#873 デヴィッド・サンボーン David Sanborn

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2015.10.22 21:00 ブルーノート東京 Blue Note Tokyo
text by Hideo Kanno 神野秀雄
photo by Tsuneo Koga 古賀恒雄

David Sanborn (as) Ricky Peterson (keyb) Nick Moroch (g)
Andre Berry (b) Chris Coleman (ds) 岡部洋一 Yoichi Okabe (perc)

1. Comin’ Home Baby
2. Maputo
3. Camel Island
4. Ordinary People
5. Spanish Joint
6. Run for Cover

7. The Dream


新作『Time and the River』をひっさげての日本公演。このアルバム何が凄いかって、ジャケットが日本語の漢字で「サンボーンガワ」。5年ぶりのリーダー・アルバムで、15年ぶりのマーカス・ミラーとのコラボレーション。ただ、今回マーカスの参加はなかったが、その分、デヴィッドをじっくり聴ける感はあった。
1曲目は<Comin’ Home Baby>、いきなりマイナーブルースを持って来るだけにブルージーなプレイを見せつけ、そして、ボブ・ジェームスとのコラボによる『Double Vision』に収められた<Maputo>。信頼するリッキー・ピーターソンの仕切りと、ニック・モロックとアンドレ・ベリーがサポートに身を委ねて、サンボーン節が炸裂する。
『Time and the River』からは<Ordinary People>、<Spanish Joint>の2曲に留まったが、メロウなバラードから、ノリのよい1曲へ。その前後にマーカスゆかりの<Camel Island>と<Run for Cover>を配している。この4曲がシームレスにつながっていく中で特徴的であったのは、パーカッションとドラムスが叩き出すリズムを大切に使っている点であり、これは『Time and the River』でも一貫している。そこでドラムスのクリス・コールマンとともに大活躍を見せたのが、我らが岡部洋一。コンガなどに加えて、タブラも持ち込んだ。気鋭のヴォーカリストNobieとの共演などブラジルを意識したライブを何度か見る機会があり、ワールドミュージック、J-Pop、前衛まで活躍しながら吸収したその幅広いヴォキャブラリとテクニックに驚いてはいたが、世界での活躍という視点で見ていなかった。デヴィッドとの共演の経緯はわからないが、単なる臨時メンバーではなく、このバンドのサウンドの中核を担う存在であり、スタープレイヤーでもあるように、観客を湧かせていた。クリスとの掛け合いも素晴らしい。あらためて世界での活躍を楽しみにしたい。
鳴り止まない拍手に、アンコール<The Dream>で応え、定番となったこのバラードを心を込めて歌い上げ、観客を酔わせ、素晴らしい余韻を残した。
なお、この最終日第一セットでは、ギタリストのジョン・マクラフリン(74歳)がサプライズ・ゲストで登場し、<Spanish Joint>から<Run for Cover>まで参加したという。『Electric Guitarist』(1978)での<Every Tear from Every Eye>が思い出され、ぜひ聴きたかった。
サックスの面白さのひとつに、まだまだ未知の音色や奏法が生まれて来る未開拓な楽器である点があげられる。他の楽器はそこまでの自由度を残していない。デヴィッド・サンボーンは、ジャズに限らず音楽の全域にわたって、アルト・サックスのサウンドを大きく変革したオンリーワンの存在である。それだけに後続のアルト吹きはその影響から逃れる難しささえある。そのデヴィッドも1945年生まれの70歳。同い歳にキース・ジャレットとスティーヴ・ガッドがいる。巨匠であり円熟の領域に入る。デヴィッドもボブ・ジェームスやスティーヴ・ガッドと共演した際は、サックスの音色も高音域の鳴りを控えめにして、よい意味で「枯れた」円熟を見せてくれたが、この若手~中堅メンバーのサポートの中では、サックスの音色も変わらず、パワーと若さを確認させてくれた。「巨匠」ぶりを聴きに行ったつもりが、現在進行形での力強い活躍を魅せてくれた公演だった。

Time and the River Mike Stern / All Over The Place

【関連リンク】
David Sanborn Official Website
http://www.davidsanborn.com
Montreux Jazz Festival Japan 2015
http://www.montreuxjazz.jp
岡部洋一 オフィシャルウェブサイト
http://okabeyoichi.com

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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