#1444 『Racha Fora / Happy Fire』

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今月の Cross Review #3 :『Racha Fora / Happy Fire:New Kind of Jazz』

望月由美
小西啓一
及川公生(録音)
楽曲解説

text by Kenichi Imamura 今村健一

 

Jazz Tokyo-1002 /インパートメント

Racha Fora
Hiroaki Honshuku – flute/piccolo (track 1)/EWI (track 6 & 10)
Rika Ikeda – violin (track 1, 3, 5, 7, 9)
Andre Vasconcelos – guitar
Harvey Wirht – cajon (track 2, 4, 5, 6, 7, 8, 10)
Sebastian “C-bass” Chiriboga – cajon (track 1, 3, 9)
Special Appearance:
Yuka Kido – Mint Can (track 3)

1. Nardis (Miles Davis)
2. All The Things You Are (Jerome Kern)
3. Happy Fire (Hiroaki Honshuku)
4. In A Sentimental Mood (Duke Ellington)
5. Estamos Aí (Einhorn/Ferreira/Werneck)
6. Summertime (George Gershwin)
7. Someday My Prince Will Come (Frank Churchill)
8. Blues In The Closet (Oscar Pettiford)
9. Nem Um Talvez (Hermeto Pascoal)
10.A Foggy Day (Gershwin)

All the selections arranged and directed by Hiroaki Honshuku

Produced by Hiroaki Honshuku, assisted by Yuka Kido
Recorded on 9/9/2016 & 9/18/2016 at A-NO-NE Studio, Waltham, MA, USA, and 6/16/2017 at Dreamworld Productions, Lynn, MA, USA
Recording Engineer: Hiroaki Honshuku (A-NO-NE Music, Cambridge, MA) <www.anonemusic.com><www.hirohonshuku.com>
Recording Equipment: Metric Halo ULN-8, 2882 2d x 2, ULN-2 2d <www.mhsecure.com>
Recording Assistant Engineer: Doug Hammer <www.dreamworldpd.com>
Mixing Engineer: Katsuhiko Naito (Avatar Studios, NYC) <www.avatarstudios.net>
Mastering Engineer: Katsuhiko Naito
Cover art (Xylograph): Anamaria de Assis Brasil
Graphic Design: Dylan Aiello <http://www.dylanaiello.com>
Photos: Yuka Kido
Hiroaki Honshuku plays Akai EWI


ここ数年、ジャズ・シーンではヒップホップのタイム感が身に染みついた世代のミュージシャン(特にドラマー)が中心に出てきて活躍しているが、その本質は、打ち込みのビート感を人力で再現するときの”揺らぎ”のスリルにある。それが、元々その揺らぎを内包しているようなヒップホップの複雑なトラックを逆にデジタル的にジャストなタイム感で叩く超絶技巧のドラマーがもてはやされ、といった入れ子型構造のような進化/深化も見られるようになってきた。

そんな新しいリズムの探求に貪欲な若い世代のジャズ・リスナーにとっても、この本宿宏明(ヒロ・ホンシュク)が提示する“New Kind of Jazz”は相当刺激的に響くはずだ。僕はアルバム単位でカホンを取り入れたジャズを初めて聴いたが、オントップとビハインドなビートが交差しながら、本宿のフルートと共に呼吸するかのように(時に深呼吸も挟みながら)自由に変化していく様に、これまで体験したことのないようなリズムの愉悦を覚えたのだ。

しかも、音像がクール。たしかにフルートや池田里花(リカ・イケダ)のヴァイオリン、アンドレ・ヴァスコンセロスのギターのソロだけ抜き出すと相当激しい演奏を展開している。が、リディアン・クロマチックを学んだ本宿ならではの調性の重力に縛られないアレンジや、低音域のヌケがいいベースレスの編成、フルートとヴァイオリンがユニゾンするときの(時にチコ・ハミルトンのグループを彷彿とさせるような)端正な響きなど、それらすべてが“クール”の方向をむいたベクトルに収斂されていく。中近東の香りが漂う<Nardis>、風を切る疾走感を感じる<Happy Fire>、リラックスした空気の中に漲る緊張が心地よい<A Foggy Day>など、アルバムのどこを切っても美しい。


今村健一(いまむら・けんいち)
1968年、福井県敦賀市生まれ。渡辺貞夫へのインタヴューを契機に、上智大学在学時から音楽ライター/評論家としての活動を開始、『ミュージック・マガジン』を中心に、『ECM catalog』(河出書房新社)を始め単行本やライナーノーツなど幅広く執筆。自らDJを手がけることもある。

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