
8. Off Course

All compositions by Thomas Johansson (TONO)

Arrangements by Cortex
Recorded by Dag Erik Johansen and Kai Andersen at Athletic Sound January 2017
Mixed by Daniel Mikael Wold, May 2017
Mastered by Fridtjof Lindemann at Strype Audio, May 2017
Produced by Cortex
Executive production by Pedro Costa for Trem Azul
Cover photo by Kristinn Gudlaugsson
Design by Travassos

 

大脳皮質が踊り出す前衛的な宴会音楽。

現在日本ツアー中のNY出身のアルトサックス奏者クリス・ピッツィオコスは来日前のインタビューで次のように語っていた。

“(ヨーロッパで)アンダーグラウンド・ミュージック・シーンと呼ばれているのは、実際には70年代スタイルのロフト・ジャズと80年代初めのニューヨーク・ダウンタウンの即興音楽”

“何かが新しいとか、前衛的とか、実験的とか呼ばれるや否や、それは即ち新奇性、前衛性、そして実験性の終わりを意味する”

さらに芸術への政府基金の問題点をも弾劾し、ヨーロッパの「前衛ジャズ」シーンを揶揄する怖いもの知らずの発言は、理想に燃える新進若手アーティストの潔癖な正義感を感じさせる。

そこへタイミング悪く(良く?)登場したのが『アヴァンギャルド・パーティー・ミュージック(前衛的な宴会音楽)』と名付けられたこのアルバム。北欧ノルウェー出身のジャズ・カルテットで、公式サイトには「ノルウェー芸術評議会と音楽輸出協会のサポートを受けている」と書かれている。プロフィールには「6・70年代アメリカの前衛ジャズ、特にオーネット・コールマンとドン・チェリー、さらにジョン・ゾーンにインスパイアされた」とある。まさしくピッツィオコスのいう三つの罪(?)のすべてに当て嵌まる。ネタにして笑い者にしようとか、逆にピッツィオコスの理想主義を反駁しようとか、底意地悪い意図がある訳ではないが、欧州前衛ジャズの代表レーベルであるポルトガルのClean Feedの新譜リストの中で、このタイトルが真っ先に気になったのは、ピッツィオコスの発言の賜物である。

果たしてどんな音が飛び出すか?1曲目のアルトとペットのテーマは確かに往年のオーネット・コールマン・カルテットを髣髴させる。しかしながら端々に感じる燃え上がるエネルギーは何だろう。特にアルトの常軌を逸したソロは、オーネットやジョン・ゾーンとは異質の分裂的なスピード感がある。恐らくハードコアパンクが好きに違いない。ドラムの密度の高いロールはハーシュノイズの音圧を再現する。ベースは同じフレーズを反復し、ポリリズム的なミニマル感を醸し出す。そして全曲の作曲を手掛けるトーマス・ヨハンソンのトランペットは、断末魔の叫びのような喘ぎ声を交えつつ、クールなフレーズで平静を装う。隠れキリシタンならぬ隠れブラックメタラーかもしれない。プレイの端々から滲み出る異物感が、形式的なビバップ&ハードバップのフレームの中で沸々と煮えたぎっているのを感じる。それはフェイク(偽物)ではなく、アウトロー(はみ出し者)でもない。ヨーロッパ的前衛ジャズの定型を内側から突き崩す圧砕機(Grindr)であり内乱(Disturbance)である。生まれいずる混沌(Chaos)のワルツ(Waltz)こそが我が望み。観測し流れを逆転させ(Observe/Reverse)て、知覚(Perception)の扉の針路を逸らす(Off Course)のが狙い。つまり楽曲タイトルが彼らの真の意図を物語っているのである。ただし、アメリカのカントリー・シンガーの名前を冠したM4は意味不明。マイルスに引っ掛けたのか?

ヨーロッパだって黙っていない。アヴァンギャルドなパーティ・ミュージックは、大脳皮質の内側から溢れだす創造性への反乱の歌なのである。
(2017年9月29日記 剛田武)

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剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

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