#1443 『Racha Fora / Happy Fire:New Kind of Jazz』

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今月の Cross Review #3 :『Racha Fora / Happy Fire:New Kind of Jazz』

望月由美
今村健一
及川公生(録音)
楽曲解説

text by Keiichi Konishi  小西啓一

Jazz Tokyo-1002 /インパートメント

Racha Fora
Hiroaki Honshuku – flute/piccolo (track 1)/EWI (track 6 & 10)
Rika Ikeda – violin (track 1, 3, 5, 7, 9)
Andre Vasconcelos – guitar
Harvey Wirht – cajon (track 2, 4, 5, 6, 7, 8, 10)
Sebastian “C-bass” Chiriboga – cajon (track 1, 3, 9)
Special Appearance:
Yuka Kido – Mint Can (track 3)

1. Nardis (Miles Davis)
2. All The Things You Are (Jerome Kern)
3. Happy Fire (Hiroaki Honshuku)
4. In A Sentimental Mood (Duke Ellington)
5. Estamos Aí (Einhorn/Ferreira/Werneck)
6. Summertime (George Gershwin)
7. Someday My Prince Will Come (Frank Churchill)
8. Blues In The Closet (Oscar Pettiford)
9. Nem Um Talvez (Hermeto Pascoal)
10.A Foggy Day (Gershwin)

All the selections arranged and directed by Hiroaki Honshuku

Produced by Hiroaki Honshuku, assisted by Yuka Kido
Recorded on 9/9/2016 & 9/18/2016 at A-NO-NE Studio, Waltham, MA, USA, and 6/16/2017 at Dreamworld Productions, Lynn, MA, USA
Recording Engineer: Hiroaki Honshuku (A-NO-NE Music, Cambridge, MA) <www.anonemusic.com><www.hirohonshuku.com>
Recording Equipment: Metric Halo ULN-8, 2882 2d x 2, ULN-2 2d <www.mhsecure.com>
Recording Assistant Engineer: Doug Hammer <www.dreamworldpd.com>
Mixing Engineer: Katsuhiko Naito (Avatar Studios, NYC) <www.avatarstudios.net>
Mastering Engineer: Katsuhiko Naito
Cover art (Xylograph): Anamaria de Assis Brasil
Graphic Design: Dylan Aiello <http://www.dylanaiello.com>
Photos: Yuka Kido
Hiroaki Honshuku plays Akai EWI


この”JazzTokyo”のバックエンド管理人(?)でもあり、連載ジャズ講座“楽曲解説”も好評..と、八面六臂の活躍を見せるボストン在住の才人、フルート&EWI奏者にして作・編曲家のヒロ・ホンシュク。ボストン生活も30数年になり、今や“ネイティブ”といった貫禄すら漂う彼だが、そのレギュラー・バンドは“ブラジルのリズムに乗ってハード・コアなジャズのインプロを届ける”といううたい文句の、ブラジリアン・ジャズ・テイスト(彼自身は余りこの呼称を好まない様だが,,,)も濃厚な日伯混合ユニット「ハシャ・フォーラ」。ポルトガル語で“さあ行くぞ..”という意味合いを持つこのユニットの3作目が、10月の全国ツアーを前に手元に届いた。ここで一寸それを紹介してみよう。

2015年にリリースされた前作『ハシャ・ス・マイルス』は、<マイルストーン><オール・ブルース>等そのタイトル通りにマイルスの著名ナンバーの数々を、マイルス教の絶対的信者でもあるヒロが、「ハシャ・フォーラ」流にアレンジし取り上げた意欲的なマイルス・トリビュート作品だった。それから2年余り、「ハシャ・フォーラ」自身の状況も変わり演奏内容もそれに伴い変化しているが、今作も彼の “マイルス愛” は不変ということを印象付ける作品に仕上がっている。まずユニットの変化の方だが、何と言ってもメンバーが大きく変わったこと。ユニット結成の原動力で要の一人、ベーシストのハファエルがいなくなり、ベースレス・ユニットとして活動、またギタリストもロック・テイストも濃い、ブラジル出身のアンドレになった。ユニットの “伯色” を鮮明に彩っていたブラジルの打楽器 “バンデイロ” も、ペルー生まれでフラメンコなどでも良く見かける様になった “カホン” に置き変わったこと。更にはユニットのフロント・ラインをヒロと共に担い、このユニットの魅力形成に大きく関わっていたヴァイオリンのリカも、半分の5曲にしか登場していない..など、その変り様はかなりなもの。サウンド自体もブラジル色が少々薄れ、ジャズをコアにしながらの汎ワールド・ミュージック色が強まった感もあり、その肌触りも当然かなり変化している。こう見ると変わりの部分だけが強調され気味だが、サブ・タイトルの “ニュー・カインド・オブ・ジャズ” からも読み取れるように、難解な理論派として知られる彼の実際の師、ジョージ・ラッセル(ヒロはアシスタントも務める)。心の師でもあるジャズ界の黒い帝王、マイルス。この2巨星の遺志を受け継いでいる彼は、ここでも<ナルディス>(ラッセルのリディアン・クロマティック概念とギタリストのハード・ロック趣向、そしてヒロの初のピッコロ・サウンドが絶妙にマッチング)や、<サマー・タイム>(EWIとギターの絡む浮遊感も面白い)等の鉄板スタンダードに、新たな解釈と息吹きを付加しようと言う意慾的な試みを行うなど、そのジャズに向かい合う意気込みはこれまでどおり健在である。そしてこれらのエバーグリーン・ナンバーは、その殆どがマイルスが演奏したことのあるもので、サブ・タイトルは勿論あの傑作『カインド・オブ・ブルー』の引っ掛けである。また直接マイルス絡みで無いナンバー(8、10)も、マイルス黄金期ユニットのピアニスト、レッド・ガーランドが御大のユニットのステージの間で取り上げた、曰く付きのものだと、も言う。この徹底した “マイルス愛”、流石です。

その他は敬愛するブラジルの鬼才エルメスト・パスコール(9)とブラジルのスタンダード・ソング(5)が1曲ずつで、タイトル・チューンのみ彼のオリジナルである。このオリジナルはジャズのインプロとブラジルのストリート感覚、さらにハード・ロック・エッセンスが混然一体化した強力な存在感を保ち、リカのアグレッシブなヴァイオリンと “カホン” の独特なリズム感の融合も印象深いもの。ぼくのお気に入りは、フルート・ミュージックの優雅さに土俗的な味わいも加味された名品<オールザ・シングス..>なのだが、もう一つ興味を惹かれたのは、大ラスに置かれたガーシュインの<霧深き夜>。ここでのヒロのEWIプレーと南米スリナム出身のハービー・ウイルス(アフリカ、ベナン出身の人気歌手アンジェリカ・キジョーの専属ドラマーでもある)の表情豊かな “カホン” ソロ。ガーシュイン・ナンバーからは想像のつかないほどのスケール感・色彩感。タイトル曲やこれら曲などからも聴き取れるように、「ハシャ・フォーラ」は今さまざまな要素により確実に変容を遂げている。永遠の師マイルスの “常に新しい方向に進め” という教えをモットーに、ヒロとそのバンドは “今までに聞いたことのないグルーブ感”、すなわち21世紀型のハイブリット・ミュージックを探求、その創出・深化の過程にある。日頃はフルート(& EWI),ギター、カホンという変則トリオで活動することも多いというこの異彩ユニット。“既成概念を捨てて、楽しいエキサイティングな音楽という(ワクワクする様な)期待だけで、我々のライブを聴きに来ていただければ嬉しいです”と言うヒロ。間近に迫った彼らのライヴに期待するところも多い。

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小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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