#1499 『Norma Winstone / Descansado – Songs for Films』

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ノーマ・ウィンストン / デスカンサードー ―映画のための歌
ECM2567 (2018.2.16 release)

text by Hideo Kanno 神野秀雄

Norma Winstone Voice
Glauco Venier Piano
Klaus Gesing Soprano Saxophone, Bass Clarinet
with
Helge Andreas Norbakken Percussion
Mario Brunello Violoncello, Violoncello Piccolo

Recorded March 2017
Arte Suono Studio, Udine
Engineer: Stefano Amerio
Cover photo: Catherine Peillon
Liner photos: Glauco Comoretto, Michael Putland
Design: Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher

In memory of John & Kenny

1 His Eyes, Her Eyes
Norman Jewison, The Thomas Crown Affair (1968)
Music: Michel Legrand / Lyrics: Alan and Marilyn Bergman
Arr.: Glauco Venier

2 What Is A Youth?
Franco Zeffirelli, Romeo And Juliet (1968)
Music: Nino Rota, / Lyrics: Eugene Walter
Arr.: Glauco Venier, Klaus Gesing

3 Descansado
Vittorio De SIca, Ieri, Oggi, Domani (1963)
Music: Armando Trovajoli / Lyrics: Norma Winstone
Arr.: Glauco Venier

4 Vivre sa vie
Jean-Luc Godard, Vivre sa vie (1962)
Music: Michel Legrand
Arr.: Glauco Venier, Klaus Gesing, Manfred Eicher

5 Lisbon Story
Wim Wenders, Lisbon Story (1994)
Music: Madredeus
Arr.: Glauco Venier, Klaus Gesing,

6 Malena
Giuseppe Tornatore, Malena (2000)
Enrio Morricone
Arr.: Glauco Venier

7 Il postino
Michael Radford. Il postino (1994)
Music: Nino Rota / Lyrics: Norma Winstone
Arr.: Glauco Venier

8 Amarcord (I Remember)
Federico Fellini, Amarcord (1973)
Music: Nino Rota, / Lyrics: Norma Winstone
Arr.: Glauco Venier, Klaus Gesing,

9 Meryton Townhall
Joe Wright, Pride And Prejudice (2005)
Music: Dario Marianelli
Arr.: Glauco Venier

10 Touch Her Soft Lips And Part
Laurence Olivier, Henry V (1944)
Arr.: Klaus Gesing,

11 Theme from Taxi Driver (So Close To Me Blues)
Martin Scorsese, Taxi Driver (1976)
Music: Bernard Herrmann / Lyrics: Norma Winstone
Arr. Glauco Venier

12 Vivre sa vie (piano solo)

マンフレート・アイヒャーとノーマ・ウィンストン・トリオによる映画へのオマージュ

あのECMが映画音楽集を?と一瞬驚くかも知れないが、それは話が逆だ。ECMプロデューサーのマンフレート・アイヒャーは常に映画に強い関心を持ち、音楽監督および音楽コンセプトの提供者という立場で極上の”映画を創って来た”。ジャン=リュック・ゴダール監督やテオ・アンゲロプロス監督との共同作業、『ジャーニー・オブ・ホープ』、『マーサの幸せレシピ』、『戦場のフォトグラファー』など。番外編では自身を追ったドキュメンタリー映画『Sounds and Silence』も存在する。そして、マンフレートが数々の映画から音楽と音響のインスピレーションを受けてECMサウンドを創って来たことは言うまでもない。その映画愛を背景にしながら、ミシェル・ルグラン、ニーノ・ロータ、エンリオ・モリコーネなどの珠玉の曲を選び、グラウコ・ヴェニエルとクラウス・ゲーシングの編曲、ノーマ・ウィンストンの作詞を経て作り上げたECM発の映画音楽集が『Descansado – Songs for Films』だ。

ジャン=リュック・ゴダール監督『Vivre Sa Vie: Film en douze tableaux』(1962)からの<Vivre Sa Vie>では、異例なことに編曲者に”Manfred Eicher”と記されている。多くのECMレコーディングで的確な助言をし、編曲と呼べるものも多くあったに違いないが強いて名前を残すのは稀だ。映画の邦題は『女と男のいる舗道』だが、原題は「自分の人生を生きる:12のタブロー(小さな絵)に描かれた映画」の意味で、12章で構成されている。このアルバムも12曲で構成され、12曲目を<Vivre Sa Vie>ピアノソロ版で締め括り(映画の12章は、”Encore…”)、CDブックレットには『Vivre Sa Vie』のシーンを散りばめる。4曲目がこのアルバムのハイライトであり、この曲とアルバム全体がマンフレートの映画人生を振り返る重要なメッセージと言えると思う。

イギリス出身のノーマ・ウィンストンが1998年頃にイタリア・ウーディネ出身(オーストリア帝国の影響が残る地域)のグラウコ・ヴェニエルと出会い、数年後、ドイツ出身のクラウス・ゲーシングを加えたトリオを結成し、2002年に『Chamber Music』(Austria Universal)を発表し、2009年以降、ECMにすでに3枚のアルバムを残している。もう20年近くコンサートと録音を続けて来たことになる(近年、大沢知之氏がほぼ毎年招聘していることに深く感謝したい)。今回はECMの他作品でも録音に参加しているノルウェーの打楽器奏者ヘルゲ・アンドレアス・ノールバッケンと、イタリアからクラシックや現代音楽で活躍するチェロ奏者マリオ・ブルネオが加わる。あくまでもトリオがコアとなって、ここぞという美味しいところに打楽器とチェロがすうーっと入って来るアレンジが巧みで、心地よく迫って来る。打楽器のアイデアは『Glauco Venier / Miniatures – Music for Piano and Percussion』(ECM2385)の延長にある。

“In memory of John & Kenny”—−このアルバムは、ジョン・テイラー(1942年9月25〜2015年7月17日)とケニー・ホイーラー(1930年1月14日〜2014年9月18日)の思い出に捧げられている。闘病の末に亡くなったケニーに対して、元夫であり年下のジョンは演奏中ステージで心臓発作に倒れた。わずか1年の間に人生を共にした最も大切な2人を失ったノーマの悲しみは計り知れず、2015年新宿ピットインでの終演後ノーマがとても寂しそうに話していたのが忘れられない。私が世界で最も美しいと思う音を創って来た3人のユニット「Azimuth」と現在のトリオ。トリオから「アジマス」へのレクイエムとしてこの美しすぎる音楽と沈黙の世界を心に受け止めたい。

 
L+R: © Roberto Masotti

 
L+R: © Glauco Comoretto. ECM Records

 

『Norma Winstone / Stories Yet To Tell 』(ECM2158、2009) ECM公式ビデオ

ジャン=リュック・ゴダール監督『Vivre Sa Vie: Film en douze tableaux』予告編

Sounds and Silence – Travels with Manfred Eicher (Trailer)

ザンドラ・ネッテルベック監督『マーサの幸せレシピ / Bella Martha』より <Country> (Keith Jarrett)

【関連リンク】

Norma Winstone 公式ウェブサイト
http://www.normawinstone.com/

Klaus Gesing 公式ウェブサイト
http://www.klausgesing.com

ECM Player “Dance without Answer”
http://player.ecmrecords.com/winstone-venier-gesing–dance-without-answer

ECM Player “Stories Yet To Tell”
http://player.ecmrecords.com/winstone

【JT関連リンク】

ノーマ・ウィンストン・トリオ 新宿ピットイン 2015
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report875.html

ノーマ・ウィンストン・トリオ 新宿ピットイン 2014( Text by 神子直之)
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report724.html

ノーマ・ウィンストン・トリオ 新宿ピットイン 2014 (Text by 神野秀雄)
http://www.archive.jazztokyo.org/best_cd_2014b/best_live_2014_inter_04.html

『Norma Winstone / Dance Without Answer』(ECM2333)
http://jazztokyo.org/reviews/cd-dvd-review/post-7589/

『Glauco Venier / Miniatures~Music for Piano and Percussion』(ECM2385)
http://jazztokyo.org/reviews/kimio-oikawa-reviews/post-8168/

追悼 ケニー・ホイーラー
http://www.archive.jazztokyo.org/rip/wheeler/wheeler.html

追悼 ジョン・テイラー
http://www.archive.jazztokyo.org/rip/taylor/taylor.html

ECM – A Cultural Archaeology
~ミュンヘン、Haus Der Kunstで開催のECM展~
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report506ex.html

「ECM: 沈黙の次に美しい音」展(ソウル) (2013年にトリオのソウル公演を行った)
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report574.html

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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