#872 コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!

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2016年1月3日 岡山市 KAMP
Reported by 平井康嗣 Yasushi Hirai
Photo by 津川イサオ Isao Tsugawa* & 渡辺義人 Yoshito Watanabe**

コジマサナエ (vo)
橋爪亮督 (ts, p)
大野こうじ (g, fl)

岡大ジャズ研/OB他


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岡山駅の西口に奉還町という商店街がある。地方の商店街の衰退は、地方再生の街作りの課題ともなっているが、ご多分に漏れずこの商店街もシャッター街になりつつある。しかし学生の往来が多いので、若い人たちの新しい感覚による店舗が増えてきている。その奉還町商店街を一歩脇に入ったところにあるKAMPという外人向けの木賃宿も、若い感性が創り出した一軒であろう。ライヴハウスというわけではないが、一階のフロント兼ラウンジというのか、カフェのスペースは若者の文化の発信に一躍買っている。
去年の5月1日、岡山大学出身でバークリー音楽院を特待生で出た橋爪亮督さんの帰省に合わせ、岡大ジャズ研を中心にライヴ&ワークショップ・イヴェント、ドリーム・ジャズ・セッションをKAMPで開催した。その時のライヴ・メンバーだったコジマサナエさんと大野こうじさんが、今回も橋爪さんの正月の帰省に合わせて、この1月3日にライヴをすることとなった。だから、この面子による顔合わせは、今回で2度目である。コジマサナエさんは、岡山出身で2003年よりNYで活動していたジャズ・ボーカリストだが、ジャズというジャンルに捕らわれず心に響いた歌を歌うシンガーだ。橋爪さんとは、彼が岡山にいた頃何度か同じステージで演奏をしている。そして、大野こうじさんは大阪のギタリストで、木訥とした人柄とは対照的にその端正なギター・フレーズは不思議な魅力をもっている。いま、西日本では注目のプレイヤーだ。サナエさんは、最近は好んで大野さんとのデュオ活動に力を注いでいる。つまり、この3人のセッションは出会うべくして出会った必然的偶然のセッションなのだ。
コジマサナエさんはジャズのスタンダード曲以外にも、70年代80年代のアメリカン・ポップスも歌う。KAMPの泊まり客は、このような催し物には基本的にフリーで参加できる。白人の40?50代くらいの客が4?5人「So far away」や「Say you Love me」などに合わせて、ビールを片手に体でリズムを取っている。橋爪さんはポップな曲にも、自分のスタイルで曲を展開して行く。もっと、ソウルフルに展開して欲しいと思っても淡々とサックスを吹いている。大野さんもそうである。ミルトン・ナシメントの「Travessia」(ブリッジ)も、ぐっと盛り上がってゆく曲のくだりの部分にさしかかって、ここはサナエさんは歌い上げたいのだろうなと、私は思いながら聴いていたが、2人はぐっと押さえて演奏している。そして、サナエさんの昔からの十八番「Afro Blue」が始まった。ジャングルのざわめきを想定したフリー・スタイルのイントロから演奏が始まって行く。いつもはメインテーマから彼女は弾けて歌い出す。しかし今回はそのようには行かない。歌の次にサックスとギターにソロが回ってくると、二人はクールにアフロ・ブルーを展開してゆく。ジム・ホールとジミー・ジェフリーのサウンドを思い出してしまった。結局彼女も、飛び跳ねること無くクールにアフロ・ブルーはフェイドしていった。まだ、未完ではあるが、新しいアフロ・ブルーの解釈に私はためらいながら、驚いた。
余談ではあるが、サナエさんがニューヨークにいた頃、ダウンタウンのライヴハウスでこのアフロ・ブルーを歌っていると、ヨボヨボのじいさんが客席からステージに上がってきてコンガを叩きだした。すると店中が大いに盛り上がり、渾身のライヴになったらしい。ライヴの後で、そのじいさんに名前を訊くと、モンゴ・サンタマリアだったそうだ。アフロ・ブルーの作曲者本人だ。また、昔岡山にリー・コニッツが来た時も、飛び入り共演してリー・コニッツにえらく褒められたコトがあった。彼女は、ビックリするようなエピソードを色々と持っている。

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2部構成の三人のライヴが終えると、第3部は岡大ジャズ研、ジャズ研OB、地元ミュージシャン等が参加するセッション・タイムとなった。ジャズ研副部長・鈴木啓一郎君のピアノ、ジャズ研OB金山隆圭君のベースは、これからが楽しみなミュージシャンだ。ドラムの國廣理正さんは、往年の安定したドラミングで終始みんなをサポートしていた。大野さんは裏技のフルート、橋爪さんはピアノを披露してくれた。ジャズ・セッション初体験のサックスのリコさん、ギタリストのMizushimaくん、即興詩人のことはさん、ピアノのメグさんなど参加して、大いに盛り上がったのだが、場所が住宅街なのでリミットは10時半とあいなる。演奏の合間は、DJ.ケンタロウがソウルフルなコンテンポラリー・ミュージックで会場をクールに演出。彼はサナエさんの同窓生で、東京帰りのユニークなDJだ。
この新春ライヴで、三人の新しい可能性が見えたようで幸先のよいライヴであった。今年は、サナエさんの新作レコーディングの話も持ち上がっている。一昨年前、発売になった『Unconditional Love』と同じ安カ川さんのDaiki Musicから発売する。大野さんとのデュオをレコーディングする予定だったが、今回のライヴで橋爪さんにも何曲か参加してもらう話になったようだ。(2016.1.15)

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平井康嗣

平井康嗣 Yasushi Hirai 1954年 岡山に生まれる。 学生時代からジャズが好きで、常連客だったジャズ喫茶「シャイン」でアルバイトをするようになり、ついには「シャイン」のオーナーであり自身が"音楽の師"と仰ぐ乗金健郎(のりかねたけお)氏の紹介でジャズ、ロック、ソウルを中心のレコードショップ「LPコーナー岡山支店」店長となる。同時に、ジャズ・フォーラム岡山、フリー・インプロヴィゼイション・クラブ、表町生活向上委員会等の団体を主催して、ライブの企画を手がけ、数多くのミュージシャンを岡山に招聘する。 また、平成元年のスポーツ公園での「音楽三昧公園まつり」には上々颱風、梅津和時、古澤良治郎を迎えて、音楽愛好家達による手作りの音楽イベントにも着手。その後、後楽園の河川敷では日ソ友好の「公園まつり」で、ソ連からアルハンゲリスク、沖縄のネーネーズを披露した。西川公園での渋谷オーケストラをゲストに迎えた「音楽楽市」の協力、築城400年祭のおかあさんと子供の為の「ヴォイセス・フォー・チルドレン」では、モンゴルの不思議な歌声ホーメイのサインホを紹介。音楽の原点に立ち返る石門別神社での「いわとわけ音楽祭」、そして2002年からスタートした「岡山ジャズフェスティバル」では、ゲイリー・バートンと小曽根真のデュオを実現。音楽による岡山の地域おこしの市民活動にも尽力した。 今は引退して、岡山出身のミュージシャン達、コジマサナエ、橋爪亮督、及部恭子、鳥越啓介、Mika(森 美佳)などを応援するかたわら、様々な音楽を一音楽ファンとして純粋に楽しんでいる。 招聘した音楽家は、 エルビン・ジョーンズ、エヴァン・パーカー、ペーター・ブロッツマン、エグベルト・ジスモンチ、レイ・ブライアント、ドン・フリードマン、姜泰煥、デレク・ベイリー、リッチー・バイラーク、ジョージ・ムラーツ、ゲイリー・バートン、リチャード・デイビス、ジミー・スコット、エリック・アレキサンダー、スティーブ・キューン、シーラ・ジョーダン、ピエール・バルー、マーク・マーフィー、デヴィッド・マレー、リー・コニッツ、サインホー・ナムチャラック、ネッド・ローゼンバーグ、デューク・ジョーダン、マイク・スターン、ヒューストン・パーソン、エタ・ジョーンズ、レス・マッキャン、マリーナ・ショウ、スコット・ハミルトン、ダニエル・ユメール、ポール・モチアン、ビル・フリーゼル、ジョー・ロバーノ、ジャネット・サイデル、ゲイリー・ピーコック、グレッグ・オズビー、ホッド・オブライエン、アルハンゲリスク、AMM、ジョン・ローズ、トム・コラ、トーマス・チェイピン、マイラ・メルフォード、梅津和時、加古隆、中村善郎、宮野弘紀、ヤヒロトモヒロ、橋本一子、山本剛、菊地雅章、小曽根真、おおたか静流、内橋和久、上々颱風、ネーネーズ、坂田明、峰厚介、藤原清登、佐藤允彦、早坂紗知、大友良英、木住野佳子、川嶋哲郎、廣木光一、鬼怒無月、ティポグラフィカ(菊地成孔)、巻上公一、酒井俊、程農化、渋さ知らズ、山崎ハコ、与世山澄子、フェダイン、灰野敬二、黒田京子、ガイアクアトロ、片山広明、タイロン橋本・・・・・等々。 副島輝人、白石かずこ、若松孝二

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