#1554 『Elio Villafranca / Cinque』
『エリオ・ヴィジャフランカ/チンクエ』

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text by Keiichi Konishi 小西啓一

artistShare AS0161(2CD)

PERSONNEL:
Elio Villafranca – piano
Vincent Herring – alto & soprano sax, flute
Greg Tardy – tenor sax, clarinet
Todd Marcus – bass clarinet
Freddie Hendrix – trumpet
Steve Turre – trombone, bass trombone, conch shells
Ricky Rodriguez – acoustic bass
Lewis Nash – drum set
Arturo Stable – bata drums, congas, palo drums or atabales
Miguel Valdes – bata drums, congas, bombo
Jonathan Troncoso – palo drums or atabales, valsié, barril drum
Nelson Mateo Gonzales – barril, palo drums or atabales
Alexander Lasalle – vocals
Alexander Waterman – cello

NARRATION:
Terrance McKnight

GUESTS:
Wynton Marsalis – trumpet
Leyla McCalla – vocals
Don Vappie – banjo

Disc 1
1. El Rey del Congo”The King Of The Congo”
2. Narration 1
3. Cinque + Narration 2(Part 1)
4. The Capture(Part 2)
5. Canto Ganga de Despedida
6. Narration 3
7. Troubled Waters(Part 3)
8. Rezo Congo
9. Maluagda(Part 1)
10. La Burla De Los Congos( Part 2)
11. Tambor Yuka / Saludo Ganga
12. Madre Agua
13. Indigo + Narration(Part 4)
14. New Sky(Part 2)
15. Narration 5
16. The First Colony(Part 2)
17. Kongo

Disc 2
1. The Night At BWA KAT MAN(Part 1)
2. Palo De Muerto – Llore
3. Kafou Ceremony
4. Narration 6
5. The Night Of Fire(Part 2)
6. Medley Of Congo Songs
7. Mesy Bodye
8. Paseo(Part 1)
9. Conga Y Comparsa(Part 2)
10. Live Conga
11. Canto Ganga A Yegbe De Despedida
12. Congo Story
13. Canto Congo A Capella – Maluagda
14. Palo De Muerto

 



いまNYで頭角を現しつつある気鋭ピアニスト&作・編曲家の一人、キューバ出身のエリオ・ヴィジャフランカ。その彼の長年の夢を実現させた渾身の2枚組大作ジャズ組曲『チンクエ』である。このアルバムは話題の創造的レーベル”アーティスト・シェア“からの登場で、19世紀の初めにシェラレオネからキューバ農園に連れてこられた、一人のキューバ黒人奴隷の物語を描いた叙事詩的ジャズ組曲。エリオ自身のルーツとも言えそうなその生涯にインスパイアされ作り上げたと言われ、5パート全29曲の1時間半近い大作組曲である。その内容の奥深さや卓越さ、豪華共演陣の秀逸な演奏なども相俟って、今年度のグラミー賞ジャズ部門での有力候補という話も、あながちオーバーでは無いと感じさせる意欲作でもある。長尺なジャズ組曲だがその展開や各自のソロ演奏なども中々に印象深いもので、キューバをメインにプエルトリコなどその周辺のカリブ海の島国の音楽、文化なども取り入れ、かなり重いテーマながらも全編それなりに愉しみつつ聴き通せる快作だとぼくは思う。

キューバ出身の彼は、先日このアルバムの私的なプロモーションも兼ね東京を訪れ数日を過ごしたが、その際面倒を見ていたのが神保町のジャズ・スポット“アディロンダック・カフェ”の滝沢さん。“仲々素晴らしいアルバムがありますよ…”と滝沢氏から手渡されたのがこのアルバム。その彼はこれまでに数枚のアルバムを発表、ハービー・ハンコックやマッコイ・タイナーを想起させるダイナミックなピアノ技は、数あるキューバ出身の俊才ピアニストの中でも光っている。中でも07年のエリック・アレキサンダーをゲストに迎えた『ザ・ソース・イン・ビトゥィーン』は、エリオやエリックそして俊才ダフニス・プリート(ds)等の力演もあって、本格的なジャズ作品として日本でもそれなりの評判を呼んだのだが、未だ余り有名とは言えない存在。ただその才にはチック・コリアやウイントン・マルサリスなど、多くの著名ミュージシャンも賛辞を送っており、特にウイントンは自身のリンカーン・センター・オーケストラにも招き入れ、またこの大作にゲスト出演するほどの入れ込み様なのである。(黒人史を見つめ直す作業など、両者共通するところも多い)

アルバムはビンセント・ハーリング、グレッグ・ターディー、スティーブ・トゥーレ、ルイス・ナッシュなどのビッグ・ネームがバックを固めており、パーカッション陣(これも重要)にも彼と付き合いの長いアルトゥール・ステーブル、その他ミゲル・バルデスなど腕達者を揃え、客演は前述のウイントンなど数名。これらの面子や強力なパーカッション陣&ボーカル陣が、鮮烈かつ情熱的、時に土俗的な宗教色なども織り込みながら、アフリカからキューバへと…チンクエの辿る過酷な流転の諸相を描き出し、さらにテレンス・マックナイトが狂言回し役として、チンクエ自身やその時代状況を意味深く紹介する。

現地語で唄われるナンバーやカリブの歴史など細部は掴み難いところも多々あるのだが、この大作ジャズ叙事詩はジャズとアフロ&カリビアン・ミュージックの融合された、ダイナミックでドラマティック、スケール感溢れるサウンド展開で、エリオの描く音絵図だけでも魅了される部分も少なくない。奴隷として故郷から強制的に切り離され連れ出されたアフリカン達も、アメリカに連行された人達とカリブ諸国やブラジルに渡らされた人達とでは、その後の運命や生き方、精神の自由度など、大きく異なったものになったのは言わずもがなのことだが、このチンクエの流転人生にはキューバという土地柄やカリビアンとしての開放感,パーカッション乱舞による高揚感なども相乗され、苦渋と言うよりむしろ希望や明瞭さなども感じ取れる。付属の15ページにわたる豪華なブックレットも参照に辿る、チンクエ自身及びキューバ・カリブ諸国の音楽探訪、これはかなりワクワクものでもある。また作・編曲者としてのエリオの卓抜な構成力、今回もこれが十全に発揮され心惹かれるところ多々ある。

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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