#949 映画『Chasing Trane, The John Coltrane Documentary』

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Naomi Kitano 北野直弓 (クレジットのあるものを除く)


Photo by Francis Wolff

左 John Coltrane Photo By Chuck Stewart, featured in CHASING TRANE The John Coltrane Documentary, by director John Scheinfeld

右John Coltrane By Don Schlitten, featured in CHASING TRANE The John Coltrane Documentary, by director John Scheinfeld

 

 

 

Director / Writer: John Scheinfeld
Denzel Washington (as John Coltrane’s voice),
Antonia Andrews (stepdaughter), President Bill Clinton, Michelle Coltrane (stepdaughter)
Oran Coltrane (son), Ravi Coltrane (son), Common (Academy Award®-winning composer, hip-hop artist)
John Densmore (drummer, The Doors), Yasuhiro Fujioka (#1 collector of Coltrane memorabilia in the world), Nagaharu Fukushima (Japanese radio personality), Benny Golson (saxophonist/Coltrane friend)
Jimmy Heath (saxophonist/Coltrane friend), Ashley Kahn (Coltrane biographer), Wynton Marsalis (artistic director, Jazz at Lincoln Center), Lewis Porter (Coltrane biographer), Ben Ratliff (music critic, The New York Times), Sonny Rollins (saxophonist/Coltrane friend), Carlos Santana (legendary guitarist), Wayne Shorter (saxophonist/Coltrane friend), McCoy Tyner (pianist/Coltrane friend), Kamasi Washington (saxophonist)
Dr. Cornel West (philosopher), Reggie Workman (bass player/Coltrane friend)

ジョン・コルトレーン(1926年9月23日〜1967年7月17日)の初の本格的な伝記映画となる『Chasing Trane』が、2017年4月14日に公開された。最初の上映館はニューヨーク・ブルーノート近くのIFCセンター。今後、アメリカ国内で順次公開される。写真は15日に劇場に現れた監督ジョン・シャインフェルドとコルトレーンの親友ベニー・ゴルソンで、上映後にQ & Aセッションが行われた。監督は、ジョン・レノン、オノ・ヨーコとアメリカ政府の闘いを描く『The U.S. v.s. John Lennon』(2007)、シンガー・ソングライター、ハリー・ニルソンを描いた『Who Is Harry Nilsson (And Why Is Everybody Talkin’ About Him)』(2017)など、ジャズに留まらずミュージシャンの”人”を追った映画を制作してきた。

映画は、貴重なライブ映像と、ミュージシャン、家族、友人たちのインタビューで構成されている。コルトレーンのインタビュー映像・音声はほとんどなく、他方、テキストとしては言葉やインタビューが多数残されているため、デンゼル・ワシントンに声の出演を申し入れ、快諾を得た。アメリカ大統領が”黒人ミュージシャン”を語るのも象徴的であり、オバマ大統領が国際ジャズディ・グローバル・コンサートをホワイトハウスで開催したことにもつながる。新世代では、カマシ・ワシントンがコメントするが、私もサックス吹きのはしくれとしては、マイケル・ブレッカー、ヤン・ガルバレク、クリス・ポッターなどコルトレーンに直接影響を受けた世代のサックスプレーヤーのコメントもきいてみたかったが、もちろん本人と時代を共にした人々を優先するのはドキュメンタリーとして当然だ。

こうして構築された映画で、生い立ちから、チャリー・パーカー、ディジー・ガレスピーやマイルス・デイヴィスとの出会いをはじめ、コルトレーンの人生の大きな流れや転機、それを取り巻く環境や人々など、文字通り「トレーンを追う」ことができる。来日ツアーでのシーンもあり、日本のファンには特別な感情を持ってみることができるだろう。

とはいえ、39歳で来日後、40歳で短い生涯を終えたコルトレーンが、”聖者” に向かって突き進む中での、苦悩、葛藤や、レコード会社を含む周囲の無理解や軋轢、無念な想いは描き切れていない、いや敢えて踏み込まず、晩年を美しく描き切った気がした。ここが ”悲しくてやり切れない” 映画『JACO』との大きな違いとなっている。それは、描き方の善し悪しではなく、時を経て評価を確かなものにしたコルトレーンの存在と音楽と、天才でありながら壊れていった変人と認識されるジャコ・パストリアスの差はあるのだろう。また人を描くか音楽を描くかのバランスにもよる。

コルトレーン研究の世界的第一人者のひとりで、世界最大のコルトレーン関連コレクションを持つ藤岡靖洋も登場する。藤岡の講演「ジョン・コルトレーンの真実」を慶應義塾大学アートセンター「拡張するジャズ」で聴く機会があったが、映画以上にコルトレーンの苦悩、周囲の無理解、来日ツアーでのできごとなどを含め、楽しく重たく切なく伝わった。日本公開の折りには藤岡の講演や著書をあわせて参照されることをお勧めしたい。また別途、ジャズ理論的な視点からの解説の機会もあるとむしろ分りやすいかも知れない。

今年、ジョン・コルトレーン没後50年を迎えるが、10代〜20代から見ればあまりにも遠い距離であり、しかしあらゆるジャズ、さまざまな音楽の隅々にその存在が息づく。IFCセンターには、いまどきのロックバンドDNCEのベーシスト、コール・ウィットルも見に来ていてInstagramに「あなたが音楽を愛し、音楽に生きているなら、『Chasing Trane』を必ず見るべきだ。」と書いていた。『Chasing Trane』にしても、『JACO』や『パコ・デ・ルシア〜灼熱のギタリスト』にしても、その直接のファン以上に、いやジャズ・ファンですらなくても、学生や若い世代にこそ見ていただいて、スタイルを問わず、音楽に真摯に向き合うこと、オリジナルであり続け、存在しない音を見つけ切り拓いて行くことの苦悩と歓びをぜひ感じてもらいたいと思う。

【関連リンク】

Chasing Trane, The John Coltrane Documentary
http://www.coltranefilm.com

コルトレーン ハウス(藤岡靖洋)
http://blog.livedoor.jp/coltranehouse/

慶應義塾大学アート・センター「拡張するジャズ」公開研究会 藤岡靖洋「コルトレーンの真実」
(モデレータ:中川ヨウ、企画:粂川麻里生、慶應義塾大学アート・センター 油井正一アーカイヴ)
http://peatix.com/event/200493?lang=ja

【JT関連リンク】

映画『JACO』
http://jazztokyo.org/reviews/live-report/post-11347/

映画『パコ・デ・ルシア〜灼熱のギタリスト』
http://jazztokyo.org/news/post-12227/

【追記】 藤岡靖洋 大学関連 講演予定
東京大学教養学部 (駒場キャンパス) 2017年11月16日(木)17:00~
「ジョン・コルトレーン没後50周年-生命の鼓動と音のかたち」
立命館大学 平和教育研究センター 2017年12月1日(金) 15:00~(予定)
「平和人権(連続)講演会」仮題「ジョン・コルトレーン:平和と人権」
※全予定を網羅したわけではなく、国内大学関連より一部抜粋


北野直弓 Naomi Kitano東京都出身。
バンクーバーを経てニューヨーク在住。大学でビジネスを学びながら、音楽、ブロードウェイ・ミュージカル、アートを定点観測中。写真を修行中で、常盤武彦氏に ”師事” という名の撮影時荷物番を務めたことも。

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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