#934 NYC Winter JazzFest 2017

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2017.1.5-10 New York City

text by Hideo Kanno 神野秀雄
photo by Naomi Kitano 北野直弓 (表示がないもの)
Takehiko Tokiwa 常盤武彦 (クレジット表示があるもの)
Jati Lindsay (at ECM Stages, Andrew Cyrille and Donny McCaslin)

Subculture 45 Bleecker St NYC
1.6 19:20 Darcy James Argue’s Secret Society
Darcy James Argue (composer, conductor, ringleader)
Winds: Dave Pietro, Rob Wilkerson, Chris Speed, John Ellis, Carl Maraghi
Trumpets: Seneca Black, Jonathan Powell, Matt Holman, Nadje Noordhuis, Ingrid Jensen
Trombones: Mike Fahie, Ryan Keberle, Jacob Garchik, George Flynn
Sebastian Noelle (g), Carmen Staaf (p ), Matt Clohesy (b), Jon Wikan (ds)

 

(Le) Poisson Rouge. 158 Bleecker St.
1.6 21:00 Donny McCaslin Group
Donny McCaslin (sax), Jason Lindner (keyb), Mark Guiliana (ds), Nate Wood (b), Jeff Taylor (vo)


© Jati Lindsay

Bowery Ballroom (Revive Music stage) 6 Delancey Street NYC
1.6 21:40  Isaiah Sharkey
Isaiah Sharkey (g, vo) William Baggett (b) Eric Johnson (ds)

 

Nublu 151 Avenue C
1.6 22:00 Kendrick Scott Oracle
Kendrick Scott (ds), John Ellis (sax), Mike Moreno (g) 他

 

Subculture. 45 Bleecker St NYC
1.6 23:20 Kneebody
Adam Benjamin (keyb), Shane Endsley (tp), Ben Wendel (ts), Kaveh Rastegar (b), Nate Wood (ds)

©Takehiko Tokiwa

SOBs 204 Varick Street NYC
1.6 23:00 Steven Bernstein’s Universal Melody Brass Band
Steven Bernstein (tp, slide tp), Frank London (tp), Oscar Noriega (sax), Matt Darriau (sax), Arthur Baron –(tb), Curtis Fowlkes (tb), Marcus Rojas (tuba), Billy Martin (ds)

SOBs. 204 Varick Street NYC
1.6 24:20 Zig Zag Trio
Will Calhoun (ds), Vernon Reid (g), Melvin Gibbs (b)

 

「ECM Stage」 2017.1.7 18:00-
Tishman Auditorium, The New School of Jazz and Contemporary Music. 63 5th Ave, New York

18:00 Michael Formanek Quartet feat.
Michael Formanek (b) Tim Berne (as)  Craig Taborn (p) Gerald Cleaver (ds)
※Thomas Stanko New York Quartetより変更

19:20 Jakob Bro / Thomas Morgan / Joey Baron
Jakob Bro (g)  Thomas Morgan (b)  Joey Baron (ds)

参考ビデオ (Jacob Bro Music)

20:40 Ravi Coltrane / David Virelles Duo
Ravi Coltrane (ts, ss) / David Virelles (p)

22:00 Bill Frisell / Thomas Morgan Duo
Bill Frisell (g)  Thomas Morgan (b)

23:20 Nik Bärtsch’s Mobile
Nik Bärtsch (p ), Sha (bcl, contrabass-cl), Kaspar Rast (ds, perc), Nicolas Stocker (ds, tuned perc), 
Daneil Eaton (light)

参考ビデオ(ECM Records)

(Le) Poisson Rouge. 158 Bleecker St.
1.5 Pharoah Sanders Quartet with Ravi Coltrane
Pharaoh Sanders (ts), William Henderson (p), Dezron Douglas (b), Johnathan Blake (ds), Ravi Coltrane (ts, ss)

(Le) Poisson Rouge. 158 Bleecker St.
1.9 Artist in Residence – Andrew Cyrille Solo + Sam Amidon Extended

Andrew Cyrille (ds) Sam Amidon (strings), Shahzad Ismaily (b), Ben Goldberg (cl), Jemmy Gustin (ds)
Marc Ribot (g), Kris Bowers (keyb), Richard Sears (p) Curtis Fowlkes (tb) Sam Gendel (sax), Linda Oh (b)

 

(Le) Poisson Rouge. 158 Bleecker St.
1.10 20:00 Charlie Haden’s Liberation Music Orchestra with special guest Geri Allen

Geri Allen (p ), Tony Malaby (ts), Chris Cheek (ts), Loren Stillman (as), Michael Rodriguez (tp), Seneca Black (tp), Vincent Chancey (french horn), Curtis Fowlkes (tb), Earl McIntyre (tuba), Steve Cardenas (g), Darek Oles (b), Rodney Green (ds) Carla Brey (arranger)

 

「NYC Winter JazzFest」は、新年のニューヨークで、ヴィレッジを中心に多数の会場を結んで開催されるジャズ・フェスティバルで、13回目を迎える2017年は、1月5日(木)〜10日(火)に開催された。中心となるのは、2017年1月6日(金)、7日(土)の2夜に行われるライヴ・マラソンで、約150バンド、ミュージシャン計約600人を1日45ドル、2日80ドル(いずれも前売の場合)で見放題となる。ニューヨークの最先端かつ多様な音楽を見事に切り取り、地元のミュージシャン同士がお互いに聴き合い切磋琢磨する姿も見え、”現在進行形のジャズ”を追う上で、世界で最も価値があり、最もお得なジャズ・フェスティバルと言える。

私は、2016年にはThe New School of Jazz and Contemporary Music(ニュースクール大学と略)のティシュマンズ・オーディトリアムの「ECM Stage」に二日間貼り付いたが、2017年は、ニューヨーク在住でこの界隈を庭とするフォト・ジャーナリスト常盤武彦氏とともに多くの会場を体験することを心がけた。行動を共にしながら、常盤氏のニューヨーク・ジャズシーンで培った深過ぎる人脈と情報力に感嘆するとともに、貴重な写真をご提供いただいたことを深く感謝したい。

1917年生まれのピアニスト、「セロニアス・モンク生誕100年」もテーマに掲げられスペシャル・コンサートも行われた。その関連もあり、また『Max Roach / We Insist』も象徴としながら、2017年は、社会正義と人種差別との闘いにもフォーカスし、その無料トークセッションも開催された。最終日には、チャーリー・ヘイデンの創設したリベレーション・ミュージック・オーケストラもあった。”ニューヨーカーとして、アメリカ国民として、世界市民として”、アメリカが直面している状況を危惧し、過去の闘いを振り返り、正義を訴える機会とするという。これは明らかにトランプ大統領就任に向けての牽制と考えられる。さまざまな差別を克服し、他国からのミュージシャンを受け入れ、多様性とグローバリズムの中で拡張して来たジャズは、トランプ政権とは相容れるのは難しいかも知れない。ビル・クリントン元大統領は、自らサックスでジャズを演奏していたし、2016年4月30日のインターナショナル・ジャズ・デイには、グローバル・コンサートをオバマ前大統領夫妻がホストし、ホワイトハウスで開催した (日本からは渡辺貞夫が招聘された) ことは長く記憶されよう。他方、人種や国籍を乗り越え、社会的闘いとともに拡張したアメリカ音楽が、工業製品に比べても、他の追従を許さない圧倒的なアメリカの輸出商品となっていることは皮肉であり、かつとても素晴らしいことだ。

2016年から始まった「ECM Stage」は、昨年同様、フェス最大の会場であるニュースクール大学ティシュマンズ・オーディトリアムで開催された。昨年の2夜連続に比べ、今年は1夜限りではあるものの、ECMの大切なルーツとしてのニューヨークへのこだわりと、ニューヨークのジャズファンからECMへの変わらぬ関心の高さを印象づけた。なお、会場を提供するニュースクール大学は、早い時期からジャズ教育を行っては来たが、特に近年、ブラッド・メルドー、ロバート・グラスパー、アヴィシャイ・コーエン、黒田卓也など、現代ジャズシーンを牽引し強い影響力を持つ人材を輩出する注目の大学だ。2016年、初の「ECM Stage」にあたり、ECMプロデューサーのマンフレート・アイヒャーが、ECMのアメリカへの想いを語るビデオをご参照されたい。

アーチスト・イン・レジデンスは、ドラマーのアンドリュー・シリル。彼の最新アルバム『Andrew Cyrille Quartet / The Declaration of Musical Independence』もECMだ。本誌では悠雅彦氏、及川公生氏がレヴューしているのをご参照いただきたい。(ル)ポワソン・ルージュでのステージでは、ドラムソロに加え、サム・アミドン・エクステンディッド+アンドリュー・シリルの演奏があり、先頃パット・メセニーのカルテットで来日したベーシストのリンダ・オーとも共演している。

フェスティバルのオープニングとクロージングを飾った、ファラオ・サンダース・カルテット+ラヴィ・コルトレーン、ジェリ・アレンの参加したチャーリー・へイデン・リベレーション・ミュージック・オーケストラについても、常盤武彦氏の写真で紹介させていただく。

矢野顕子も「SONGS」で、「ニューヨークだけ全然違う存在なんですね。で、この街が持つ、ものを作る心を励ます力って、それを味わうとそれ無しではいられない...『ほら、次に何作るんだ』と街から問われるような状況が好きですね。」と語っていたが、それと関連するように、厳冬のニューヨークにあって、NYC Winter JazzFest だけが持つ独特の熱さと密度の濃さは世界中の他のジャズフェスの追随を許さない。将来の音楽を見通すためにも、また身も蓋もないお得感も含めて、日本のミュージシャン、業界関係者、リスナーにぜひ来訪をご検討いただきたいと思う。少なくともその年のプログラムが、”現在進行形のジャズ”を含めニューヨーク・ジャズシーンの貴重なカタログとして使えるということを記憶に留めていただけたら幸いだ。

※各メンバーリストは、プログラムの表記を参考にしており、実際は異なることもあることをご了承いただきたい。

【関連リンク】

Winter Jazz Fest 2017
http://www.winterjazzfest.com/

2016年のECM Stage – ECM 公式YouTube

Manfred Eicher on ECM, America and Winter Jazz Fest

Andrew Cyrille Quartet / The Declaration of Musical Independence – ECM Player
http://player.ecmrecords.com/cyrille-2430

International Jazz Day
http://jazzday.com/

【JT関連リンク】

Winter JazzFest 2016 – ECM Stage
http://jazztokyo.org/reviews/live-report/

Winter JazzFest 2016 – Shai Maestro Trio
http://jazztokyo.org/reviews/live-report/

『Andrew Cyrille Quartet / The Declaration of Musical Independence』
http://jazztokyo.org/reviews/cd-dvd-review/post-10198/
http://jazztokyo.org/reviews/kimio-oikawa-reviews/post-10027/

Pat Metheny with Antonio Sanchez, Linda Oh & Gwilym Simcock
http://jazztokyo.org/reviews/live-report/post-4216/

Charlie Haden “A Memorial and Celebration of His Life”
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report776.html

International Jazz Day Global Concert 2014 Osaka
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report686.html

 

北野直弓 Naomi Kitano
東京都出身。バンクーバーを経てニューヨーク在住。大学でビジネスを学びながら、音楽、ブロードウェイ・ミュージカル、アートを定点観測中。写真も修行中で、常盤武彦氏に”師事”という名の撮影時荷物番を務める。

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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