#1475 『GATOS Meeting / The Book of GATOS』

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text by Yumi Mochizuki  望月由美

gataca RECORDS GAT-001/002 3,000円+税

林栄一(as)
吉田隆一(bs)
山田丈造(tp)
後藤篤(tb)
石渡明廣(g)
岩見継吾(b)
磯部潤(ds)

Disc 1:
1. North East(林栄一)
2. 睡眠と目覚めの間で~Yellow Jack(林栄一)
3. 回想(林栄一)
4. 夜の波止場(林栄一)

Disc 2:
1.Better Get Hit in Yo`Soul(C.Mingus)
2.OM(林栄一)
3.夜と友達(林栄一)
4.ナーダム(林栄一)

プロデューサー:林栄一&杉浦直明
エンジニア:島田正明
録音:2017年4月13日, 5月17日, 8月30日アケタの店にてライヴ録音

 

「ガトス」の新作『GATOS Meeting The Book of GATOS』(gataca RECORDS 2017)は前作『GATOS Meeting』(STUDIO WEE 2012)と同じく西荻「アケタの店」でのライヴ・レコーディングである。

ジャズはライヴにあり、というライヴ派には格好のアルバムであると同時に本作は単なるライヴ・アルバムにはないジャズ・ワークショップ的な局面も併せ持っているところが興味深い。

「ガトス」は主に林栄一の作曲した曲を林のアレンジで演奏するグループで、通常ライヴ・アルバムというと、テーマと簡単なリフの後に各アーティストのアドリブを中心とする場合が多いが、こと「ガトス」に限っては林栄一 (as) の緻密なアレンジが頭の先からしっぽまできめ細かく施され、さらにライヴの現場で音を出し合いながら各人のアイディアがそこに積み重ねられてユニットとしての固有のサウンドに練り上げられているのである。

林栄一の書く曲はどれも悲しみと安らぎが同居していて胸が締め付けられる曲想が多く、遠い昔から聴いていたか唄っていたような親近感をいだかせる曲が多いが、Disc 1 (1) <ノース・イースト>に始まりDisc 2 (4) <ナーダム>で終わる本アルバムは数多い林の曲の中から選び抜かれた、またライヴで磨き上げられた曲が選りすぐられて収められた林栄一選集となっていて、「ガトス」のライヴを体験した人にとってはまさにステージの追体験、再現であり初めて聴く人にとってはライヴが聴いてみたくなる、そんな過激な熱気がむんむんと立ち込めている。

Disc 1 (1) <North East>は林の十八番ともいえるガトスの代表曲のひとつで、前のめりの激しいリズムの洪水の中を4管のリフがうねり、(bs)~(tp)~ (tb)~(as)がソロをとる。

前作『GATOS Meeting』のライナーノーツで林は<近年、感性と感覚だけで演奏したいと思っている>と書いているがその言葉が納得できる演奏である。

前作はフロントの4管にギター、2ベース、2ドラムスという9人編成であったが本作は4管+ギター、ベース、ドラムの7人編成。

ドラム、ベースが一人ずつとなったが以前にもまして強靭でダイナミックなリズムである。

そしてそこに石渡明廣(g) が、霞がかかったかのような浮遊感を付け加え宙を舞うような幽玄なリズムを編み出し、その上にのってフロントの4人が集団即興の世界を繰り広げる。

Disc 1 (3) <回想>は林の無伴奏ソロから始まるバラード、前作でも演奏しているが前作にはなかった3分にも及ぶカデンツァは圧巻、4管の分厚いサウンドの中を林がすいすいと泳ぎ、バリトンが吼える。フリー・バラードと表現したくなる喧噪で素朴なバラードである。

「ガトス」は原則として林の曲を演奏するバンドであるが例外としてミンガスも演奏する。

Disc 2 (1) <Better Get Hit in Yo`Soul>はご存知C・ミンガスの曲。ミンガスはアルバムによって『Mingus Mingus Mingus Mingus Mingus』(Impulse! 1963)では<Better Get Hit in Yo`Soul>とクレジットし『MINGUS AH UM』(Columbia 1959)では<Better Git It in Your Soul>と表示しているが本作は『Mingus 5』の方の表示を採用している。

4管による厳かな前奏から後藤 (tb) のソロに入り、そのあと林がリードして聴きなれた<ベター・ギット>が現れる、この4管のユニゾンが快い。

Disc 2 (2) <OM>はコルトレーン作ではなく林のオリジナル、前作でも演奏している。また、Disc 1 (2) <睡眠と目覚めの間で~Yellow Jack>、(3) <回想>、Disc 2 (3) <夜と友達>、(4) <ナーダム>も前作で演奏しているなじみの曲である。

これらの同じ曲が5年という時をどう過ごしてきたか、前作と合わせて聴くと林の円熟、メンバーの変遷などをへて「ガトス」が林のワークショップとしての爆発力、集中度、洗練度が磨き練られた一つの着地点と云える。

2枚組のライヴとあって少し身構えて聴いたが、いざターンテーブルが回るとあっという間に聴き終えてしまった。

本作はこれを機に「ガトス」がまた新たな次元を切り開いてくれるのでは、という期待を抱かせてくれるアルバムである。

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望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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