#1335 『渋谷毅 市野元彦 外山明/Childhood』

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text by Yumi Mochizuki 望月由美

Carco  Carco-4015  ¥2,500(税込)
制作:(株)林泉
販売:(株)キングインターナショナル

渋谷毅 (piano)
市野元彦 (guitar)
外山明 (drums)

1.Childhood(市野元彦)
2.No Restrictions for Plasterer(市野元彦)
3.Short Piece for a Day(市野元彦)
4.Falling Grace(Steve Swallow)
5.Subconscious-Lee(Lee Konitz)
6.Hiking(市野元彦)
7.Folk Song(市野元彦)

プロデューサー:渋谷毅
レコーディング・エンジニア:島田正明
録音:2015年8月25,26,27日 アケタの店

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アルバム・タイトル曲の (1)<Childhood>以外の6曲は4年前の2012年1月、渋谷毅のコンサート「渋谷毅@座・高円寺」の2部で渋谷と市野がデュオで演奏していた曲であり、二人が長年くりかえし演奏し続けてきたこなれた曲ばかりがとりあげられている。

ライヴ・シーンでの二人の音楽的な交流がそっくりそのまま、しかも演奏しなれたアケタの店での録音なので音も普段着の音で気張りとか気取りとかは全くない。

渋谷自身Facebookフェイスブックのなかで、これは市野元彦作品集といったものになったとつぶやいているように、7曲中の5曲が市野元彦の曲、あとの2曲がスワロー、コニッツの曲も市野の好みの選曲である。

渋谷は市野が提供した曲を何度も何度も繰り返し弾きながら煮詰めてゆき微妙なニュアンスを導き出して渋谷にしか出しえない世界を創りあげている。

いつまでも変わらないで鮮度を保つということは大変なことである。

ここでの渋谷毅(p)と市野元彦(g)+外山明(ds)の演奏はまるで一つの楽器が鳴っているような一体感とふわっとした浮遊感につつまれている。

この浮世から離れた感じのグルーヴが市野元彦の個性である。

俗っぽさのない点では渋谷毅もその上をゆく存在だし、外山明に至っては空気のような存在である。

渋谷毅と市野元彦のデュオはかれこれ6,7年続いているが、この二人のデュオを聴いているとなんとなく遠い昔の子供のころを想いだしてしまう。

(1)<Childhood>は10年ほど前に市野がアルバム『SKETCHES/スケッチズ』で録音している曲で市野の心象がよく伝わってくる。

渋谷と市野が弾くメロディーは遠い幼い頃の記憶を思い出させてくれるようなどこかで聴いたことがあるようなメロディーが次々と湧いてくるので、初めて聴いても昔から聴いていたような錯覚におちいる曲である。

二人の音は原始的というか素朴で飾り気がない、熱く燃えるわけでもなければ聴き手にこびるわけでもない、ただただ自然体で奏でるところが妙に居心地がよい。

そして外山明の不規則なようでいて邪魔にならない合の手も一味唐辛子のようにピリッと効いていて音楽全体の隠し味になっている。

ピアノとギターとのインタープレイと云えばナット・キング・コールとオスカー・ムーア、ピーターソンとハーブ・エリス、エヴァンスとジム・ホール等々の歴史に残る名コンビがあるがみんなその組んだコンビを貫くのが常である。

しかし、渋谷毅の場合、石渡明廣(g)、広木光一(g)、平田王子(g,vo)、中牟礼貞則(g)、そして市野元彦(g)といった5人ものギター・プレイヤーと並行してデュオ活動を現在進行形で展開しているというケースは他に例が無いと思われる。

5人のギターの弦の響きが渋谷の心の鏡となってそれぞれの鏡に自分の内面を映し出しているように思える。

渋谷毅は自身のレーベル「Carco」で渋谷毅オーケストラのメンバーとのデュオ・アルバムを制作してきている。

これまでに2008年から石渡明廣(g)との『月の鳥』(Carco, 2006)、松本治(g)との『帰る方法 3』(Carco, 2007)、松風紘一(reeds)との『Blue Blackの階段』(Carco, 2008)、津上研太(reeds)との『無銭優雅』(Carco, 2009)、故川端民生(b)との『蝶々在中』(Carco, 1998)と渋オケのメンバーとのデュオ・アルバムを発表してきたが、このところ「Carco」でのデュオ・シリーズは一時お休みをしている。

渋オケのメンバーではない市野とのアルバム『渋谷毅 市野元彦 外山明/Childhood』は云わばその番外編。

これを機に渋オケのメンバーとのデュオが再始動することを楽しみに待ちたい。

 

 

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望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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