#931 THE NECKS – 30th Anniversary 初来日ツアー 東京公演

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Reported by 剛田 武 Takeshi Goda

Photos by 齊藤聡 Akira Saito, except where noted

2016年12月14日(水)開場7:00PM/開演8:00PM 渋谷WWW X

Chris Abrahams (p)
Tony Buck (ds)
Lloyd Swanton (b)

アヴァンギャルドにして和み系、豪州の不可知な音楽集団の啓かれた魂。

オーストラリアでクリス・エイブラムズ(p)、トニー・バック(ds)、ロイド・スワントン(b)によってザ・ネックス The Necksが結成されてから30年。ジャズ、アヴァンギャルド、ミニマル、トランス、アンビエントなどの境界を超えたインプロの最前線を行くバンドとして世界中に数多くのファンを持つ。メンバーのトニー・バックは90年代の一時期日本に滞在していたので、大友良英などと共演していたことを記憶しているファンもいるだろう。現在30周年記念ヨーロッパ・ツアー中だが、急遽待望の日本ツアーが決定した!(JazzTokyoNewsより)

オーストラリアの音楽シーン、特にジャズや即興音楽については明るくないが、実際に見聞きして驚かされることが往々にしてある。筆者が知る中では、毎年のように来日して灰野敬二やジム・オルークと共演するオーレン・アンバーチが筆頭格。ヨーロッパに住みグローバルに活動する彼をオーストラリア代表ということはできないが、ギタリスト/ノイジシャン/即興ドラマーと多面性を持つユニークな演奏スタイルを育んだのが、豪州独自の音楽シーンであることは間違いない。他にも前衛音楽/実験音楽家が少なからず存在することは想像できるが、実際にそれを体験できる機会は多くはない。そんなことを考えていた矢先に、シドニーを拠点に30年間独自の音楽活動を続けるピアノ・トリオTHE NECKSの初来日ツアーが決定した。招聘元は東京JAZZも手掛ける㈱NHKエンタープライズ。来年から渋谷で開催されることが発表になった東京ジャズの前哨戦としてこの変態音楽コンボを招聘したのだとしたら頼もしい。

勉強不足で聴いたことがなかった筆者は、来日の報を知ってからネットをググり、1曲30分以上の長尺でしかも殆ど変化のないドローンサウンドに「一体此れは何?」という疑問が沸々と沸いてきて、怖いもの観たさで駆けつけることにした。実のところ、一般的には無名に近い豪州の偏屈バンドの日本公演を、コアな音楽ファンが集まる新宿ピットインうあ六本木スーパーデラックスならまだしも、筆者にとってはアイドルイベントで馴染深いキャパ700人の一般ライヴハウスで行うとは、果たして大丈夫か?との不安があったのも確か。しかし蓋を開けてみれば、丸椅子を並べて着席ではあったものの、ほぼ満席の盛況ぶり。年季の入った愛好家はもちろん、ジャズに縁がなさそうな若いファンやこの界隈では有名なミュージシャンの姿も多い。筆者の予想を超えて幅広い音楽ファンが彼らの来日を待ち望んでいたようだ。

45分×2セットのステージは、初めて観る豪州変態音楽の衝撃と可能性を強く感じさせる夢見心地の体験だった。お互いの演奏やフレーズに追従しない素振りをして、思い思いに反復フレーズを繰り返す。ドラマーは普通にビートを刻むことはなく、様々なパーカッションや玩具を使ったエフェクト音をミックスする。秀逸な音響システムから流れ出すサウンドスケープは、自然界の営みを想起させ、最小限のライティングが相俟って醸し出すイマジネーションの妙に陶酔した。「サザナミのように広がる音の波紋」と形容される三者の音のレイヤーは、筆者にとってはポストロックやシューゲイザーと呼ばれる一群のポピュラー音楽アーティストが得意とする、静から動へのメタモルフォーゼと同質のダイナミズムを感じさせた。ミニマル音楽の付和雷同ではなく、孤独な音楽家の魂の不安定な輝きが絡まり合って、既存のアンサンブルを超えた超現実的な人の絆の在り方として、南十字星の下で光り輝いている。

ここまで書いたレポートを読み返してみて、彼らをカンガルーやコアラのように珍獣扱いしている自分の凝り固まった偏見意識に気付かされた。己に対する戒めとして書き直さないことにする。自由な音楽を体験するためには、より開かれた魂を身に宿さなければならない。豪州トリオを観てそれに気付いたことは、文字通り「啓蒙」ならぬ「啓”豪”」であろう。

(2016年12月26日記 剛田武)

 

 

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剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

2 thoughts on “#931 THE NECKS – 30th Anniversary 初来日ツアー 東京公演

  • 編集部
    2017年1月7日 at 10:30 AM
    Permalink

    トニー・バックはオーストラリア人ですが長くベルリンに住んでいます。ピアニストで内部奏法を駆使した演奏で知られるマグダ・マヤスなどとのプロジェクトで欧州即興シーンでも活躍しています。

    Reply
    • 剛田武
      2017年1月7日 at 11:47 AM
      Permalink

      ご指摘ありがとうございました。井の中の蛙ではなく、国際的な視野を持った演奏家なのですね。

      Reply

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