#1469『Barry Altschul and the 3Dom Factor / Live in Kraków』

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Reviewed by 剛田武  Takeshi Goda

 

CD Not Two Records MW 960-2

Line-up:
Jon Irabagon – ts, ss
Joe Fonda – b
Barry Altschul – ds

1. Martin’s Stew 11:46
2. Ask Me Now 7:28
3. For Papa Joe, Klook, and Philly Too 10:20
4. Irina 8:31
5. The 3Dom Factor 13:56

All composition by Barry Altschul, except “Ask Me Now” by Thelonious Monk
Recorded December 4th, 2016 at the Alchemia Club, Kraków

 

正統と逸脱の両極を内包した21世紀ビバップ解放宣言。

60年代から活動し、ポール・ブレイ、デイヴ・ホランド、チック・コリア、アンソニー・ブラクストン等との活動で知られるベテラン・ドラマー、バリー・アルトシュルが、セロニアス・モンク・サクソフォン・コンペティション優勝の「ジャズ・エリート」と、逸脱音楽ユニット、モーストリー・アザー・ピープル・ドゥ・ザ・キリング(MOPDtK)等の「前衛/実験音楽家」の二面性を持つサックス奏者ジョン・イラバゴンと出会ったのは、MOPDtKのリーダー、モッパ・エリオット(b)が企画したジョン・ゾーンのクラブ「The Stone」でのコンサートだったという。伝統的ジャズと前衛音楽の両方への情熱を表明する二人は、35歳の年の差を超えて意気投合し、2010年イラバゴンのリーダー作『Foxy』を皮切りにコラボレーションを重ねてきた。アルトシュルがリーダーのトリオ「3ダム・ファクター」は、アルトシュルがビリー・バング(vn)と共に結成し2003年にデビューした「FABトリオ」のメンバーで、15年来のパートナー、ジョー・フォンダをベースにフィーチャーし、ハード・バップとフリー・ジャズの間の垣根を取り払うコンテンポラリー・ジャズを志向。2013年の『The 3Dom Factor』、2015年『Tales of the Unforeseen』に続く3作目が本作である。レーベルの資料によれば3部作の完結編、とのことだが、このアルバムで解散する訳ではなさそうだ。

2016年初冬のヨーロッパ・ツアーの最終公演ポーランド、クラクフのAlchemia Clubでの実況録音。セロニアス・モンクのM-2以外は、いずれも2013年の1stアルバム収録のアルトシュルのオリジナル・ナンバーである。実力派3人の演奏は、アルトシュルの言葉によると「信頼に基づいた音楽」であるという。「同じ瞬間を同じ空間で共有している時はもちろん、そうじゃないときも諍いが音楽を創り出す」という訳である。

ライヴ録音ならではの感情の起伏の激しさや音の濃淡の振れ幅の広さは、単純に聴いているだけで盛り上がる。ハード・バップ的な激情プレイによる高揚感は、例えばアルトシュルが参加した代表的バンド「サークル」に於ける分析的なドラミングに馴染んだ耳には意外な驚きかもしれない。前へ前へとドライヴするドラムとベースに火をつける激情的なテナーの咆哮に圧倒されるM-1から、一転してモンクらしい奇妙なバラードM-2はトリオによってよりフリーキーにアレンジされている。21世紀型ビバップと呼びたくなる躍動的なM-3、アルトシュルのブラシプレイが印象的なM-4に続き、グループ名をタイトルにしたラスト・ナンバーはこのトリオの出自を詳らかにするスリリングなナンバー。言うまでもないことだが、「3dom(スリーダム)」とは「freedom(フリーダム)」の引っ掛けである。どんなに激しく逸脱してもリズムを崩すことなく同じ方向へ向かって展開される三位一体のインプロヴィゼ―ションが、何でもありのドシャメシャ・“フリー”・ジャズよりも、遥かに解放された魂の衝動をサウンドに転化する。どこか野暮ったいジャズ・トリオのイメージを逆手に取ったスタイリッシュな佇まいが新鮮な魅力を醸し出す。

三者三様の自由係数が掛け合わされるこのアルバムを聴いていると、自信を持って“ジャズは自由だ”と叫びたい気持ちになる。(2017年11月26日記 剛田武)

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剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

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