#1568 ギドン・ヌネス・ファズ『トリビュート・トゥ・KD』『キャリー・イット・オン』
Gidon Nunes Vaz 『Tribute To KD 』『Carry It On』

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text by Keiichi Konishi 小西啓一

 

『Gidon Nunes Vaz / Tribute To KD』
Tritone Jazz Records 2015

Gidon Nunes Vaz – trumpet
Jasper van Damme – altosax
Floris Kappeyne – piano
Tijs Klaassen – double bass
Jean-Clair de Ruwe – drums

1. Short Story 5:44 (Kenny Dorham)
2. Escapade 6:16 (Kenny Dorham)
3. My Ideal 4:42 (Robin/Whiting/Chase)
4. Blues For KD 5:45 (Gidon Nunes Vaz)
5. Lamesha 7:35 (Kenny Dorham)
6. Windmill 6:30 (Kenny Dorham)

All tracks recorded on June 8, 2015 by Lex Tanger at the CvA Studio, Amsterdam, The Netherlands
Mixing by Chris Weeda
Mastering by Darius van Hlfteren

『Gidon Nunes Vaz Sextet / Carry It On!』
Tritone Jazz Records 2017

Gidon Nunes Vaz – trumpet
Caspar van Wijk – tenorsax
Jasper van Damme – altosax
Floris Kappeyne – piano
Tijs Klaassen – double bass
Jean-Clair de Ruwe – drums

1.Night Train Nostalgia (Gido Nunes Vaz)
2.Carry It On! (Gidon Nunes Vaz)
3.On A Clear Day (Lerner & Lane)
4.Fifth Image (Gidon Nunes Vaz)
5.Honeybee’s Lament (Gidon Nunes Vaz)
6.Renkon (Gidon Nunes Vaz)
7.Steeplechase (Charlie Parker)

Recorded in Bitzen, Belgium on March 24, 2017
Recording & mixing by Max Bolleman
Assistance by Marc Bastings
Produced by Tritone Jazz Records


“JT” 編集部からレビューを…ということで2枚のアルバムが送られて来た。ギドン・ヌネス・ファズ。未知の新進トランぺッターだが、その名前からしてこれはてっきりぼくの大好きなラテン・ジャズ系…と思いきや、これが大きな間違い。欧州のジャズ大国オランダの新進で、ネオ・ハード・バップを身上とするオーセンティックなラッパ吹きだった。

彼の存在を“JT”に紹介、そのインタビュー(別項)も行っているのが、05年からアムステルダム在住で現地でも活躍中の俊麗ピアニスト、小橋敦子さん(井上陽介とのデュオ作など好作品多い)。“ケニー・ドーハムを敬愛するハード・バップ一筋の彼ですが、古い曲に固執するのではなく、バップを音楽の一つのスタイルとして捉え、自身の作品でオリジナルなサウンドを追及しています。(フリー・ジャズなどが好まれる)オランダでこういうストーレート・アヘッドなスタイルをやり続けるのは、多くの批判に耐えるだけの強さが無いと出来ません。まだ27才という若さですがケニー・ドーハムを卒論のテーマにし、NY でドーハムを知る人を訪ね歩いたとも聞きます。音楽は古い新しいではないこと、本当の良さ楽しさをどうやって聴衆に届けるかを考え続ける謙虚な青年です”。この推薦の弁からしても彼についての興味は尽きない。といったところで早速アルバムを…。

そのうちの1枚は、彼のペットとアルト(ヤスパー・フォン・ダム)の2管フロント編成という、典型的なネオ・バップ・アルバム『トリビュート・トゥ・KD』(15年)。KD とは言うまでもなくケニー・ドーハムの頭文字。もう1枚の方はこの2管フロントに、トロンボーンを加えた6重奏団による『キャリー・イット・オン』(17年)。ピアノのフローリス・キャペイン以下のリズム隊はどちらも共通で、ジャケット写真を見るとそのほとんどが20代後半から30代初めという、現地の若いジャズメン達のようだ。

この2作を比べてみると『トリビュート…』の方は、そのタイトル通りKDに捧げたものだけに全6曲のうち4曲がKDのオリジナルで(余り知られていないものもある)、銘品バラード<マイ・アイデアル>もあのKDの代名詞とも言える名盤『静かなるケニー』に収められていた、余りにも有名なスタンダード。1曲だけ自身のオリジナルもあるが、これもKDの名前を冠したブルースとまさにKD尽くし。モダン・トランペット史上では決して一時代を画した…とは言い難い、超B級とでも言えそうな位置付けの通好み達人のKD。渋くほの暗いといったイメージを、ファンに印象付けた上記の代表作以外にも、『アット・カフェ・ボフェミア』『マタドール』『ウナマス』などの好盤もあり、それらはかなりアグレッシブでハード・ドライビングなプレーを展開したものでもあったが、本作はそうした彼への偏愛とも取れそうな傾倒振りが窺える内容になっている。ここまで徹底するならばあの名盤を強烈に特色付けていた、オープニングの<蓮の花>でも取り上げれば、日本のファンにも恰好のアピールとなったはずといささか惜しい気もするし、どうせならワン・ホーンに徹しそのプレーをよりKD に肉薄させたものに仕立てればとも思うのだが…。ここでの彼はドーハム・ライクに、中音域を生かした温かみのある流麗で力感あるトランペット(&フリューゲル・ホーン)・プレーを披歴、KDの30代半ば~40代初め頃のあの絶頂時にも比する、若々しくも闊達・明瞭な卓抜さで聴くものを充分に魅了してくれる。

一方、ジャケット・デザイン(藤岡宇央)が抜群に恰好良い6重奏団アルバムの方は、タイトル・チューンを始め自身のオリジナルがほとんど。メンバーも長い付き合いだけに纏まり良いユニット・サウンドを展開、あの懐かしくも激しき良き時代=60年代の雰囲気を色濃く残しつつ構成にも細かく気を配った、小橋さんも推奨しているエッジの利いた新鮮味あるネオ・ハード・バップ・プレーにより、往年のファンならずとも心惹かれるところ多々。彼及び欧州(オランダ)ハード・バップ新時代を担う若者達の心意気を示す、仲々の仕上りを聴かせる。ここでの彼のオリジナルも魅力的だが、ワン・ホーンによる秀逸なバラード<オン・ア・クリア・デイ>(やはりワン・ホーンがグッド!)、バードことチャーリー・パーカーの著名バップ・チューン<スティープルチェイス>。この2曲もオリジナル群と並び、かなり印象深い出来栄えとなっている。

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小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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