#894 Gilles Peterson presents 『WORLDWIDE SESSION 2016』

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2016年5月4日(水・祝) OPEN/START 15:00~20:30
新木場STUDIO COAST

Reported by 剛田 武 Takeshi Goda
Photos by the courtesy of Frontier International

 

出演:

GILLES PETERSON
THE SUN RA ARKESTRA featuring MARSHALL ALLEN
The Miguel Atwood-Ferguson Ensemble
日野皓正
SOIL& “PIMP” SESSIONS
松浦俊夫

90年代に<ジャズで踊る>というムーヴメントが世界各地で盛りあがった。日本では折からの渋谷系ブームとも連動し、深夜のクラブで朝までジャズやレアグルーヴで踊り明かすのがトレンドになった。そんな時代の最先端にいたのがジャイルス・ピーターソンとUnited Future Organizationの松浦俊夫だった。その二人が21世紀の最初の15年が過ぎた今、ジャズを基盤にした “大人のための都市型音楽フェス” を企画した。

元々クラブ系とは縁が 薄い筆者にとっては、二人の名前だけなら特に食指をそそられることはない。「So What?(だからどうした?)」という失礼極まりない反応が正直なところ。それが一転、覚醒したのは、サン・ラ・アーケストラ出演の報。Acid Jazz、Talkin’ Loud、United Future Organizationといった90年代DJ/クラブカルチャーを象徴するキーワードとSun Ra ArkestraとMarshall Allenの名前が並ぶと、個人的にはちょっとした違和感を覚えなくもない。しかしサン・ラの現在の人気の高さは、硬派(石頭)なジャズサイドではなく、頭の柔らかいクラブ/サブカル・ピープルからのリスペクトが生んだことは間違いない。かつて権威主義のスクエアヘッドから無視されて埋もれたままの偉人/超人/奇人/変人の発掘にかけては、世界中のレコード箱を掘るDJ連中の右に出る者はおるまい。そんな発掘名人二人が主宰する音楽フェスは、オールスタンディングの会場が満員御礼の盛況になった。

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●ミゲル・アトウッド・ファーガソン・アンサンブル
Miguel Atwood-Ferguson (5 String Violin)
Jamire Williams (ds)
Gabe Noel (b)
Marcel Camargo (g)
Josh Nelson (p, key)
Walter Smith III (ts)

4歳からクラシック・ヴァイオリンを始め、現在はマルチ楽器奏者、作曲家、編曲家、音楽監督、プロデューサー、そして、教育者として活躍するミゲル・アトウッド・ファーガソンが率いる6人組。アメリカで売れっ子のアレンジャーとして、レイ・チャールズやスティーヴィー・ワンダーといった大御所から、ドクター・ドレやフライング・ロータスといった新世代ブラック・ミュージックまで、ジャンルを越えた数多くのミュージシャンと共演している。自らのアンサンブルは、ロバート・グラスパー・トリオのドラマー、ジャマイア・ウィリアムスや、NYの新進気鋭のサックス奏者ウォルター・スミスIII世などの実力派揃い。ロバート・グラスパーやフライング・ロータスに通じるクラブミュージックを通過したフュージョン・ミュージックと呼べるが、ミゲルというラテン系の名前に相応しく、ソフィスティケイトされたメロディーのそこかしこに、火照るような情熱が窺えて、生演奏ならではのスリルを味わえた。こうした未知のアーティストに出会えるのがフェスの魅力である。

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●サン・ラ・アーケストラ・フィーチャリング・マーシャル・アレン
Marshall Allen (as, fl, cl, EVI, Kora)
Knoel Scott (as, vo, perc, dance)
Danny Ray Thompson (fl, bs)
James Stewart (ts)
Cecil Brooks (tp)
Michael Ray (tp)
Dave Davis (tb)
Tyler Mitchell (b)
Francis Middleton (g)
George Burton (p)
Wayne Anthony Smith, Jr. (ds)
Elson Nascimento (Surdo percussion)
Tara Middleton (vo)

2014年の来日公演はブルーノート東京だったので、開放的な空間でアーケストラを体験するのは2003年のよみうりランド以来。松浦俊夫のDJプレイの盛り上がりに、大ステージでこれから始まる宇宙ジャズ楽団の饗宴への期待が高まる。興奮気味のジャイルス・ピーターソンのMCに続き、幕が開くと煌びやかな衣装を身につけたアーケストラの面々が奔放なフレーズでスウィングする。マーシャル・アレンが吹くEVI(Electric Valve Instrument)のカシオトーン風の電子音が、戯画化されたサン・ラのイメージを喚起する。定番の「Spcace Is The Place」やスタンダードやブルース・ナンバーを交え、メロディアスな旋律をバンドが奏でる中、ロックギタリストよろしくサックスを構えてステージ前に進み出て、横歩きでピロピロとフリークトーンを吹き鳴らすマーシャル・アレンのショーマンシップに驚喜する。たとえ30歳若かったとしても彼のプレイの異物感と破壊力は変わらない。ラスト・ナンバーでは、ホーン・セクションがカーニバルのように客席を練り歩き、過去と現在と未来が混然一体となったサン・ラの世界観を拡散し、最初は戸惑い気味だった観客を昂奮のパレードに巻き込んだ。

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●日野皓正+SOIL & “PIMP” SESSIONS
元晴 (sax)
タブゾンビ (tp)
丈青 (p, key)
秋田ゴールドマン (b)
みどりん (ds)
社長 (agitator)
Guest:
日野皓正 (tp)

「爆音ジャズ」「Death Jazz」と呼ばれ、日本はもちろん海外のビッグ・フェスでも活躍するSOIL & “PIMP” SESSIONSは、フェスのトリにぴったり。ファンキーなダンス・ビートに乗せて力強いテーマを吹き捲るサックスとトランペットの二管を始め、メンバーはいずれも凄腕揃いだが、テクニック至上主義ではなく、見(魅)せることを第一に考えている。アジテーターが客を煽るスタイルは、ヒップホップ/ラップのジャズ版といった風情。スペシャル・ゲストの日野皓正も、技よりも派手なパフォーマンスで魅了する。身体を大きく反らせ、頬を膨らませてハイトーンでトランペットを吹き鳴らす雄姿は、楽団の花形がトランペットであることを宣言しているようだった。小学生の時 TV でヒノテルを見て、突然トランペットを習いたいと言い出した弟の気持ちがよくわかった。このステージを観てジャズを志す若者が現れれば嬉しい。

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●松浦俊夫&ジャイルズ・ピーターソン
開演前とステージ転換時に挿入された二人のDJプレイももちろんフェスのメインイベント。90年代にクラブやカフェやCDショップで聴いた覚えのあるボサノバやフレンチポップス、エキゾチカの名曲をノンストップでリレープレイする腕前は、“楽器を演奏しないミュージシャン”と呼ぶにふさわしい。ジャンルの壁を越えてやる!などと気張らなくても、好きな音楽や気になる音楽への興味を追求すれば、自ずと境界を越えたオリジナリティが確立できるのである。ふたりのオリジナリティ溢れる演奏=DJプレイに、満場の観客が両手を挙げて歓声を上げる風景は、音楽の歓びを享受するのに、人種や年齢や性別は関係がない、という明白な事実の証明であった。

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派手な話題性が有る訳でなく、ある程度の音楽マニアでなければ知りえないアーティストを含むラインナップでの5時間半に亘る音楽コンサートが2000人近い観客を動員した事実は、音楽が消費されるだけの現代社会に於ける希望の光となり得る快挙と言っていい。この素晴らしい祭りが来年以降も継続して開催されることを願いたい。
(剛田武 2016年5月25日記)

 

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剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

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