JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 37,610 回

Concerts/Live ShowsNo. 217

#887 Swing MASA 爆音JAZZ

2016年4月3日(日) 山谷労働者福祉会館

Report and photos by 齊藤聡 Akira Saito

Swing MASA (alto sax)

山谷(東京都台東区)は日雇い労働者の街である。ここで野宿者・失業者を支援する山谷労働者福祉会館において、大阪やニューヨークで活動するサックス奏者・Swing MASAのソロライヴが行われた。

会館の2階には、サポートに使うのであろう布団が積み上げられており、彼女は、その前でアルトサックスを吹いた。リハーサル時には軽く吹いていたMASAだが、本番になるとアルトの強度が突然増した。ときには足踏みをしながらアルト1本で、ときには打ち込みの音を操作してもらいながら。人好きのする彼女のトークと、渾身の演奏とに、誰もが惹かれてしまったに違いない。

語るところによれば、ニューヨークでジャズ修行をしていてサックス奏者リッキー・フォードに師事し、フォードがバンドに入っていたマル・ウォルドロンとも接し、またベース奏者レジー・ワークマンの勧めでニューヨークのニュー・スクールに入ったりもしている。

MASAの原動力には社会矛盾に対する憤りがある。労働者の抑圧への反発に加え、死刑廃止や脱原発を訴えるとともに、あちこちでアルトを吹き、語っているわけである。彼女のプレイから滲み出る情や音圧は、それとは無縁ではありえないだろう。

彼女はこのように言った。「私は、自分の存在自体がとてもマイノリティーだなと感じながら、サックスを吹いてきました。私が、反権力の思想をもつのは、ごく自然な成り行きでした。自分の放った音が、権力と闘う人達のエンパワメントになっていったらいいなと思います。救われない最後の一人に迄、寄り添える事ができたらと思います。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください