#1331 『Dave Douglas & High Risk / Dark Territory』

閲覧回数 18,467 回

text & photo by Takehiko Tokiwa  常盤武彦

GREENLEAF MUSIC GRE-CD-1049

Dave Douglas (tp)
Jonathan Maron (el-b, synth-b)
Mark Guiliana (ds,el-ds)
Shigeto (electronics)

  1. Celine
  2. All The Pretty Horsepower
  3. Let’s Get One Thing Straight
  4. Mission Acropolis
  5. Ridge Hill
  6. Neutral
  7. Loom Large

Recorded by Geoff Countryman at The Bunker Studio, Brooklyn NY on October 10, 2014.

Produced by Dave Douglas

amazon_icon_link_3


デイヴ・ダグラス (tp) が、2014年に結成した新たなエレクトリック・ユニット”High Risk”の2作目は、ダークな色彩を帯びた作品となった。前作同様、グルーヴ・コレクティヴのジョナサン・マロン (el-b,syn-b)、今や現代のグルーヴ・マスターの確固たる地位を築いたマーク・ジュリアナ (ds)、デトロイトのエレクトロニカ・シーンで知られるビート・ボクサーのShigetoの創り出すグルーヴィーなオープン・スペースを、ダグラスのトランペットが駆け抜ける。70年代のフリー・ファンク時代のマイルス・デイヴィス (tp) の方法論を、現代のテクノロジーとビートで甦らせた。ダグラスは、2007年にDJオリーヴをフィーチャーしたグループ“Keystone”を結成してツアーを繰り広げ、2008年にはアルバム『Moonshine』をリリースしエレクトロニカへの接近をはかってきたが、多彩な活動と並行した“High Risk”で、10年の時を経て完成が近づいてきたことを実感させられる。ダグラスの個人レーベルGreenleafから、2012年にリリースされたダニー・マッキャスリン (ts) の『Casting for Gravity』や2015年の『Fast Future』からの影響も想像できる。同2作は、ダグラスのグループにも在籍したマッキャスリンが、ジュリアナとティム・レファーブレ (el-b)、キーボードとエレクトロニカにジェイソン・リンドナーが参加して制作された、2010年代のジャズとエレクトロニカの蜜月を体現したアルバムだ。タイトルの『Dark Territory』は、ダグラスの友人のジャーナリスト、フレッド・カプランの著作で、ブッシュ政権からオバマ政権にかけて国防長官を務めたロバート・ゲーツがサイバー戦争の脅威について述べたコメントを冠した著作『Dark Territory : The Secret History of Cyber War』から引用されている。ダグラスは「サイバー・ワールドのミステリアスで不気味なアンダーグラウンド活動を、細かいルールを取り払い、テクノロジーの挑戦と危険の背中合わせの音楽で描いた」と語る。アルバムは4月16日に限定600枚の180グラム重量盤のLPとダウンロード版で先行リリースされ、7月8日にCDがリリースされた。アメリカでもリヴァイヴァル・ブームが起きているアナログ盤市場をターゲットにし、収録時間もLPを意識して40分ほどで、高音質を維持している。

5月7日のブルックリンのNPOライヴ・スペース“Roulette”でのリリース・ライヴは、3年間待ったニューヨークでのHigh Riskのプレミア・コンサートだった。マーク・ジュリアナとジョナサン・マロンのハード・グルーヴの上で、Shigetoの創り出すビートとサウンド・カラーリングは、アルバムを超えてフリーキーな音空間を構築した。デイヴ・ダグラスのインプロヴィゼーションは、マイルス・デイヴィスと同様バック・トラックが変わっても本質は不変なのだが、より大きな翼をえて自由に飛翔した。High Riskの、さらなる高みの到達点を見たい。

 

関連リンク Dave Douglas http://www.davedouglas.com/

 

 

 

 

 

 

 

Share Button
常盤武彦

常盤武彦

常盤武彦 Takehiko Tokiwa 1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

4 thoughts on “#1331 『Dave Douglas & High Risk / Dark Territory』

  • 2016年8月2日 at 3:04 AM
    Permalink

    さすが常盤さんの文章、このアルバム欲しくなりました。
    早速入手します。

    ところで、SIgetoという演奏家に興味を持ったのですが、このアルバムを聴いた時どの部分の音が彼のコントリビューションなのでしょう。

    Reply
  • 常盤武彦
    2016年8月2日 at 3:46 AM
    Permalink

    ありがとうございます。Shigeto氏が出してるのは、エレクトロニカのうにゃうにゃした音や、
    明らかに、ドラムが出しているのとはテクスチャーの違う
    ビートが、彼の仕業です。キーボードみたいな音も出してます。
    日系3世みたいですね

    Reply
    • 2016年8月2日 at 3:53 AM
      Permalink

      なるほど、こりゃやっぱりライブ見たいですね。
      あんまりカッコよくて、さっき思わずDaveに『最高』ってメールしちゃいましたよ(笑)

      Reply
  • 常盤武彦
    2016年8月2日 at 5:38 AM
    Permalink

    先月末、ヨーロッパ廻っていたみたいですね。ドラムはマークじゃなかったけれど。なかなかメンツがそろわないみたいで、ライヴはレアです。

    Reply

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↓ ロボットでないかお知らせください。 * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.