『早坂紗知/Beat Beat Jazzbeat!』

閲覧回数 4,225 回

text by Masahiko Yuh  悠雅彦

ンバギ・レコード/ボンバ・レコード
N-006 ¥2,625(税込・4/10発売)

早坂紗知 (as, ss)
黒田京子 (p)
永田利樹 (b)
フェローン・アクラフ (ds)
ワガン・ンジャエ・ローズ (perc)

1.I Mean You
2.Cai Dentro
3.Peace Warriors
4.Intersong
5.Yaye Boye Balma
6.Latin Genetics
7.In Walked Bud
8.My Favorite Things
9.Good Bye

若い女性サックス奏者の登場が何かと話題を呼んでいるが、話題先行のきらいがなくはない。彼女たちのジャズ界進出それじたいは大いに歓迎すべきことだが、いっときの騒ぎの後は見向きもしなくなるというのでは折角の才能が殺されかねない。

早坂紗知はそんな女性サックス奏者のパイオニアである。孤軍奮闘していた時代から今日にいたるまでの彼女を見ていて感心するのは、演奏家として一歩でも前へ進む努力を片時も怠ったことがないことと、一つの型にとらわれることなく演奏する喜びをひたすらサックスに託して謳歌してきたこと。しばらくぶりに聴くと驚くほどうまくなっている。決して誇張ではない。主婦でも、一児の母でもあるというのに、大したものだ。デビュー以来の「Star Up」、2年ほど前に結成した「ミンガ」での活動、かと思えば藤井郷子オーケストラや山下洋輔らとの共演など、どのセッションでも手を抜くことがない。結果を恐れずただ燃え尽きることに生き甲斐を見い出しているかのような彼女の音は、どこを斬っても勢いよく血が噴き出す。
夫のベーシスト永田と設立したンバギからすでに5作を発表した早坂の、これは第6作。今いちばん演(や)りたい人と、自分の好きな曲を、形式にとらわれず演奏した作品、と聴いた。ライヴハウスでの演奏同様、綺麗にかっこよくまとめることはせず、4ビートであれ、8ビートであれ、ラテン・リズムであれ、奔放なビートで押しまくって彼女流のジャズに仕立てた気持よさが全編に溢れる。モンクが2曲、コールマンが3曲、スタンダードが2曲、他はバーデン・パウエルとセネガルの伝承歌で、オリジナルが1曲もない。早坂、永田、黒田、ワガン、アクラフの5人を中心に、曲によっては編成が変わる。「インターソング」はアクラフとのデュエットだし、「グッバイ」も黒田とのデュオ。この「グッバイ」と「マイ・フェイヴァリット~」での早坂の感情を抑制したプレイが意表を突いて、逆に印象を濃密なものにする。前者の黒田の演奏も「アイ・ミーン・ユー」でのソロともども強くアピールする。何よりもアクラフを軸にしたリズムの燃え立つようなビートと、セネガルの国民的打楽器奏者ドゥドゥの息子で日本に住むワガン及び永田とのコンビネーションが快適。
リラックスしているのに、興に乗り過ぎていたずらに音を放出し過ぎることもない早坂の、いわば成熟した境地が滲みでた印象深い1作となった。 (悠 雅彦)

*初出:2005年3月13日 Jazz Tokyo #17

Share Button
悠雅彦

悠雅彦

悠 雅彦:1937年、神奈川県生まれ。早大文学部卒。ジャズ・シンガーを経てジャズ評論家に。現在、洗足学園音大講師。朝日新聞などに寄稿する他、「トーキン・ナップ・ジャズ」(ミュージックバード)のDJを務める。共著「ジャズCDの名鑑」(文春新書)、「モダン・ジャズの群像」「ぼくのジャズ・アメリカ」(共に音楽の友社)他。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

↓ ロボットでないかお知らせください。 * Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.