#1514 『Subtle Degrees / A Dance That Empties』

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text by 定淳志 Atsushi Joe

New Amsterdam Records (NWAM093)

Travis Laplante – tenor saxophone
Gerald Cleaver – drums

  1. A Dance That Empties I
  2. A Dance That Empties II
  3. A Dance That Empties III

 

トラヴィス・ラプランテは、NYブルックリンやサザンバーモントを拠点とするサクソフォン奏者、コンポーザー。そして気功ヒーラーの肩書を持つ(のが、彼のサックス演奏に大きな影響を与えているようだ)。2007年、ダリウス・ジョーンズらとの狂暴カルテット「Little Women」で注目を集めたのを皮切りに、クリス・スピードが主宰する Skirl Records からの無伴奏ソロ作品『Heart Protector』(2011年)、ピーター・エヴァンスとのデュオ『Secret Meeting』(2016年)、あるいはジェレミー・ヴァイナー、マット・ネルソン、パトリック・ブレイナーとの新世代サックス四重奏「Battle Trance」などで、極めて印象に残るテナーサックスプレイを聴かせてくれている。現代最高のドラマーの一人に数えられるジェラルド・クリーヴァーは、ロスコー・ミッチェルやウィリアム・パーカー、ジョー・モリス、マシュー・シップといった巨匠たちからの信頼も篤く、フリージャズファンには既におなじみの存在だ。

このデュオが結成されたきっかけは2001年、18歳のラプランテがニューヨークのニッティングファクトリーでコンサートを行い、聴衆の中にいたクリーヴァーがラプランテに声をかけ、共演するようになったのだという。その後、ラプランテは何度もクリーヴァーと共演しながらも、彼とはレコーディングする準備はできていないと思っていたそうで、何年か共演しない期間もあったらしいが、2016年ついに録音を決意し、翌年春に実現させた。つまり本作は16年越しに満を持して世に放つ、二人の結晶ということだ。

柔らかさと鋭さと豊かな倍音が同居したラプランテのテナーと、剛くしなやかなクリーヴァーのドラミングの協調によって、約40分にわたり展開される<空っぽのダンス>と題された二人の音楽は、クラシック音楽的な響きやジャズ的な躍動性を取り込み、ミニマリズムの要素も兼ね備える。聴きどころはやはり何と言っても、ラプランテが「Battle Trance」やソロ作品でも見せる、循環呼吸や各種拡張テクニックを駆使して延々と繰り出す“きりもみ”的高速フレーズであり、クリーヴァーの繊細な応手も含めて万華鏡が超速回転するような煌びやかな音世界が広がり、やがて極限まで達した音楽には聖性すら宿っているかのようだ。

 

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定淳志

定 淳志 Atsushi Joe 1973年生。北海道在住。執筆協力に「聴いたら危険!ジャズ入門/田中啓文」(アスキー新書、2012年)。普段はすこぶるどうでもいい会社員。なお苗字は本来訓読みだが、ジャズ界隈では「音読み」になる。ブログ http://outwardbound. hatenablog.com/

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