#1484 『Yedo Gibson – Vasco Trilla / Antenna』

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text by 定淳志 Atsushi Joe

 

Multikulti Project(MPSMT 004)

Yedo Gibson – baritone and soprano saxophone, frula
Vasco Trilla – drums, percussion

  1. Aperture
  2. Dipole
  3. Fractal
  4. Whip
  5. Array
  6. Isotropic

recorded June, 2016

 

Yedo Gibson はブラジル・サンパウロ出身、現在はオランダ・アムステルダム在住のリード奏者。ブラジル音楽の演奏家としてキャリアをスタート後、即興演奏に目覚め、2005年に渡欧。英国ロンドンでも2年間活動し、John Edwards、Steve Noble、Mark Sanders らと共演、Lol Coxhill、Evan Parker にも多くを学んだという。ここ数年の間に、Clean Feed Records(ポルトガル)から『Naked Wolf / AHUM』、Creative Sources(同)から『Ernesto Rodrigues, Yedo Gibson, Miguel Mira, Luis Lopes, Vasco Trilla / Nepenthes Hibrida』、NoBusiness Records(リトアニア)から『Yedo Gibson, Hernâni Faustino, Vasco Trilla / Chain 』、と欧州各地の即興系レーベルから立て続けに参加作をリリース。多くのアルバムでは、本作でコンビを組むスペイン・バルセロナ在住のポルトガル人パーカッショニスト Vasco Trilla と共演している。2017年末に発売された本作は、el NEGOCITO Records(ベルギー)からの『Inherent Chirality』に続く2作目のデュオアルバムだ。

多くのユニットで共演する2人による音世界は、優しいミニマリスト的表情、柔らかなテクスチャから、アグレッシブで騒々しいノイズ、暴走的なハードサウンドまで多様多彩。本作の個人的ハイライトは何といっても、Vasco Trilla の叩き出す繊細なパルスに乗って、Yedo Gibson のソプラノサックスが繰り出す“あれ”である。もっともいきなり“あれ”と言ったところで、読む人にとっては“どれ?”といったところだろうが、Evan Parker のソプラノサックスによる“あれ”と言えば、フリージャズファンならば多くの人が思い当たるはずだ。循環呼吸を用いてミニマルなフレーズを延々繰り返し、まるで音自体が螺旋状に蜿蜒回転しているように響く“あれ”である(個人的には“きりもみ奏法”と呼んでいる)。先ほど、彼が Evan Parker にも多くを学んだ、と書いたが、おそらく彼なりに消化吸収したに違いない“あれ”が、とても蠱惑的だ。吹奏時間の経過とともに、音の純化作用と異化作用が並行して進むような不思議な感覚にとらわれる。むろん魅力は“あれ”だけでない。柔らかなソプラノサックスの音が千変万化の表情を見せるし、バリトンサックスをまるで空気を詰めた筒状の金属製打楽器として奏したかと思えば、徐々に管楽器としての相貌を顕わにし、立ちはだかるもの全て蹴散らすかのように暴走・加速させる。その振幅にも惹かれるのだ。

 

 

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定淳志

定 淳志 Atsushi Joe 1973年生。北海道在住。執筆協力に「聴いたら危険!ジャズ入門/田中啓文」(アスキー新書、2012年)。普段はすこぶるどうでもいい会社員。なお苗字は本来訓読みだが、ジャズ界隈では「音読み」になる。ブログ http://outwardbound. hatenablog.com/

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