#1509『ベニン – リオ – 東京 / Nobie featuring リオーネル・ルエケ、トニーニョ・オルタ&馬場孝喜』

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Bénin – Rio – Tokyo / Nobie featuring Lionel Loueke, Toninho Horta & Takayoshi Baba

text by Hideo Kanno 神野秀雄

Dear Heart DBCW – 3333 (2018.4.5)

Nobie : Vocal
Lionel Loueke : Guitars & Vocal
Toninho Horta : Guitars & Vocal
Baba Takayoshi 馬場孝喜 : Guitar

BÉNIN Project
with Lionel Loueke

1. Karibu (Lionel Loueke)
2. Pata Pata (Miliam Makeba)
3. Zanzibar (Edu Lobo)
4. The Sun (Nobie / Kohzo Komori)

Recorded at STUDIO Dede, Tokyo

RIO Project
with Toninho Horta

5. Beijo Partido (Toninho Horta)
6. Samba for Rudi (Toninho Horta)

Recorded at Estúdio Nas Nuvens, Rio de Janeiro

TOKYO Project
Nobie : all voices

7. Blue Rondo a là Turk (Dave Brubeck)

with 馬場孝喜

8. ごはんができたよ Gohan ga Dekitayo (Akiko Yano 矢野顕子)

Recorded at STUDIO Dede

Produced by Nobie & Shigeki Miyata 宮田茂樹
Recorded by Nobumasa Yamada 山田ノブマサ & Duda Mello
Cover Painting : Linmay Komine

 

究極のギタリスト3人とともにNobieが生み出す本気のグルーヴ

 

ブラジルで原稿を書き出しているが、ブラジル音楽の影響を強く受けつつ自身の表現を確立し、強力で正確なグルーヴを生み出せる日本人ヴォーカリストと考えると、NobieとSaigenjiが思い当る。地名からのタイトル『Bénin – Rio – Tokyo』もブラジルもジャズも超えてどこへでも行ける自由度と表現力を手にするNobieを象徴し、3カ国3人のご機嫌過ぎるギタリスト、リオーネル・ルエケ、トニーニョ・オルタ、馬場孝喜との素晴らしいセッションを集約したのが本アルバムだ。

Nobieは、福岡県出身で、東京大学在学中はジャズ研に所属しながらブラジル音楽に傾倒し、大学2年のときにMPBを代表するベーシストのひとり(『エリス&トム』にも参加していた)ルイザオ・マイアのバンドに参加する。後述のようにトニーニョ・オルタの『Minas – Tokyo』に参加。2011年にはファーストアルバム『Primary』をトニーニョ、伊藤志宏らと録音。ダウンロード版だが『”Especial” Live @ praca 11』というライブ盤があり、この他、片倉真由子(p)、太田朱美(fl)とのユニット『Les Komatis』を結成し、同名のアルバムをリリースしている。

現代の最重要ギタリストの一人で卓越したヴォイスの持ち主であるリオーネル・ルエケ。1973年、西アフリカ・ベナン共和国出身で、ハービー・ハンコックのグループ、チック・コリア=スティーヴ・ガッド・バンドでも活躍しているが、彼の音楽に衝撃を受けたNobieは、どうしても共演したくて、面識のないリオーネルにいきなりメッセージを送る。返事が来てデモ音源を送ると共演を快諾され、来日の機会に東京でセッションを行ったが、この実現自体が奇跡だ。

リオーネルとNobieのボーカルの融合は想像を超える素晴らしさで、ギターの生み出す巧みなリズムとともに、1曲目<Karibu>の出だしから引き込まれてしまった。正直今までに聴いたリオーネルの中でいちばん好きなくらい。このセッションはリオーネルに火を点けてしまったようで、4曲にわたり、熱い濃密な、そして歓びに溢れた演奏を繰り広げる。Nobieのオリジナル<The Sun>も素晴らしい。「Nobieとのレコーディングは息を飲むような経験だった。彼女は僕の大好きなシンガーの一人だ。なぜなら、彼女は新しい領域に踏み込むことを恐れていない。...僕が一緒に演奏したいと思うのは、彼女みたいなミュージシャンだけだ。そう、見知らぬ領域でこそマジックは生まれるのだから。」このデュオはいつか生で聴いてみたいものだ。

1948年、ブラジル・ミナスジェライス州ベロオリゾンテ出身のトニーニョ・オルタは、オンリーワンの魅力を持つギタリストとして愛され、ミルトン・ナシメントらの『Clube da Esquina』に参加、MPBとジャズの主要ミュージシャンに重用され、パット・メセニーも大きな影響を公言しており、1993年には、ミノ・シネル、ギル・ゴールドスタインとともに矢野顕子のツアーに参加。本作のプロデューサー宮田茂樹を介してNobieはトニーニョと出会い、トニーニョに請われてブラジルへ渡り『Minas – Tokyo』に3曲参加する。(宮田はRCAで竹内まりや、EPO、大貫妙子らのヒット作をプロデュース。1982年にDear Heart、1984年にMIDIレコードを設立。ジョアン・ジルベルト来日を成功させるなど、ブラジルに強い人脈を持つ。)トニーニョによると「洗練されたメロディーを難なく歌い、リズムに乗ってシンコペーションをこなす、そんな彼女の才能に本当に驚いた。」その後のトニーニョの来日ライヴでもNobieはゲストで共演している。丸ノ内「コットンクラブ」や代官山「晴れたら空に豆まいて」でも熱いデュオを聴かせてくれた。<Beijo Partido>は、ファーストアルバム『Terra dos Passaros』(1979)に収録された彼の代表曲で、Nobieが日本語歌詞もつけて歌う。気怠い空間の中で「乾いたキス..」と詞を書き歌うセンスは見事なものだ。<Samba de Rudi>ではフレーズ、ハーモニーとも難曲でありながら、二人の歌声が心地よく走って行く。

<トルコ風ブルーロンド>の一人アカペラの凄さは、全体域でのヴォーカルの音程・音質・リズムの正確さの現れと見ることができる。リオーネルによれば「Nobieはとんでもなく素晴らしいリズムのセンスを持っている。まるでホーンのように完璧なピッチで歌う。」それはまさに世界の一流がNobieとの共演を願い楽しむひとつの理由であろう。馬場孝喜と録音した矢野顕子<ごはんができたよ>には、一児の母となるNobieの優しさに溢れたポジティブな想いが込められている。初出は1980年、矢野の子育て期間中で、第二子として坂本美雨が生まれた頃と前後しているのとも一致している。

2017年12月19日、青山プラッサ・オンゼでの産休明けライヴでは久々でちょっと不安がるNobieだったが、始まってしまえば、岡部洋一、コモブチキイチロウ、馬場孝喜と生み出すグルーヴの波は止まらず、むしろ格段にパワーアップし音楽力が高まっていたぐらいだった。これからがより本格的な活躍の始まりとなるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

【ツアー情報】

4/20 青山プラッサオンゼ
Nobie (vo)、馬場孝喜(g)

5/14 新宿ピットイン
Nobie Especial Band
Nobie (vo)、馬場孝喜(g)、 片倉真由子(p)、コモブチキイチロウ(b)、岡部洋一(perc)

【関連リンク】

Nobie 公式ブログ – Rhythm of Life
https://nobie.exblog.jp

Nobie 公式ウェブサイト
http://nobie.net

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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