#1468『Gondo’s Carol Brass Ensemble / Silent Night』

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text by Takashi Tannaka  淡中隆史

『Gondo’s Carol Brass Ensemble/ Silent Night』
愚音堂| B.J.L. X AWDR/LR2   ¥2,500+TAX

01. 神の御子は今宵しも | Adeste Fideles
02. グレイト アンド マイティーワンダー | A Great and Mighty Wonder
03. ディンドン!といと高きところでほがらかに | Ding dong! Merrily on High
04. チャイルド イズ ボーン イン ベツレヘム | A Child is Born in Bethlehem
05. メリークリスマス | A Merry Christmas
06. ヴァージン モスト ピュア | A Virgin Most Pure
07. 甘き死よ、来たれ | Come, Sweet Death
08. 神が喜びを下さるように(ほしかげさやけき) | God Rest you Merry, Gentlemen
09. ウェンセスラスはよい王様 | Good King Wenceslas
10. 天には栄え | Hark! the Herald-Angels Sing
11. メイデン モスト ジェントル | A Maiden Most Gentle
12. ハッシュ!マイディア、ライ スティル アンド スランバー | Hush! My Dear, Lie Still and Slumber
13. アイ ソウ ア メイデン | I Saw a Maiden
14. もろびとこぞりて | Joy to the World
15. この聖夜に | This Christmas Night
16. 明日はわたしが踊る日 | Tomorrow Shall be My Dancing Day
17. 彷徨いながら不思議に思う | I Wonder as I wander
18. この喜ばしいイースターの季節に | This Joyful Eastertide
19. 羊を飼うもの夜牧場にて | While Shepherds Watched Their Flocks by Night
20. ニューイヤーキャロル | A New Year Carol
21. アス ウィズ グラッドネス メン オブ オールド | As With Gladness Men of Old
22. ひいらぎかざろう | Deck the Hall
23. ヘイル ブレスト ヴァージン メリー | Hail! Blessed Virgin Mary
24. 天なる神にはみ栄えあれ | It Came Upon A Midnight Clear
25. ロングフェローのキャロル | Longfellows’s Carol
26. ムエラン ラス ペイナス イ セニョーラ サンタ アナ | Mueran las penas y Señora santa Ana
27. 聖しこの夜 | Silent Night
28. シング アラウド オン ディスデイ | Sing Aloud on This Day!
29. ウェックスフォード キャロル | Wexford Carol
30. 牧人羊を | The First Nowell

Gondo’s Carol Brass Ensemble:
ゴンドウトモヒコ(euphonium)
田中邦和(saxophone)
佐藤秀徳(trumpet)
三浦千明(trumpet)
湯浅佳代子(trombone)
木村仁哉(tuba)

クリスマスキャロルを聴く時にはいつも戸惑いを覚えた。しかし今回のクリスマスキャロルを管楽器六重奏でストレートに表現した『Gondo’s Carol Brass Ensemble / Silent Night』に「奇妙な感動」を覚えるのはなぜなのだろうか、ゴンドウトモヒコに直接聞いてみよう。

「もろびとこぞりて」といわれても「もろびと」のルーツを持たない多くの日本人には無縁で共有する体験もない、この曲をクリスマスケーキや歳末商店街のコマーシャルソングと勘違いしている小学生もいるようだ。ゴンドウトモヒコのクリスマスキャロルは一体どこから来ているのだろうか?。

Anonymass など自己のバンドの他 pupa、 蓮沼執太フィルなどでの活動、高橋幸宏、YMO(Yellow Magic Orchestra)を始めMETAFIVE(メタファイヴ)の高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、LEO今井との活動は現代の10代から30才までの音楽ファンにとっては「YMO以降の伝統的なポップミュージック」を再々評価させるもの。ゴンドウトモヒコの名はその正系のひとりとして映っている。2000年以降、国内の音楽ファンの少なくとも80%以上は「日本人の音楽」(「邦楽」)を中心に聴いている。そんな環境で育った彼等にはこのMETAFIVEのメンバーは目の眩むような歴史的な巨人達で、彼等は同列にいる「ゴンドウトモヒコとは一体誰なのか」という問いを持っているはずだ。

ゴンドウトモヒコはユーフォニアムを中心とする管楽器演奏に新しい道を開くユニークな音楽家でジャズはもちろんクラシック、ロック、ポップスというどのカテゴリーにも(本来根ざしていながら)カウントできない存在。幅広いジャンルでのファーストコールの欠く事のできないミュージシャンだ。少し上の世代で同じくジャズにルーツを持ちながらワールドミュージックやバッハなどクラシック音楽にかけて素晴らしい世界を展開する管楽器プレイヤーに清水靖晃がいる。しかし、二人に共通しているのは坂本龍一、YMOとクロスしている点くらいでそれ以外は似ているようでだいぶ違う。それぞれ多彩なルーツを持って「主題と展開」が行われている。

ゴンドウトモヒコにメールでいくつかの問いかけをしてみた。彼とはスタジオやライブを共有している。それに甘えて「クリスチャンなのですか」、「こういう音楽って子供達にコンビニヤマザキのクリスマスケーキのCM音楽と誤解されませんかね」、「録音的に不完全なのはわざとなのですか」などの失礼な質問も許してくれるだろうと思って。

 

Q:音楽的にoffice Intenzio〜YMO〜蓮沼フィル〜METAFIVEといった活動はフォローしているつもりですが今回の『Silent Night』は今までとはかなり違う内容です。長く暖めてきたプランとのことですが少し詳しくお話をうかがいたいですが。

A:あと(他に)自身のバンドではanonymassというバンドをIntenzioに所属している時に結成していて基本アカデミックな音楽教育を受けたメンツがメンバーでした。それでもポップス、ロックって決まりのような縛りが無いというか、うるさくダメという人もいない自由な領域だと思っていてぼくらは自然にそちらにドロップアウトしていたと。

Q:「クリスマスキャロル」には一般の権藤さんのファンには少し違和感があると思います。キリスト教を信仰として持つ人には「一年を振り返り、キリストの生誕を皆で祝う」という共有点がありますが、日本では昭和期にクリスマスが商業主義のツールになっていた事もあり「全ての人に共有できる厳かで親しみ深い音楽」とは言えないと思います。権藤さんにとってクリスマスキャロルとは何なのでしょうか?個人的な思い出や、音楽的な体験について伺いたいと思います。

A:先ずは2012年に初めてコンサートしたときはぼくも正直どうかと思いました。お客さんは40人くらい集まったけどあまりにクラシカルすぎないか?と。1回目はそのわだかまりを感じていたのでアンビエントなSEを曲間で流しながら演奏をしたんです。場所もBarでした。クラシック→現代音楽的なアプローチ→アンビエント→ポップス、ロックこの流れはシームレスでぼくがとても好きな領域なのでそのコンサートは面白く出来ました。でも2回目からあまりその意味も必要なくて普通にやりました。会場もカフェに代わって、途中MCでキャロルの説明したり…。

ぼくは無宗教です。ぼくは日本人で四季の楽しみ方を親などから教えられたんだと思います。

五月の節句には菖蒲湯に入ったり、冬至に柚子湯に入ったり、神社などで手を併せたりもすれば、クリスマスも祝う。そういう季節感を味わえるのって日本人としてよかったと思うんですね。でもクリスマスはなにか違和感がある。あまりに商業的になりすぎてかかる音楽も聞き飽きた曲ばかりだったり。わりとそうゆうのうんざりするんです。

それでたまたまアメリカにいる時に本場のクリスマスを体験して”ああ、いいなぁ”って思ったんです。クリスマスキャロルに関して言うと本当にたくさんいい曲があって少しでも知ってもらいたいという気持ちからコンサート活動始めたし、知識も付けて来ました。キャロルでウインセラスと言う王様をたたえた曲がありますがイエスキリストと直接関係はありません。でも民衆がこの時期に慣れ親しんだ曲が自然とクリスマスキャロルに混ざっているものもあります。そうゆうのを知るとますます魅力を感じてきます。

Q:ボストン時代の経験がこのアルバムに反映しているように思いますが、さらに具体的に伺えますか?。

A:クリスマス近くの12月のとある日にマーケットの前に夕方になると人が集まってくるんです。みんな金管楽器でしたけど。それで指揮者がいて始めるんです。4声のキャロル集を好きなパートを吹くんです。リハも何もありません。告知だけしてるんだと思います。なんか今で言うところのモブに似てます。雪が降ってる時もありました。みんなピッチもズレズレだし間違えてたりもしてたり。でも管楽器ってそこが魅力なんですよね。楽しいから演奏するみたいな。あの時の合奏が忘れられなかったのです。2、3年は参加したんじゃないですかね。港でやったときもありました。

Q:レコーディングは「一発録り」のようですが予算などの問題以外に敢えてそうされた意味がありそうです。また、メンバーが様々な音楽にかかわっている方々にこのプランを投げかけた背景なども伺いたいのですが。

A:ダビングすることに意味もなかったし、4年間続けたままをパッケージにしたかったのかと思います。1発と言えど、曲によってはテイクを重ねていいとこ取りみたいな編集はしてます。

メンバーはもう長い知り合いで、anonymass同様アカデミックな部分もちゃんと分かってる人とやりたかった。管楽器奏者の知り合いが少ないというのもありますがこのメンバーは特別で他に代わりはききません。

Q:今回のアレンジメントも興味深い内容ですが特に留意されたことは何でしょうか?

A:やはりどの曲も西洋音楽の基礎的な部分もあるのでとても勉強になります。ぼくらは歌ではないから器楽用に挑戦的なアレンジも施したりしてますが、でもやはり基本はボストンのあの空気感を録りたかったので別段複雑にしたつもりもありません。聴きやすいはずですw。

 

ゴンドウさんのナチュラルなAnswerを読み、これで筆者の長年のクリスマスキャロルへの戸惑いも消え去ったのですw。12月を迎えるにあたりゆっくり『Silent Night』を聴きなおしてみたい。

 

*ゴンドウトモヒコProfile

新宿生まれ東京育ち。
日大芸術学部卒業後、米、ボストン大学に留学、修士課程修了。専攻は電子音楽とユーフォニアム。帰国後、高橋幸宏率いる office Intenzio に所属。音楽家集団anonymassを結成し4枚のアルバムをリリース。Yellow Magic Orchestraの日本でのライブおよびヨーロッパ、アメリカツアーにサポートメンバーとして参加。コンピューターと管楽器を使ったユニークなスタイルで Love Psychedelico, The Beatniks, Chara, UA, くるり,Def Tech他、多数のミュージシャンの録音やライブなどに参加している。pupa、蓮沼執太フィルメンバー。また作編曲家としてもCM、サウンドトラックなども多数発表している。

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淡中 隆史

淡中隆史Tannaka Takashi 慶応義塾大学 法学部政治学科卒業。1975年キングレコード株式会社〜(株)ポリスターを経てスペースシャワーミュージック〜2017まで主に邦楽、洋楽の制作を担当、1000枚あまりのリリースにかかわる。2000年以降はジャズ〜ワールドミュージックを中心に菊地雅章、アストル・ピアソラ、ヨーロッパのピアノジャズ・シリーズ、川嶋哲郎、蓮沼フィル、スガダイロー×夢枕獏などを制作。

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