#1481 『コンストラクト & 灰野敬二 / 少しずつ曲がっている哲学 その先には湿地がある』

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Reviewed by 剛田武  Takeshi Goda

KONSTRUKT & KEIJI HAINO / A Philosophy Warping, Little By Little That Way Lies A Quagmire
コンストラクト & 灰野敬二 / 少しずつ曲がっている哲学 その先には湿地がある

180gr LP incl. DL code / Karlrecords KR043

Korhan Futacı: saxophones, reeds, vocal
Umut Çağlar: synthesizers, reeds, flutes
Berkan Tilavel: electric drums, cymbal
Erdem Göymen: drums, percussion
+
Keiji Haino: electric guitar, vocal, electronics

Side A
1〜3: All Things Will Be Reduced To Equal Dお Tっっ3 BBRc MMMあ元 Part 1 to 3
平均化されてしまう Dお Tっっ3 BBRc MMMあ元 Part 1 to 3

Side B
1〜3: The Darkness Of +(Plus) And The Paleness Of –(Minus) Drag Each To An Identical Distance And Reanalyse Blending In Some Pain Part 1 to 3
+(プラス)の濃さと-(マイナス)の薄さ 両者を同じ距離に弾いて分析し直す 少し痛みを混入させ Part 1 to 3

Recorded and mixed by Ozan Öner at Pür Recording Studio, Istanbul..
Mastered by Rashad Becker at D&M, Berlin.
Cover painting “Escape” by Artur Trojanowski.

EAST meets WESTでは語りきれない交流の果実

2008年にトルコのイスタンブールでKorhan FutacıとUmut Çağlarを中心に結成されたフリー・オーガニック・ミュージック・コンボ、コンストラクトは、活動の初期からマーシャル・アレン(サン・ラ・アーケストラ)、エヴァン・パーカー、ペーター・ブロッツマン、ジョー・マクフィー、ウィリアム・パーカー、坂田明など世界的即興ジャズ・ミュージシャンをトルコに招聘し、コンサートで共演すると共に、コラボ音源を主にアナログ・レコードでリリースしてきた。10作を超えるアルバムは、殆どすべてが象形文字や暗号のようなイラストレーションで飾られている。こうした海外のアーティストと数多く交流するスタイルは、古くからイスタンブールがヨーロッパとアジアの文化・経済の交流の拠点として栄えてきたことと無関係ではなかろう。

2016年初頭に音楽の方向性の拡張を目指してリズム・セクションをメンバー・チェンジし、同年6月には元ソニック・ユースのサーストン・ムーアと共演し、それまでのジャズやエスニックに加えて、よりコンテンポラリーなロックやエレクトロニクス・ミュージックのアプローチを試みた彼らが次のコラボ相手として選んだのは世界を舞台に40年以上活動する地下音楽/前衛音楽のベテラン灰野敬二だった。彼らの熱烈なアプローチに応じて、灰野敬二は2016年12月下旬にイスタンブールを訪れた。現地では共演コンサートと併せてスタジオ・レコーディングも行われた。

灰野、コンストラクト共に個人的に愛聴してきた筆者にとっても、この二者が交わることになるとは想定外だったが、その成果としてリリースされた本作を聴けば、単なる異文化交流や異種格闘技とはまったく異なる次元で両者が交わり創造性の果実を産み落としたことが明らかになる。

Side Aは催眠的なパーカッションのビートに乗せてエレクトロニクスやサックスやギター、笛や打楽器が幻想のように浮かび上がる。Side Bはよりケイオティックに展開し、後半は轟音ハードコアジャズでトランス状態に突入するが、最終章のアコースティック演奏で心も身体も救われる。灰野の近作の中では一際エスニック/エキゾチックな要素が強いサウンドは、方法論はまったく異なるが90年代の灰野のユニット「滲有無」の世界に通じる気がする。冷徹な灰野の世界が土着的かつバイオニックなコンストラクトのアンサンブルと共鳴し、ジャケットのブルーのグラデーションのように滲み合いポジティヴな生命礼賛の歌を奏でている。

謎掛けに満ちたポエティックなタイトルを含めて、「有」と「無」、「あっち」と「こっち」、「黒」と「白」の境界を滲ませてその隙間に入り込む灰野の哲学が、コンストラクトに伝承されつつあるに違いない。

(2018年1月27日 剛田武記)

 

Karlrecords website : http://www.karlrecords.net/

追記:イスタンブールSALONでの共演コンサートのライヴ盤も夏頃リリースの予定があるようだ。

 

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剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

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