#1447 『Avishai Cohen / Cross My Palm With Silver』

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text by Masanori Tada 多田雅範

ECMレーベルの新作を聴くシリーズ2017秋 #1

ECM 2548

Avishai Cohen   Trumpet
Yonathan Avishai   Piano
Barak Mori   Double Bass
Nasheet Waits   Drums

1.Will I Die, Miss? Will I?
2.Theme For Jimmy Greene
3.340 Down
4.Shoot Me In The Leg
5.50 Years And Counting
music by Avishai Cohen

 

「ECMならではの飛翔するトランペット・トーンの鮮やかな一枚」

ECMレーベルの新作を聴くシリーズ2017秋、第一打席、は、ベーシストにも同姓同名同じイスラエル出身がいるトランペッター、アヴィシャイ・コーエン(1978-)、

現代の音大やジャズ研にいる若きサックス奏者たちが必ず参照するという枕詞を何度も書いているが、21世紀ジャズ・サックスのシーンを一変させた天才マーク・ターナーの、これがまたなかなか決定打代表作神プレイを指摘するのが難しい(ははは、そんなわけないだろー)経歴の中で、ECMレーベルに足跡を残し始めていよいよ新理論を打ち立てたノーベル賞学者のようにファンたちをのけぞらせたカルテット名盤『天のろくろ Lathe Of Heaven』2014年!、で、マーク・ターナーのプレイを際立たせる名演を響かせたトランペッター、それがアヴィシャイ・コーエンとの出会いだった、

そこから昨年のECM初リーダー作『Into The Silence』ECM2482、そして本作『Cross My Palm With Silver』がリリースされた、クインテットだった前作からテナーサックスのビル・マケンリーが抜けて、ベースが同郷のバラク・モリに変わったカルテット編成、

伸びやかなトランペット・トーンの陰影を含んだECM独特のヨーロッパ詩情、これに尽きる名盤だ、

クラシックのコンサート会場で息をのんで耳をそばだてている気持ちになるものだ、繊細なジャズ走行の揺れに痺れる、ECMレーベルが発明したともいえるクールに手に汗をにぎる独自の世界観だ、プロデューサーのマンフレート・アイヒャーに完全にコントロールされている安心感でもある、そこのところ個々のミュージシャンは一定の制約の中でのプレイであろうとも感得するもので、しかしそれはマイナスではない、ところどころの演奏は適切にサウンド全体に奉仕している、

その中で最大の聴きどころは、4曲目「Shoot Me In The Leg」、12分を超えるアルバムの最長トラックだが、ドラムのナシート・ウェイツの叩きの加減速の妙に導かれてだろうか、6分50秒あたりからピアノのテンポが風景を変えるように減速するのである、個人的にはそこがツボだな、

ECMレーベルには創成期からのエンリコ・ラヴァ(イタリア)とトーマス・スタンコ(ポーランド)というすべての足跡を聴くに値するトランペッターの巨匠がいるわけだが、フリューゲルホーン奏者のケニー・ホイーラー(イギリス)もいるわけだが、そういえばレーベルにはマーカス・シュトックハウゼン(あの高名な現代音楽作曲家のご子息)の足跡もあった、位置付けとしては後者のラインかな、ある種の音楽の有用性といったことも考える、

おれみたいにボロアパートで暮らしている貧乏じいさんが聴くという音楽ではないのは確かなのだ、ちゃんと耐震性に優れた建物に住んでその空間に相応しいオーディオ装置をもって鳴らされるべきサウンドだという気がずっとしている、ヴィレッジヴァンガードでのライブで超絶テクを披露しつつニューヨーク・ジャズを謳歌するアンブローズ・アキンムシーレという当代きってのトランペッターがいる一方で、そういったジャズの熱さとは距離を置いて、クールでヨーロッパ的なサウンドでリスナーの時間を充実させてくれるような演奏、

40分に満たない収録時間は、そうか、アナログでのリリースがメインなのだな、

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多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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