#1497 『姜泰煥 Kang Tae Hwan / Live at Café Amores』

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text by Kazue Yokoi  横井一江

NoBusiness Records NBCD 104 / NBLP 113 (Edition of 300 copies)

姜泰煥 Kang Tae Hwan (alto sax)

CD track list
1. Solo 1
2. Solo 2
3. Solo 3
4. Solo 4
5. Solo 5

LP track list
Side A: Solo 2,  Solo 4
Side B: Solo 3,  Solo 5

Recorded live on the 8th October 1995 at Café Amores, Hofu, Yamaguchi, Japan by Takeo Suetomi / Concert produced by Takeo Suetomi
Compositions by Kang Tae Hwan
Mastered by Arūnas Zujus at MAMAstudios
Design by Oskaras Anosovas
Cover photo by Kazue Yokoi
Inside booklet photos by Akihiro Matsumoto
Produced by Danas Mikailionis and Takeo Suetomi (Chap Chap Records)
Release coordinator – Kenny Inaoka (Jazz Tokyo)
Co-producer – Valerij Anosov
Release: January 2018


もう四半世紀以上も前のことである。1990年3月新宿ピットインで「トンクラミ」を観た時、姜泰煥の変貌ぶりに驚いた。胡座をかいてサックスを吹く姿もさることながら、サウンド自体が変容を遂げていたからだ。それ以前の姜泰煥も特異な個性を持つサックス奏者ではあったが、まだまだフリージャズという概念の中に居たように思う。ところが、日本をツアーするようになってから、姜泰煥トリオを解散し、様々なミュージシャンと共演するうちに、彼の演奏も変化していった。それが大きく跳躍したのが1990年頃だろう。床に座ってサックスを吹くということを思いついてから新たな冒険が始まったことは想像に難くない。90年代の姜泰煥の演奏はそれをさらに深化させていく過程にあった。その姿は狷介不羈(けんかいふき)という言葉が似つかわしかった。本盤が録音された1995年はまさにそういう時期にあたる。

姜泰煥が来日する時は様々な日本人ミュージシャンと即興演奏することが多く、その中でソロでの演奏もあるのだが、ライヴでそれを堪能するにはなかなか至らない。そのためか彼の演奏の根幹にあるのは、作曲作業を通じて創り上げられたサウンドであるということはほとんど語られてこなかった。しかし、本盤を今聴きながら感じるのは、見事な構成感といい、前段階としての音楽を探究するための作曲作業から導き出されたものなくしてはあり得ない演奏だということだ。と同時に、いずれのトラックも彼の特徴的な奏法が聴ける。例えば<track 1>冒頭の低い音域のロングトーン、それとは対照的に<track 2>冒頭の軋むような高音、また随所で聴かれるタンギングのように。そしてまた、微分音や音のゆらぎの中にそことなく韓国の伝統音楽の要素も感じ取れる。なによりも、彼ほどポリフォニックな奏法を駆使するサックス奏者はいない。独特な音の上下動で表出されるダイナミズム、そして繊細な表現から導き出される叙情性といい、本盤は姜泰煥の持ち味を見事に捉えていて、私の内面の深い部分を共振させるのだ。

90年代半ば、姜泰煥はある種の到達点に達したと私は思っていた。しかし、それは違った。到達点ではなく通過点に過ぎなかったことを、2002年録音『I Think So』(IMA Shizuoka)を聴いて知ることになるのである。そして、2012年録音『素來花 Sorefa』(Audioguy Records) を聴いて、再び圧倒されたのだった。きっと今も隠者のようにサックスを吹きながら音楽と向き合っていることだろう。

【関連記事】

CD Review #1439  『TON-KLAMI / Prophecy of Nue』
http://jazztokyo.org/reviews/cd-dvd-review/post-20007/

Reflection of Music Vol. 40 姜泰煥
http://www.archive.jazztokyo.org/column/reflection/v40_index.html

 

横井一江

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。The Jazz Journalist Association会員。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。海外レポート、ヨーロッパの重鎮達の多くをはじめ、若手までインタビューを数多く手がける。 フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

One thought on “#1497 『姜泰煥 Kang Tae Hwan / Live at Café Amores』

  • 稲岡編集長
    2018年3月7日 at 9:27 AM
    Permalink

    「狷介不羈」(けんかいふき)の意味 – 四字熟語辞典オンライン
    yoji.jitenon.jp/yojig/3325.html
    読み方, けんかいふき. 意味, 意志を固く保って、なにものにも縛られないこと。 「狷介」は自分の意志を難く守り、決して妥協しないこと。 「不羈」は決して縛られないこと。

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