#883 La Folle Journée de Nantes 2016 “la nature” ラ・フォル・ジュルネ2016「la nature」〜ナントのレポートと東京のみどころ

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2016.2.4-7 ナント国際会議場 La Cité, Le Centre des Congrès de Nantes
Text by Hideo Kanno 神野 秀雄
Photos by Marc Roger
Photos by Hideo Kanno 神野秀雄 (クレジット表記があるもの)

 

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. René Martin le créateur de la folle journée Photo : Marc ROGER Mention obligatoire

GW開催ラ・フォル・ジュルネの原型をナントに訪ねる

2016年5月3日〜5日に東京国際フォーラムで開催される「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」。今年12年目を迎え、昨年の「Passion」に続きテーマは「la nature」。同テーマで先行した本家「ラ・フォル・ジュルネ・ド・ナント」を初めて訪れ、東京との比較と展望を試みた。

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Ici Duo Jatekok et l'ensemble instrumental de l' ONPL. Photo : Marc ROGER Mention obligatoire,Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature.

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Photo : Marc ROGER Mention obligatoire,

大西洋に近い人口30万人の都市ナントまで、パリ・モンパルナス駅からTGVで2時間、シャルル・ド・ゴール空港から飛行機で1時間またはTGVで3時間。ナントの名をご存知なら、1598年にプロテスタント信徒の権利を認め、フランス繁栄のきっかけとなった「ナントの勅令」だろう。発令の場となったサン・ピエール・サン・ポール大聖堂の壮厳かつ光に満ちた佇まいを見ることができたし、ブルターニュ大公城も立ち寄った、と観光はわずか1時間ほどで、あとは会場を走り回る。1時間の観光に傘を持たずにでかけたら雨でずぶ濡れ、でも虹が出迎えてくれて、まさに「la nature」。

運営方法は東京に継承されているが、主要14会場で約45分の公演が同時進行し、7〜28ユーロほどの入場券を購入して思い思いに参加し、合間には無料コンサートや食事、ワインを楽しむ。アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンが1995年に、ロック・フェスティバルの発想を取り入れて開始し今年で22回目。ノースシー・ジャズ・フェスティバルやニューヨークのウインター・ジャズフェストなどとは違い、定額で自由に見るという形ではない。

2016年は、ナントでの341有料公演と周辺地域での7公演、37無料公演、25関連公演に、1,500人以上のミュージシャンが参加し、入場券16万枚に対し、最終日14:30までに92%となる14.7万枚を販売した。学生向けに5ユーロの格安入場券を13,000枚用意した。そのためもあって、子供たちがたくさん参加し、その笑顔と歓声で会場と周辺が賑わっていたのがとても印象的だった。東京でもホールA早朝の「0歳からのコンサート」に加え、遅い時間を除き多くのコンサートが3歳から参加できるのは特筆したい。

2月15日夜に東京国際フォーラムで開催された「ルネ・マルタンのナチュール講座」によると、ルネは自然に関する約1,600曲をピックアップし、うち約900曲を東京で取り上げる。「la nature」は以下のような関心に分けられる
「四季」〜バロックから21世紀までさまざまな四季を聴き比べる
「自然万物」〜天地創造から惑星までスケールが大きく、演奏機会が稀な作品に注目
「風景」〜田舎からグランド・キャニオンまで鮮やかな光景が立ちのぼる
「動物」〜ライオンから北極圏の鳥まで生き物たちの響宴に心踊らせて
「スペシャリティ」〜~和太鼓から怒濤のアフリカン・ビートまで音楽の冒険へ旅立とう
これらを念頭に置きながら、ナントのレポートを進めて行こう。テーマに沿って時系列が前後することをご了承いただきたい。

※公演番号の表記について
本記事中で、ナントでの公演番号をN133のように、東京での公演番号をT322のように表記する。1桁目は何日目かを示している。ナントでは下2桁がその日の通し番号、東京では2桁目が会場の区別、3桁目が朝からの時系列を示す。
N092 2016.2.6 14:15 Auditorium André Le Nôtre
ヴィヴァルディ「四季」 Antonio Vivardi / The Four Seasons

N246 2016.2.6 22:00 Grand Atelier – Lieu Unique
ヴィヴァルディ/リヒター:「四季」のリコンポーズ
Antonio Vivardi / Max Richter Recomposed: The Four Seasons
庄司紗矢香 Sayaka Shoji (vn)
ポーランド室内管弦楽団 Polish Chamber Orchestra
http://concert.arte.tv/fr/sayaka-shoji-et-le-polish-chamber-orchestra-la-folle-journee

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Ici Sayaka Shoji et le Polish Chamber Orchestra. Photo : Marc ROGER Mention obligatoireFolle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Ici Sayaka Shoji et le Polish Chamber Orchestra. Photo : Marc ROGER Mention obligatoire

フィリップ・グラス、アストル・ピアソラを含めさまざまな「四季」を取り上げる中で、ルネがもっとも熱く勧めるのがアントニオ・ヴィヴァルディ「四季」の現代の作曲家マックス・リヒターによる「リコンポーズ」版。ナントでは、庄司紗矢香がオリジナルとリコンポーズをそれぞれ演奏していた。リヒター版をストリーミングで聴くことができる。東京では、リヒター版のみ5/3 T126 20:30 T215 5/4 18:30 で演奏される。クラシックの名曲に手を加えるのは難しく、極限まで研ぎ澄まされた原曲を超えられることの方が少ない。リヒターはアンサンブルを複数の明確なレイヤーに分割して、モーダルな進行やミニマルミュージック的な感性を巧みに組み合わせ、オリジナルのエッセンスを浮かび上がらせることに成功している。

N114 2016.2.5 22:45 Salle Jean-Baptiste de la Quintinie
リシャール・ガリアーノ六重奏団 Richard Galliano Sextet
Richard Galliano (accordeon), Bertland Cervera (violin)
Saskia Lethiec (violin) Jean-Paul Minali Bella (viola)
Eric Levinnois (cello) Sylvain Le Provost (contrabass)
ヴィヴァルディ<四季>より<冬><夏>
Antonio Vivaldi: The Four Seasons, Winter and Summer
アストル・ピアソラ<ブエノスアイレスの四季>より<秋><春> 他
Astor Piazzolla: “Spring”and “Summer”from “The Four Seasons of Buenos Aires”
http://concert.arte.tv/fr/le-richard-galliano-sextet-la-folle-journee

 

フランス出身のアコーディオン/バンドネオン奏者、ピアソラの魂を継承しながら、タンゴ、ジャズ、クラシックを行き来する。ストリング・クインテットを従えた編成で、切ないアコーディオンの響きとストリングスが溶け合いぶつかり合いながら、魂をかきたてる「四季」を描いてくれた。
東京ではピアソラ<ブエノスアイレスの四季>から<春>は、T251 5/4 09:45 トリオ・カレニーヌが演奏する。T142 5/3 11:45 フィリップ・グラス、ヴァイオリン協奏曲第2番<アメリカの四季>にも注目したい。ドミトリ・マフチンのヴァイオリン、リュー・ジア指揮、マカオ管弦楽団が演奏する。

N045 2016.2.4 14:00 Salle Jean-Baptiste de La Quintinie (450 places)
児玉麻里 Mari Kodama & 児玉桃 Momo Kodama (piano)
ストラヴィンスキー <春の祭典>2台のピアノ版
Stravinsky: The Rate of Spring for two pianos
チャイコフスキー <白鳥の湖> 4手のための
Tchaïkovsky: The Swan lake for 4 hands

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Mari et Momo Kodama Photo : Marc ROGER Mention obligatoire

児玉麻里と児玉桃の姉妹デュオの演目と写真をご参考まで(私の到着前)。東京では、T326 5/5 18:45 で児玉姉妹が<春の祭典>を、T341 5/5 10:00 サン=サーンス<動物の謝肉祭>管弦楽版・谷川俊太郎ヴァージョンを演奏する。さらに、<動物の謝肉祭>としては、T212 5/4 11:45 小曽根真と江口玲のピアノを含む室内楽版が注目だ。小曽根はニューヨークフィルのニューイヤーズ・イヴでも管弦楽版で演奏している。同じく、渋さ知らズが、T146 5/3 20:30、T371 5/5 14:15 日比谷野音で演奏する。

N165 児玉麻里 Mari Kodama piano
2016.2.5 10:30 Centre des Expositions de Nantes Metropole (150 seats)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第17番 二短調 作品31-2 <テンペスト>
Beethoven: Piano Sonata No.17 D minor op 31 No.2 “The Tempest”
Rodolphe Bruneau-Boulmier (1981) Lune Claire après La Tempête (cration mondiale)
ルドルフ・ブルノー=ブルミエ:嵐の後の月光
Beethoven: Piano Sonata No.14 op 21 No.2 “Moonlight”
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2 <月光>

ピアノソロに主に使われている会場「Centre des Expositions de Nantes Metropole」は自由席150席で、メイン会場となる会議場のお向かいにある建物の半地下で四方ガラスの明るい空間で、客席からは空を見上げる形になり、私の大好きなハコとなった。5日10:30からの児玉麻里、12:00からの児玉桃のコンサートに辿り着くために、早朝パリ着のフライトから、RER B線、パリ地下鉄6号線、TGVを乗り継いで、10時頃会場に滑り込んだ。国内線を使うと間に合わないのだ。
児玉麻里は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲をCDに録音するというプロジェクトを達成していて、その中の2曲に、ルドルフ・ブルノー=ブルミエによるその2曲にインスパイアされた曲を挟むユニークなプログラムで作曲者自らステージで解説した。児玉麻里は確信を持った力強さを秘めたダイナミックな演奏が素晴らしい。ピアニッシモでも凛とした音で弾ききったのが印象的だった。

N166 児玉桃 Momo Kodama (piano)
2016.2.5 12:00 Centre des Expositions de Nantes Metropole (150 seats),

Olivier Messiaen (1908-1992)
La Traquet rieur, extrait du Catalogue d’oiseaux
鳥のカタログ より 12. クロサバクヒタキ

Maurice Ravel (1875-1937):
Miroirs 鏡 より
2. Oiseaux tristes 悲しげな鳥たち
3. Une barque sur l’ocean 海原の小舟

Toru Takemitsu 武満 徹(1930-1996)
Rain Tree Sketch 雨の樹 素描

Claude Debussy (1862-1918)
Estemps (extrait) 版画 より
Soirée dans Grenade グラナダの夕べ
Jardins sous la pluie 雨の庭

Claude Debussy (1862-1918)
L’Isle joyeuse 喜びの島

児玉桃は、ECM初録音の『La vallée des cloches 鐘の谷』(ECM2343)に収録されたラヴェルと武満と、おそらくECM2枚目として録音したと思われるドビュッシー。美しいピアノの音と、それを通してどこまでも作曲家の意図・視線に近づく表現力に圧倒される。ECM2枚目リリースが待ちきれない。意外に日本ではこのテーマでのコンサートは少なく、東京で実現しないのが残念。おもしろいことに、四方がガラス張りで空を見上げるこのホールから、外に鳥が飛んでいるのが見えるのだが、<鳥のカタログ>のとき、たくさんの鳥が活発に飛んでいて、<悲しげな鳥たち>以降は静かになった。ピアノを弾く児玉桃からは見えないのだが。偶然だとは思うが、メシアンと児玉桃の音楽に鳥と“対話”できる感性があると考えたら凄い。

N130児玉桃Momo Kodama (piano)
2016.2.5 19:00 Salle Rene-Louis de Girardin (200 seats)

©Hideo Kanno

オリヴィエ・メシアン/鳥のカタログ
Olivier Messiaen (1908-1992) / Catalogue d’oiseaux

メシアン「鳥のカタログ」全13曲(約3時間半)を録音している児玉桃がその中の曲を演奏するコンサート。まず各曲のはじめにメシアンによる解説文を桃さんが朗読してから演奏が始まる。ことばがわかれば、イメージが湧いて入りやすくなると思う。<12.クロサバクヒタキ>、<6.モリヒバリ>、<3.イソヒヨドリ>、<4.オグロヒタキ>の4曲。メシアン&児玉桃の組み合わせは、不協和音が不安感をあおるのではなく、輝かしい光や喜びにつながる印象で、美しい音色、繊細で巧みな表現力を経て、小鳥たちの姿が躍動感をもって浮かび上がった。
東京では残念ながら児玉桃のメシアンがない、代わって、T156 5/3 18:45,T253 5/4 13:30, T342 5/5 11:45でピエール=ロラン・エマールが3公演に亘って演奏する。

N241 アンヌ・ケフレックAnne Queffelec (piano)
2016.2.6 13:00 Grand Atelier – Lieu Unique (500 seats)

Histoires d’eaux 「水の歴史」

ドビュッシー:水の反映(映像)Debussy:reflets dans l’eau, extrait des images
ドビュッシー:沈める寺、オンディーヌ(前奏曲集)Debussy : extraits des Préludes (La Cathédrale engloutie, ondine)
ケクラン:漁師たちの歌(陸景と海景)Koechlin : Le Chant des pêcheurs
ラヴェル:海原の小舟(鏡)Ravel : Une barque sur l’océan, extrait
des miroirs
リスト:悲しみのゴンドラ Liszt : La Lugubre gondola
リスト:波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ Liszt : Saint François de Paule

ビスケット工場を改装したル・ユニクというユニークな建物の大きめのホール(写真左下の虹にも注目)。東京でも常連となっているアンヌ・ケフェレックが、水を描いた小品の数々を解説を交えて演奏する。フランス語がわかればかなり貴重な話が聴けたのでは。そう考えると日本でももっと解説付きのコンサートがあってもよいと思う。東京では同じプログラム、T257 5/4 21:00 「水の物語」がある。

N333 Anne Queffelec (piano)
2016.2.7 12:15 Centre des Expositions de Nantes Metropole (150 seats) © Hideo Kanno

IMG0092AnneQufellec4,IMG0100AnneQuffeleque7

モーリス・ラヴェル(1875 – 1937):鏡 Maurice Ravel: Miroirs
クラウド・ドビュッシー(1862 – 1918):映像 第2集 Claud Debussy Images, Livre 2

半地下の会場から大きな窓を通して、青空、流れる雲、木々の緑、成層圏を飛行機が飛び交うのを眺めながら、アンヌ・ケフェレックが美しく奏でる<鏡>と<映像 第2集>の音に優しく包まれる。何かとても懐かしい切ない気持ちに襲われて、ラヴェル、ドビュッシーの時間と交錯した気さえして、涙が込み上げてきた。一生の思い出となるコンサートになったと思う。それが児玉桃の<鏡>のときでなかったのは、音そのものよりも、児玉のときは曇っていて、アンヌのときに青空と雲の流れであったことが大きい。ともあれ、アンヌのフランス音楽の表現力に圧倒された。東京でもT352 5/5 12:15 で<鏡>、<映像>を聴くことができる。

N200 宇宙の音楽〜ユベール・リーヴ (宇宙物理学者) & アンサンブル・カリオペ
2016.2.6 18:45 Salle Jean-Baptiste de la Quintinie

「宇宙の音楽」“Cosmophonies”
アンサンブル・カリオペ、Ensemble Calliopée
ユベール・リーヴ (天体物理学者、詩人)Hubert Reeves (astrophysicst, poet)
Karine Lethiec (viola, artistic director, presentation),
Florent Audibert (Cello), Anne-Cécile Cuniot (flute), Christophe Giovaninetti (violin), Chen Halevi (clarinet), Frédéric Lagarde (piano), Maud Lovett (violin),

Claude Debussy : Cloches à travers les feuilles
Tristan Murail : Feuilles à travers les cloches, pour flûte, violon, violoncelle et piano (1998)
Olivier Messiaen : Vingt regards sur l’enfant-jésus, pour piano (1944) (extrait : regard de l’étoile)
Toru Takemitsu : Ame no ki sobyù II – rain tree sketch II, in memoriam olivier messiaen, pour piano (1992)
Thierry Pécou : Outre-mémoire, pour piano, flûte, clarinette et violoncelle (2003)
Kaija Saariaho : Je sens un deuxième cœur, pour alto, violoncelle et piano (2003)
André Jolivet : Cinq incantations, pour flûte seule (1936) (extrait : incantation IV)
Philippe Hurel : Eolia, pour flûte (1981)
Philippe Hersant : Cinq miniatures, pour flûte (1995) (extrait : improvisation berbère)
Krystof Maratka : Nids de cigognes, pour alto solo et prise sonore de voix d’enfant (2002)
Olivier Messiaen : L’abîme des oiseaux (1940)
Daniele Gasparini : Quando il vento sognava (quand le vent rêvait), pour violon, violoncelle, flûte, clarinette et piano (2008)

今回最も興味深かった試みのひとつ。天体物理学者であり詩人のユベール・リーヴの詩をフィーチャーし、100億光年以上先の銀河群から微生物までの画像を組み合わせ、20世紀の音楽〜ドビュッシー、ミュライユ、メシアン、武満徹などとともに表現し、時間を表現する。「la nature」というのは、海、風などの感覚や風景としての自然だけではなく、この世界を支配する物理法則と、それが創るマクロからミクロまでの世界。これはぜひ日本でも再演して欲しかった。東京でも自然科学と音楽のコラボレーションの追加イベントを望みたい。

ドラマーズ・オブ・ブルンジ Les Maitres tambours du Burundi
2016.2.7 17:00 Grande Halle – Cite

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Ici les Maîtres Tambours du Burundi. Photo : Marc ROGER Mention obligatoire,Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Les maîtres tambour du Burundi. Photo : Marc ROGER Mention obligatoire

「Grande Halle」というのは、国際会議場入口にある巨大空間で「イベントホール」にあたり、有料公演で入場していればさまざまな無料コンサートが楽しめる。一押しの演奏家のサンプリングもでき、あるいは地元ナントのさまざまなアンサンブルも出演する。

今回、日本、中国をはじめ、イラン、イスラエルなどワールドミュージックへのフォーカスが強まった。個人的には中東の音楽が、古代キリスト教音楽やアンダルシア音楽の源流につながるという意味も含めておもしろかったが残念ながら日本には来ない。ECMのマンフレート・アイヒャーが中欧、中東から地中海周辺の音楽に惹かれるのも古代キリスト教音楽やクラシックの源流を探る流れもあるのではないかと思っている。また、オーストリアのヨハン・シュトラウス・アンサンブルも単にクラシックというだけでなく、中欧の大衆音楽が持つグルーヴを伝える素晴らしい演奏だった。

ワールドミュージックのセレクションの中から中央アフリカのブルンジから「ドラマーズ・オブ・ブルンジ」が来日し、T226 5/4 19:15、T345 5/5 17:15で公演を行う。ブルンジの儀式舞踏は2014年に、ユネスコの無形文化遺産に登録されている。白赤緑のカラフルな衣装に身を包んだ奏者が繰り広げるアフリカの大地を感じさせるステージングに観客は熱い拍手を送っていた。

後述の林英哲の他、日本から尺八の三橋貴風が招聘され、東京ではT353 5/5 14:00に。中国からは二胡の姜建華[ジャン・ジェンホワ]が招聘され、T243 5/4 13:30 オリヴィエ・シャルリエのヴァイオリン、廖國敏[リオ・クォクマン]指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアで演奏される。ワールドミュージックへの取り組みは、大きな特徴の一つだ。2017年のテーマは「Dance ダンス」を予定しており、今回ナントでフォーカスされ、東京ではその一部となったワールドミュージックがより強くフィーチャーされるのではと思う。

この他、東京でのお勧め公演としては、T223 5/4 13:30「藤倉大が考えるla nature」。ブーレーズも絶讃した注目の作曲家、藤倉自身をはじめ、坂本龍一、大友良英、デヴィッド・シルヴィアンらを取り上げる。
また、ナントにおいて、オール武満プログラムを含め、武満徹が多く取り上げられ、武満と自然の関わりが高く評価されていたことを付記しておきたい。「武満徹が見た風景Ⅱ」T351 5/5 10:30 鈴木大介(ギター)、岩佐和弘(フルート)、「武満徹が見た風景Ⅰ」T237 5/4 21:30小川典子、豊嶋泰嗣、川本嘉子、辻本玲 に注目したい。

#184 2016.2.7 22:15-23:30 Auditorium André Le Nôtre

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. ensemble double sens avec Nemanja Radulovic au violon Photo : Marc ROGER Mention obligatoire,Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. ensemble double sens avec Nemanja Radulovic au violon Photo : Marc ROGER Mention obligatoire

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Chanteurs d'Oiseaux concert 207 Photo : Marc ROGER Mention obligatoire

Johnny Rasse, Jean Boucault (鳥のさえずり chanteurs d’oiseaux)

Nemanja Radulovic (violin and direction)
Ensemble Double Sens
Francesco Tristano (piano)
Lucienne Renaudin-vary (trumpet)
Orchestre Philharmonique de l’Oural, Dmitri Liss (direction)

Vivaldi : Les Quatre Saisons
四季
Rachmaninov: Zdes Khorosho ここは素晴らしい場所
Leo Delibes: Les filles de Cadix カディスの娘
Smetana : La moldau
モルダウ“
Tchaïkovsky : Le Lac des Cygnes, suite opus 20a (extraits) 組曲「白鳥の湖」
http://concert.arte.tv/fr/concert-de-cloture-de-la-folle-journee

LFJのまとめであり、もっとも盛り上がるべく企画されたコンサート。とはいえ収容人数1,900人の限界があり、#184、#272, #273の3回に分け、計5,700人、ちょうど東京国際フォーラムホールAに相当する。動画が公開されている。
ネマーニャ・ラドリュビックのヴァイオリン指揮によるヴィヴァルディ<四季>。オリジナル版だがロックギタリストを彷彿させるスピード感のあるダイナミックなプレイに会場が熱狂する。ただ以前からバロックではこういうスタイルは構造的に可能であり斬新ではないらしいが、それでもミュージシャンと聴衆のインターアクションという意味でも可能性が広がる。ナントと東京での目玉の一つであるバードシンガー・デュオ、ジョニー・ラスとジャン・ブコー。ふたりの“鳴き声”は、T227 5/4 21:00に披露される。そして「風景」を最も代表する<モルダウ>が演奏された。
他方、東京での“一押し”、T113 5/3 14:30「ル・ク・ド・クール〜ルネ・マルタンのハート直撃コンサート」は、ナントとは一致せず、ロベルト・トレヴィーノ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィア、VOICE8で、<枯葉>、エルトン・ジョン<サークル・オブ・ライフ>(ライオン・キング)、ベートーヴェン交響曲第6番<田園>などとなっている。なお、<田園>といえば、T361 5/5 10:00 酒井茜がリスト編曲による<田園>ピアノ版を演奏する。

N280 林英哲 英哲風雲の会 Eitetsu Hayashi Ensemble
2016.2.7 19:30 Salles Antoine Richard
林英哲 Eitetsu Hayashi、上田修一郎 Shuichiro Hayashi、はせみきた Mikita Hase、辻祐 Tasuku Tsuji 、田代 誠 Makoto Tashiro (percussion)
林英哲 3つのダンス
石井眞木 モノクローム
林英哲 海の豊潤

N268 林英哲 ロベルト・トレヴィーノ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィア
2016.2.7 11:00 Auditorium Andre Le Notre
林 英哲 Eitetsu Hayashi: Percussions
ロベルト・トレヴィーノ指揮、Roberto Trevino: Direction
シンフォニア・ヴァルソヴィア Symphonia Varsovia
ストラヴィンスキー:春の祭典 Stravinsky: The Rate of Spring
松下功:和太鼓協奏曲<飛天遊> Matsushita: Hi-ten-yu, Concerto for Percussions and Orchestra
http://concert.arte.tv/fr/eitetsu-hayashi-et-le-sinfonia-varsovia-diriges-par-robert-trevino-la-folle-journee

Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Ici Eitetsu Hayashi Ensemble. Photo : Marc ROGER Mention obligatoire,Folle journée de Nantes 2016 , cette année le thème est la nature. Ici Eitetsu Hayashi Ensemble. Photo : Marc ROGER Mention obligatoire

太鼓奏者の林英哲とそのアンサンブル「英哲風雲の会」。日本各地で活躍する若手太鼓奏者の中から、林英哲の音楽に共鳴する実力者が揃う太鼓ユニット。メンバーはジャズ、J-Popまでを含めそれぞれ幅広い活動を行う。英哲風雲の会のコンサートは800席のホールが毎回満席となり、繊細かつダイナミックな演奏で会場を圧倒し湧かせた。日本の伝統をそのままではなく、大太鼓ソロ奏法の創造や、多種多様な太鼓群を用いた独自奏法の創作など新しい「太鼓音楽」の創造に取り組んでいる点が幅広い可能性を魅せる。T271 5/4 14:15 日比谷野音で英哲風雲の会が野外ライブを行う。
大ホールでは、林英哲、ロベルト・トレヴィーノ指揮、シンフォニア・ヴァルソヴィアで、松下功の和太鼓協奏曲<飛天遊>、ストラヴィンスキー<春の祭典>が演奏された。動画が公開されているのでぜひご覧いただきたい。そして東京のラ・フォル・ジュルネは、T316 5/5 21:45 「大地の律動~LFJ2016 熱狂のフィナーレ」としてこのプログラムで「熱狂の日」を締め括ることになる。

本家ナントと東京を比較してみて、東京でもそのスピリットとメリットが最大限に生かされているし、またこれだけのコンサートを並行して運営するオペレーションもどちらも素晴らしいものであり、双方の主催者、スタッフ、ボランティアのみなさんにあらためて頭が下がる。なお、チケットは各自プリントし、バーコードを読み取るのが主流になっていた。セキュリティーの面でいえば、時節柄、ナントでは荷物検査は行っていた。安全にコメントすること自体が安全を損なうので詳細は差し控えたい。

ナントの場合は国際会議場という大きな空間で完結する感があり、コンサート会場へ向かうのに毎回イベントホールを通過するようになっている。つまり会場内の一体感は強いが、会場外からの接点は弱い。他方、東京は、各会場が離れたイメージがあるが、丸ノ内という日本を代表する街の一つに対して開かれ、空間、公共の動線・広場につながる魅力がある。一長一短あるが、日本のクラシックファンの拡大というポイントからいえば東京のメリットは生かされると思う。これだけの場を提供する東京国際フォーラムには心から感謝したい。

昨年の「Passion」に続き、「la nature」というテーマも、新しい音楽に出会い、視野を拡げる上でとても効果的だった。特に春から初夏の風を感じるゴールデンウィークの開放感とも相まって、魅力的な音楽祭となると思う。まだラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに行かれたことがなければ、当日、有料公演を1枚でも購入すれば、イベントホールや無料イベントでいろいろな楽しみ方ができるので、ぜひ体験してみて欲しい。また、まわりに音楽が好きな、音楽を演奏する子供たちや学生がいれば、ぜひ誘ったり、勧めて欲しい。集中的に多様な音楽に同時に接することはきっと将来大きな宝になると思う。演奏者たちのオフも垣間みることができたが、ナントに仲間が集まって演奏することが楽しいということが伝わる。その楽しいエネルギーを受け取って、理屈抜きで楽しいひとときを過ごしていただければと思う。

【関連リンク】
La Folle Journee de Nantes
http://www.follejournee.fr
La Folle Journee de Nantes プログラム(PDF)
http://www.follejournee.fr/sites/default/files/fichiers/files/Brochure%20FJN16-09012016BD.pdf
Arte (コンサート動画を公開)
http://concert.arte.tv/fr/collections/la-folle-journee-de-nantes
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2016 「la nature」
http://www.lfj.jp/lfj_2016/

【JT関連リンク】
このライブ/このコンサート2015国内編#05
『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2015 – PASSIONS 恋と祈りといのちの音楽』
より、児玉麻里、児玉桃、酒井茜、エフゲニ・ポジャノフ、アルヴォ・ペルト他
http://archive.jazztokyo.org/best_cd_2015a/best_live_2015_local_05.html
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2015 – PASSIONS 恋と祈りといのちの音楽
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report817.html
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2014 「祝祭の日」
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report688.html
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report691.html
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2013 「パリ。至福の時」
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report533.html
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report528.html
東京JAZZ 2015
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report846.html
東京JAZZ 2014
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report739.html
東京JAZZ 2013
http://archive.jazztokyo.org/live_report/report581.html

 

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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