#993 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017〜ラ・ダンス 舞曲の祭典
La Folle Journée au Japon 2017 – La Dance

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2017.5.4-6 東京国際フォーラム Tokyo International Forum
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Team Miura チーム三浦
Courtesy of Tokyo International Forum 東京国際フォーラム

ゴールデンウィークの東京国際フォーラムで開催されてきた「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」。2005年からの10回は作曲家にフォーカスし、2015年からの4回はテーマを決めて、「Passion」「Le nature」ときて、2017年「La Dance〜舞曲の祭典」、2018年「Exile」(後に「Un Monde Nouveau」に改題)。太古より人が踊るところにはいつも音楽が奏でられ、最も原初的な表現行為であるダンスは、常に音楽とともに民衆の中から生まれ、ごく早い時期からクラシック音楽に影響を与えてきたとし、ルネッサンスから今日までの600年にわたるダンスと音楽の密接な関係をたどるというのが「La Dance」だ。

2017.5.2 19:30-20:00 丸ビル1階「マルキューブ」—丸ノ内エリアコンサート
テンベンベ Tembembe Ensamble Continuo

2017年は東京国際フォーラムでは前日のプレイベントがなく、恒例の「みんなでボレロ」のような参加型イベントもなく寂しかった。丸の内の日常と祭を繋ぎ、アマチュアやリスナーから繋がる有効な装置になっていたのでぜひ復活して欲しい。他方、これまで通り、丸ビル、新丸ビルを始め、丸の内エリアのイベントスペースで数々のコンサートが行われた。GW前最後の平日夜の丸ビルでのテンベンベのミニコンサートに、アーティスティック・プロデューサーのルネ・マルタンが登場しLFJの魅力について語った。
ルネがメキシコから招聘したアンサンブル、テンベンベは、1995年に結成され、バロック・ギターを用いながら、ヨーロッパ・バロック音楽と、インディオ起源のメキシコ音楽、ラテンアメリカのサウンドの融合をはかる独創的なアプローチで注目を集めている。独特の楽器をたくさん持ち込んでいるが、左から二番目のカホンにカリンバ(アフリカの指ピアノ)を合体したような、座って低音を奏でる楽器「マリンボル」に注目。リーダーのレオポルドのお手製と言う。

#142 2017.5.4 11:45-12:45 Hall C
シェナ・ウインド・オーケストラ Sienna Wind Orchestra
中村睦夫 Mutsuo Nakamura (conductor)
挾間美帆 Miho Hazama (conductor, composer)

ファリャ:火祭りの踊り
De Falla: Danza ritual del fuego
ウィーラン:リバーダンス
Whelan: River Dance
リード:アルメニアン・ダンス Part 1
Reed: Armenian Dances Part 1
1 杏の木 The Apricot Tree
2 ヤマウズラの歌 The Part
3 おーい、僕のナザン Hoy, Nazan Eem
4 アラギャズ山 Alagyaz
5 行け、行け Gna, Gna
挾間美帆:組曲「The Dance」(日本初演)
Miho Hazama: Suite “The Dance”(Japan Premier)
1 鼓舞 Warrier (inspired by Adumu)
2 収穫 Harvest (inspired by Mazurek or Yanggewu dance)
3 抵抗 Resistance (inspired by Tap dance)
4 儀式 Ceremony (inspired by Sufism dance)
5 自由 Freedom (inspired by contemporary dance)

日本の中学高校における吹奏楽部の特別な存在、吹奏楽経験人口の多さから、LFJでも管楽器、吹奏楽が入口としてとても大切と言う釈迦に説法をルネにしたことがあり、今回、シェナ・ウインド・オーケストラの参加、そしてアルフレッド・リード<アルメニアン・ダンス Part 1>が取り上げられたのは嬉しかった。吹奏楽として作曲された名曲だけに、管打楽器ならではの壮大な響きと躍動感に圧倒され、シェナの実力を魅せる。他方、ファリャ<火祭りの踊り>では楽器の特性上、管弦楽の切れには負けることが見えた気がした。ウィーラン<リバーダンス>は、1995年に発表されたアイルランドのケルト系ダンス音楽で、吹奏楽で取り上げられることが多い。なお、最近ゲーム音楽を吹奏楽やビッグバンドで演奏する機会が増えたが、ケルトミュージックのイディオムを取り入れた曲が多数見受けられる。

LFJ2017最大のサプライズは、”ジャズ作曲家”挾間美帆の初出演。2月14日「ルネ・マルタンのトークサロン」でスクリーンにバルトークらとともに挾間の名前が出た瞬間の衝撃は忘れられない。挾間は子供の頃からLFJによく連れて来られてたくさんのコンサートを楽しみ、イジー・ヴォトルバによる当初のイラストも気に入っていたと言っていた。LFJにいつか関わりたいと思っていたところ、テーマがダンスと知って、組曲「The Dance」の企画書をルネに送り採用されたと言う。
組曲「The Dance」は2017年3月17日〜18日にニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル・バレリーナ、アシュリー・ボーダーのプロジェクトと、ニューヨーク・ジャズ・ハーモニックにより、バレエとビッグバンドで初演された作品の吹奏楽版となる。バレエ&ビッグバンド版では、ドラム1人で担っていた部分を、吹奏楽版では全体の人数が大きいだけに打楽器担当3人に分けることでアンサンブルのバランスを取っている。また、各ソロはその場でのアドリブではなく、譜面に書かれている。古代からさまざまな目的で踊られて来た”ダンス”にスポットを当て、それぞれの民族的文化を真似するのではなく、それぞれの音楽的・ダンス的特徴からインスピレーションから新たに創造した作品。当日、挾間がシェナのコンポーザー・イン・レジデンスに就任したことが発表された。期間や作品数が明確に規定された契約ではなく、長期間にわたって共同作業を行って行くということなので楽しみだ。
そして、挾間とLFJの、挾間とクラシックワールドとの繋がりはシェナに限られない。すでにいくつも管弦楽への作編曲も行っているが、計算され洗練された美しさを魅せながら、強力なグルーヴを持ち続ける挾間の音楽にはオンリーワンの魅力があり、音楽の歓びをダイレクトに伝えている。LFJヘの今後の取り組みとしては、シンフォニックジャズ的なものにフォーカスすることにはなるだろう。即興性と言う議論をさておいても、ジャズの創って来たグルーヴと世界観をクラシックオーケストラで本質的に表現できる作品は、<ラプソディ・イン・ブルー>とレナード・バーンスタインを別格として未だ存在できていない。挾間はそこに少しづつでも近づいて行ける特別な作曲家であると期待していて、ナントを含むLFJをその場として飛躍して行くことを楽しみにしたい。

Ashley Bouder & New York Jazz Harmonic – Miho Hazama

2017.5.4 17:50-18:10 Hall E Kiosk Stage
アントニア・コントレーラス Antonio Contreras (vo)
フアン・ラモン・カロ Juan Ramón Caro (gt)

アンダルシア・マラガ出身のフラメンコ歌手アントニア・コントラーレスは、#147でファリャ<恋は魔術師>をオーケストラと共演するため来日したが、こちらは地下のホールEキオスクステージでのサプライズコンサートで、本公演にない本格的なフラメンコ演奏が無料で予告なしに、それも素晴らしいギタリスト、アン・ラモン・カロとのデュオで聴けてしまうところは侮れない。このパターンはワールドミュージック系に多く、公演が重なって行けずに諦めたものが見られたりするので来年以降も要チェックだ。

#137 2017.5.4 21:00-21:50 Hall B5
竹澤恭子 Kyoko Takezawa (Vn)、児玉 桃 Momo Kodama (pf)

ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲
バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番 Sz.75
クライスラー:ウィーン奇想曲
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
De Falla/Kreisler : Spanish Dance
Bartók : Sonata for Violin and Piano no.1 Sz.75
Kreisler : Caprice Viennois
Bartók : Romanian Folk Dances

パリを拠点に世界で活躍する竹澤と児玉桃はデュオでの演奏を続けており、日本でも聴く機会が多い。児玉はマンフレート・アイヒャーに認められた数少ない日本人演奏家で、2013年の『La vallée des cloches』(ECM NS2343)に続いて、2017年1月にドビュッシーと細川俊夫のエチュードを再構築した『Point and Line』(ECM NS2509)をリリースしたばかり。竹澤は、小澤征爾の初グラミー受賞作となった『小澤征爾指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ/ラヴェル こどもと魔法』で奇しくも初サイトウ・キネン、初オペラで、初コンミスを務めていた。
ファリャの歌劇『はかなき人生』第二幕からクライスラーが編曲した<スペイン舞曲>からはじまり、バルトークの<ヴァイオリン・ソナタ 第1番>へ。児玉桃の力強いタッチで美しく鳴るピアノの上で、竹澤の哀愁と躍動感を兼ね備えたヴァイオリンのフレーズが紡ぎ出されていた。

#116 2017.5.4 21:45-22:30 Hall A
フランス国立ロワール管弦楽団 Orchestre National des Pays de la Loire
パスカル・ロフェ指揮 Pascal Rophé (conductor)
小曽根真 Makoto Ozone (pf)
エリック・ミヤシロ Eric Miyashiro (tp、flgh、piccollo-tp)

ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)Stravinsky : The Firebird suite (1919 ver.)
ラヴェル:ボレロ(小曽根スペシャル)Ravel: Bolero (Ozone Special)

LFJ2017で最も盛り上がった「熱狂の瞬間」が、小曽根真によるラヴェル<ボレロ>だった。ラヴェルでインプロヴィゼーションを行うアイデアは、マエストロ・エドウィン・アウトウォーターとのコラボレーションで、2014年7月5日にサンフランシスコ交響楽団で<ボレロ>と<亡き王女のためのパヴァーヌ>が初演されている。<亡き王女のためのパヴァーヌ>は、アラン・ギルバート指揮、ニューヨーク・フィルでも演奏された。オリジナルにほぼ忠実な<ボレロ>のオーケストラの演奏上で、小曽根のピアノが高音域を中心に美しい響きを添えて色彩感を拡張し、エリック・ミヤシロは、トランペット、フリューゲルホーン、ピッコロトランペットを駆使して高音のフレーズが舞う。ただ、ホールの構造と、楽器の指向性の違いで、2階、3階席ではトランペットの音に比べ、ピアノの音が届きにくかったという指摘はあり、ホールAクラシック公演の永遠の課題ではあるけれど、PAの最低限の活用も含め何か解決があるとよいと思う。<ボレロ>というシンプルに見えて究極の完成度を持つ素材に真っすぐに向き合いながら音楽を創る二人に魅せられ、クライマックスに向け会場は熱狂に包まれ、ホールAがスタンディングオベーションに。これは5日と6日のホールA最終公演では起きなかったことで、まさに2017年最大の「熱狂の瞬間」だった。LFJ2018開催が最終的に決断されたのもこの公演の熱狂が主催者の背中を押したのではないかと思っている。

#244 2017.5.5 15:00-45 Hall C
“カルト・ブランシュ” “Carte blanche”
小曽根 真Makoto Ozone (pf)
アレクセイ・ヴォロディンAlexei Volodin (pf)

(デュオ) モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ短調K.488から 第1楽章
(ボロディン・ソロ) ショパン:アンダンテ・スピアートと華麗なる大ポロネーズop.22
(小曽根ソロ) ピアソラ:ローラズ・ドリーム
(デュオ) モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ短調K.448から 第3楽章
レクオーナ:アンダルシア組曲より ヒタネリア
デューク・エリントン:Cジャム・ブルース
(Duo) Mozart: Sonata for two pianos in D Major K.448, 1st Movement
(Volodin solo) Chopin: Andante spianato and Grand Brilliant Polonaise, Op.22
(Ozone Solo) Piazzolla: Laura’s Dream
(Duo) Mozart: Sonata for two pianos in D Major K.448, 3rd Movement
Lecuona: Gitanerias
Duke Ellington: C Jam Blues

1977年サンクトペテルブルグ生まれ39歳のアレクセイと、いつか一緒にやろうと話していた1961年生まれ小曽根の共演がついに実現ということなのだが、ネットで調べてもアレクセイとジャズ、アレクセイと小曽根の接点は見つからず、予習段階で二人の距離感が全くわからなかった。そして当日演目が発表される”カルト・ブランシュ”(白紙の意味)。ステージに表れた二人が奏で出すのは少し速めのモーツァルト<2台のピアノのためのソナタ>の息の合った演奏。続いてアレクセイのソロでショパン<アンダンテ・スピアートと華麗なる大ポロネーズop.22>は美しく透明で切なく素晴らしい。小曽根はピアソラが愛妻に捧げたタンゴ<ローラズ・ドリーム>を。圧巻はアンコールの2曲。キューバのエルネスト・レクオーナ・カサドの<アンダルシア組曲>より<ヒタネリア>のラテンピアノでの熱い応酬。ここまでラテンの興奮に満ちたピアノを弾くとも思っていなかったが、さらに続く<Cジャム・ブルース>でブルースのソロを二人が巧みにとる。アレクセイはジャズの真似事ができるクラシックピアニストとしてではなく、おそらく小曽根の期待さえも超える自由なコミュニケーションをし、音を聴き合いながら自在に音を作り出し、響き合えるピアニストとして、目の覚めるようなデュオコンサートを作り上げた。チケットが入手できず体験できなかった方も多いので、再びの共演をぜひ期待したい。

#246 2017.5.5 19:00-45 Hall C
フランス国立ロワール管弦楽団 Orchestre National des Pays de la Loire
パスカル・ロフェ指揮 Pascal Rophé (conductor)
竹澤 恭子 Kyoko Takezawa(Vn)

シベリウス:悲しきワルツ
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV1005 から ラルゴ
Sibelius: Valse Triste
Siberius: Concerto for Violin and Orchestra in D minor op. 47
Bach: Sonata No. 3 for Solo Violin in C major, BWV 1005, Largo

リハーサル風景

オールシベリウスプログラムで、フィンランドの厳しく幻想的な自然風景とダンスを表現するコンサート。劇音楽<クオレマ(死)>の中から抜き出された<悲しきワルツ>では、死の床にある母と見守る息子を描く。母は舞踏会の夢を見て亡き父と踊るが、それは死神で母を連れ去っていく。ロワール管の音楽監督パスカル・ロフェの指揮する死の淵での安らかで怪しいワルツのリズムと弦の響きに、文字通り怖いように引き込まれた。この生暖かい響きは病み付きになりそう。
<ヴァイオリン協奏曲>では、冒頭の無伴奏ソロから竹澤は観客の気持ちを鷲掴みにした。竹澤の持ち味である、音量・音域によらず一貫した繊細かつ力強い表現力を余すところなく発揮し、数あるヴァイオリン協奏曲でも難曲とされるシベリウスを弾き切って、惜しみない拍手を受けていた。
アンコールではバッハを穏やかにソロで奏で、心に沁み入る演奏だった。

#216 2017.5.5 21:30-22:30 Hall A
ルネ・マルタンのル・ク・ド・クール〜ハート直撃コンサート
“Concert Coup de Coeur de René Martin”

テンベンベ
リシャール・ガリアーノ六重奏団
ドミトリ—・リス 指揮
ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
Tembembe traditional mexican music
Richard Galliano Sextet accordion and strings
Ural Philharmonic Orchestra
Dmitri Liss conductor

【テンベンベ】グアビーナ──ガジャルダ・ナポリターナ──エル・ハラベ・ロコ
ベレス民謡/アントニオ・バレンテ──ソン・ハローチョ(ベラクルス地方のソン)
【リシャール・ガリアーノ六重奏団】ガリアーノ:マルゴーのワルツ、クロードのためのタンゴ
【ウラル・フィルハーモニー管弦楽団】
マルケス:ダンソン第2番
マルケス:コンガ・デル・フエゴ
バーンスタイン:「ウエストサイド物語」から マンボ
<Tembembe> Guabina – Gallarda Napolitana – El Jarabe Loco Canta de Vélez – Antonio Valente – Son jarocho
<Richard Galliano Sextet> Galliano : La Valse à Margaux, Tango pour Claude
<Ural Philharmonic Orchestra> Marquez : Danzon no.2, Marquez : Conga del Fuego, Bernstein: Mambo from West Side Story

ルネ・マルタンの特にお勧めする音楽をまとめて届ける、中日のハイライト”ルネ・マルタンのハート直撃コンサート”。メキシコからのテンベンベ、1950年フランス生まれのアコーディオン奏者リシャール・ガリアーノをまとめて聴けるお得なプログラムだった。リシャールにピアソラを弾かせるのではなく、自曲を存分に弾かせるのもいい。
そして、オーケストラの演奏で、メキシコの作曲者アルトゥロ・マルケスが1993年に作曲した<ダンドゥン第2番>へ。最近、世界でもよく演奏される人気曲で、ラテンの躍動感でホールAの観客の心を揺さぶった。最後はバーンスタイン『ウエストサイド物語』から<マンボ>で締め括った。

#343 2017.5.6 13:30-14:45 Hall C
クリストフ・バリサ (語り) Christophe Balissat récitant
ロランス・アミー (巫女) Laurence Amy pythoness
リュシー・シャルタン (ソプラノ) Lucie Chartin soprano
マリアンヌ・ベアーテ・キーランド (メゾ・ソプラノ) Marianne Beate Kielland mezzo-soprano
エンドリク・ウクスヴァラフ (テノール)  Endrik Üksvärav tenor
ローザンヌ声楽アンサンブル Ensemble Vocal de Lausanne
シンフォニア・ヴァルソヴィアのメンバー Members of Sinfonia Varsovia
ダニエル・ロイス (指揮)  Daniel Reuss conductor

オネゲル:オラトリオ「ダヴィデ王」
Honegger : Le Roi David

アルテュール・オネゲルのオラトリオ<ダヴィデ王>は、日本で演奏される機会が少なく、ローザンヌ声楽アンサンブルによる演奏は、ルネのいちおし企画の一つだった。オネゲルが高く評価されるようになったのは、1921年の<ダヴィデ王>から。そして1925年の<パシフィック231>で人気を確立する。今回は、フルオーケストラに編曲される前のオリジナル版に近い、管打楽器をメインにコントラバス1本を加えた17人編成による演奏となった。感覚的には小編成の吹奏楽だ。穏やかだが色彩感に富んだアンサンブルに、美しい透明感のある声がホールCに広がって行く、オネゲルの美しい音響を楽しむことができた。

#324 2017.5.6 16:00-16:45 Hall B7
宮田まゆみ(笙) Mayumi Miyata (shô)
オーヴェルニュ室内管弦楽団Orchestre d’Auvergne
ロベルト・フォレス・ヴェセス指揮 Roberto Fores Veses (conductor)

細川俊夫:セレモニアル・ダンス
細川俊夫:ランドスケープV (笙と弦楽四重奏のための)
テレマン:組曲ト長調「ドン・キホーテのブルレスカ」
Hosokawa : Ceremonial Dance for string orchestra (2000)
Hosokawa : Landscape V for Shô and String Quartet
Telemann : Suite in G major “Burlesque de Quichotte”

細川俊夫は、1955年生まれで日本とドイツを拠点に活躍、現在、武満徹に次いで海外で演奏される機会が最も多く高い評価を受けている日本人作曲家だ。『Landscapes』(ECM NS2095、2011年)に収録された<セレモニアル・ダンス>(2000)と、宮田まゆみの笙と弦楽による<Landscapes V>(1993)を聴く貴重な機会。いずれもいわゆるダンス的なビート感ではないが、弦の響きが多層的に絡み合い、自然界のさまざまな波動やスピンが孤独に平行して存在しながら、かすかに影響し合い、結びついて行くような観念の中でのダンスと感じた。宮田まゆみの笙のハーモニーが弦の異なる響きをたぐり寄せていく感覚も心地よく感じられた。今後もLFJで細川作品が紹介されることに期待したい。

2017.5.5 20:30-21:20 Hall E Kiosk Stage
フォルニュイFolle Nuit 「パーカッションの響宴」
オルケスタ・ナッジ!ナッジ!Orquesta Nudge! Nudge!
芳垣安洋、岡部洋一、高良久美子、関根真理、川谷龍大、Taichi、高田陽平、中里たかし、辻コースケ、イズポン(perc 他)

ホールE キオスクステージの遅い時間にみんなで踊ることを意識したイベント「フォル・ニュイ」つまり、熱狂の夜。3日間に「阿波踊り」「オルケスタ・ナッジ!ナッジ!」「テリー・ライリー/in C」が用意された。オルケスタ・ナッジ!ナッジ!は、芳垣安洋が、2003年に結成した打楽器集団で、岡部洋一をはじめ日本打楽器界の精鋭を集め世界各地の民族打楽器をはじめありとあらゆるパーカッションを駆使して強力なグルーヴを叩き出してきた。また一般公募型での活動も続け、「アンサンブルズ東京」、「フェスティバル東京」、浅草の「アンサンブルズパレード」など大友良英プロデュースでのイベントも含め、打楽器制作から、即興的合奏まで、たくさんの人を巻き込んできた。ジャズ寄りでは渋さ知らズの出演は定番になり、打楽器では林英哲が常連になって来たが、それとは異なるアプローチも欲しかったところでオルケスタ・ナッジ!ナッジ!の出演はよかったと思うし、実際、芳垣のディレクションのもと、観客が熱心に踊りに参加する空間を作り出すことに成功した。
なお、ナッジ!ナッジ!とも深く関連する大友良英は作曲家としてLFJ2016に取り上げられたことはあるが、福島原発事故を巡って「EXILE」的な音楽の流れもあり、音楽の熱狂を生み出す存在として、また大友良英ビッグバンドに見られるような管打楽器との関わりでも、いつかLFJと大友が結びつくことを期待したい。

#316 2017.5.6 21:30-22:40 Hall A
ヴァルソヴィア・パーカッション・アンサンブル Varsovia Percussions Ensemble
ネルソン・ゲルナー Nelson Goerner (pf)
テディ・パパヴラミ Tedi Papavrami (vn)
シンフォニア・ヴァルソヴィア Sinfonia Varsovia
廖國敏 リオ・クォクマン Lio Kuokman (conductor)

ベネッティ:ロック&ドラム
サン=サーンス:オペラ「サムソンとデリラ」から バッカナール
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ op.28
ハチャトゥリアン:「仮面舞踏会」から ワルツ
ハチャトゥリアン:剣の舞
リスト:死の舞踏
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番・第3番・第17番・第5番
Benetti : Rock ’n Drum
Saint-Saëns : Bacchanale, from Samson et Dalila
Saint-Saëns : Introduction and Rondo Capriccioso op.28
Khatchaturian : Waltz, excerpt from Masquerade
Katchaturian : Sabre Dance
Liszt : Totentanz (Danse macabre)
Brahms : Hungarian Dance no.1, no.3, no.17, no.5

熱狂の3日間を締め括るファイナルコンサート。マカオ出身の指揮者リオ・クウォクマンの振るシンフォニア・ヴァルソヴィアのもとでの、ネルソン・ゲイナーのピアノ、テディ・パパヴラミのヴァイオリンの素晴らしいソリストとともに繰り広げられたコンサートは素晴らしかった。最後は、「La Dance」で最も多く演奏された曲ブラームス<ハンガリー舞曲 第5番>で締め括られた。
残念ながら、#216ルネ・マルタンのハート直撃コンサートも同様だが、ホールA最終公演での空席が目立ち、アンコールもなく終了した。20時頃までに他の公演がいったん終わり、21:30開演まで間が空くので、それを待たずに観客が帰ってしまう傾向はあると思う。翌年へ熱狂を繋いで行くことにもなるので、そこをうまく企画・演出し盛り上げて行けるとよいと思う。

たくさんの方々の努力で無事閉幕した「La Dance」。その実現と運営、いただいた感動に深く感謝したい。総合的には、言うまでもなく素晴らしい熱狂の3日間となった。
今回、2017年の動員数やチケット販売などを数字で見ていないので感覚的な話に留まるのだが、例年よりも公演数が減り、盛り上がりも若干控えめであった気はする。公演が減った中でも演目に対する需要は高かったため、お目当てのアーティストが1公演しか出ていなくて、早くに完売して全く聴けないという現象も起こりやすかった。たとえば今回取り上げた公演の中にも、児玉桃&竹澤恭子、小曽根真&アレクセイ・ヴォロディンを始め入手困難なものも多かった。他方ホールA公演には空席が目立ち、他ホールでも完売しない公演は比較的あった。観客参加型「みんなで○○」演奏企画の休止、ボランティア制度停止なども有機的に繋がれる感覚にも影響があったかも知れない。今年に始まってことではないが、概要・演目発表から当日までのタイムラインに工夫があってもよいのかも知れない。以前試みられたプレイベントとSNSの活用も、十分なリードタイムがあれば有効だろう。

ともあれ、厳しい経済状況の中にあっても、LFJ2017最終日にLFJ2018開催も無事発表されたことは喜ばしい。会場を含めて持てるリソースを活用し、革新と伝統を絶やすことなく存続させた意味は大きく、LFJ2018がより素晴らしい「熱狂の日」となるように参加・協力して行きたい。

【関連リンク】
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017
https://www.lfj.jp/lfj_2017/
La Folle Journée de Nantes
http://www.follejournee.fr/en
挾間美帆 公式ウェブサイト
http://www.jamrice.co.jp/miho/index.html
Toshio Hosokawa / Landscapes (ECM NS2095) – ECM Player
http://player.ecmrecords.com/hosokawa
児玉 桃『点と線』(ECM NS2509) 日本語字幕付きPV

【JT関連リンク】
La Folle Journée de Nantes 2016 “la nature”
ラ・フォル・ジュルネ2016「la nature」〜ナントのレポートと東京のみどころ
http://jazztokyo.org/reviews/live-report/
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2016 – la nature
http://jazztokyo.org/reviews/live-report/post-5904/
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2015 – PASSIONS 恋と祈りといのちの音楽
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report817.html

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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