#920 Steps Ahead meets Soul Bop
ステップス・アヘッド meets ソウル・バップ

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2016.9.30 21:00 Blue Note Tokyo ブルーノート東京
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Yuka Yamaji 山路ゆか

Mike Mainieri (vib), Randy Brecker (tp), Bill Evans (ts, ss, Fender Rhodes),
Tom Kennedy (b, elb), Steve Smith (ds)

1. Tee Bag
2. Pools
3. Inside Out
4. Bullet Train
5. Soul Bap
6. Soul Eyes
7. Young and Fine
8. Some Skunk Funk


 

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当時ブレッカー兄弟がオーナーだったニューヨークのジャズクラブ「セブンス・アヴェニュー・サウス」で生まれたステップスが、「六本木ピットイン」ライブを行ったのが1979年12月15日〜16日。ライヴ盤『Smokin’ in the Pit』、12月17日にスタジオ盤『Step by Step』が録音され、日本のジャズを演奏する層にも驚きをもって迎えられた。オリジナルメンバーは、リーダーのマイク・マイニエリに加え、ドン・グロルニック(p)、マイケル・ブレッカー(ts)、エディ・ゴメス(b)、スティーヴ・ガッド(ds)。時代はフュージョン全盛期、アコースティックなフォービートジャズにも惹かれながら、両者を埋めることができていなかった乖離と不安にストレートに答えを出してくれたのがステップスだった。同時期にマイケルが参加したパット・メセニー『80/81』がある。このふたつからマイケルのリーダー活動へ結実して行くことにもなる。余談だが、ノーマ・ウィンストン・トリオのピアニスト、グラウコ・ヴェニエルも当時イタリアで10倍の値段で『Smokin’ Pit』を買ってかなり聴き込んだそうで、その”ピットイン”で演奏することに特別な意味を感じているようだった。

今回、オリジナル・ステップスからの選曲が中心となった。『Smokin’ in the Pit』1曲目<Tee Bag>のリラックスしたメロディーからのオープニングは、当時のファンにはアルバムを聴くわくわく感が甦ったと思う。<Pools>もドン作曲だからオリジナル・ステップスと考えてよいだろう。(1982年にステップス・アヘッドに改名)

2016年7月〜8月のヨーロッパツアーは、イリアーヌ・イリアス(p)、マーク・ジョンソン(b)、ドニー・マッキャスリン(sax)、ビリー・キルソン(ds)であり、昨年のブルーノート東京に近く、他方、ディヴィッド・ボウイの最終録音に立ち会ったドニーの注目度は高い。今回のビル・エヴァンス、トム・ケネディ、スティーヴ・スミスというのは別の流れ、ドイツのマイケル・アベーネ指揮、WDRビッグ・バンド・ケルンと共演し、『Steppin’ Out』を録音したメンバーであり、チャック・ローブ(g)が抜けているのが残念。ARTEがインターネットで「Steps Ahead Meets WDR Big Band Köln」コンサート全編の動画を公開しているのでぜひご覧いただきたい。(http://concert.arte.tv/fr/steps-ahead-wdr-big-band) ステップス・アヘッドのビッグ・バンド・サウンドへの拡張としては、エリック・ミヤシロがブルーノート東京・オールスター・ジャズ・オーケストラで取り組み、ブラスアレンジの妙を聴かせてくれる。<Trains>をテーマ曲にしているぐらいだ。マイク・マイニエリ、マイケル・アベーネ、エリック・ミヤシロはバディ・リッチ同窓生という共通点があるらしい。

今回の編成による演奏は期待していた以上に素晴らしかった。サウンドとしての完成度が高く気持ちよく聴けた。トム・ケネディの緻密でグルーヴするベースに、ジャーニーでも活躍するスティーヴ・スミスの繊細かつパワフルなドラムス。マイケル・ブレッカーと比較せざるを得ないサックスにビル・エヴァンスは最適任のひとりで、マイケルに比べれば淡白な印象はあるものの素晴らしいサックスソロを聴かせてくれる。ビル・エヴァンスのピアノを生で見れた(フェンダーローズだけど)。そしてマイク・マイニエリもコンディションがよく、研ぎ澄まされたヴァイヴの音に酔った。ランディー・ブレッカーがくせ者で、ぼーっとしてるようにも見せかけながら、ここぞというところでかっこいいフレーズを入れスタープレーヤーしての貫禄を見せる。<Bullet Train>は、大好きな1曲だがライヴで初めて聴くことができたし、まさかマル・ウォルドロンの<Soul Eyes>までやるとは。

ソウル・バップ・バンドは、2004年結成、ランディー、ビル、スティーヴ、そして、ハイラム・ブロック、ヴィクター・ベイリー、デヴィッド・キコスキーがオリジナルメンバー。今回はビルのオリジナル<So Bop>、そしてブレッカー・ブラザーズから<Inside Out>、<Some Skunk Funk>。キャッチーで構造的にもよくできたおなじみの名曲だけに期待を裏切らない。ビル・エヴァンス付きステップス・アヘッドに、ランディー・ブレッカーも添えて、ついでにソウル・バップ・バンドの方もというのが今回の成り立ちだけど、ソウル・バップの演奏もすごくよかったとはいえ、バンドの方向性やサウンドがぼんやりする感じはあり、1時間半という限られた時間には、ステップス・アヘッドならステップス・アヘッドに、あるいはその逆に集中した方がよい気がした。ランディーにはリーダーバンドの場をきっちり用意した方がハッピーのような気がする。2014年川崎でのアダ・ロヴァッティ(ts)を擁したブレッカー・ブラザーズ・リユニオンには新鮮な感動があった。あるいは、マイニエリとランディーならではの演奏としては、『Steppin’ Out』にも収録された<Blue Montreux>あたりをやってみたら特別感が出たと思う。あと『Alista All Stars / Blue Montruex』で演奏された<Rocks>とか。

マイク・マイニエリは78歳、ステップス・アヘッドはメンツが流動的、自在なのがかえって吉と出て、懐メロに終わることなく、毎回新鮮な感動がある。その中でのオリジナル・ステップスの名曲の演奏を温故知新で聴けたのは非常に貴重だった。これからもステップス・アヘッドの来日公演を楽しみにして行きたい。

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【関連リンク】
Steps Ahead Meets WDR Big Band Köln (Arrangeur :
Michael Abene)
Mike Mainieri, Chuck Loeb, Bill Evans, Tom Kennedy, Steve Smith
http://concert.arte.tv/fr/steps-ahead-wdr-big-band

Mike Mainieri
http://nycrecords.com

Randy Brecker
http://randybrecker.com

Bill Evans
http://www.billevanssax.com

Tom Kennedy
http://www.tomkennedymusic.com

Steve Smith
http://www.vitalinformation.com

【JT関連リンク】
Steps Ahead at Blue Note Tokyo, 2015
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report786.html

Montreux Jazz Festival 2014 Japan Day
Blue Note Tokyo All Star Jazz Orchestra directed by Eric Miyashiro
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report728.html

東京JAZZ 2014
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report739.html

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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