#906 マイク・スターン・トリオ with special guest 渡辺香津美

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Mike Stern Trio with special guest: Kazumi Watanabe
マイク・スターン・トリオ with special guest 渡辺香津美

2016 6.4 21:00- Blue Note Tokyo ブルーノート東京

Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Yuka Yamaji 山路ゆか

Mike Stern (g), Kazumi Watanabe渡辺香津美 (g)
Dennis Chambers (ds),Teymur Phell (b)

1. One Liner (Mike Stern)
2. You Never Know (Mike Stern)
3. That’s All It Is (Mike Stern)
4. What Might Have Been (Mike Stern)
5. Soleil (Kazumi Watanabe)
6. Chromazone (Bob Berg)

EC. Big Naighborhood (Mike Stern)


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マイク・スターンは、1953年1月10日、ボストン生まれ、ワシントンD.C.育ち、1973 年にブラッド・スウェット&ティアーズに参加。渡辺香津美は、1953年10月14日東京都渋谷区生まれ、1971年『インフィニティ』でアルバムデビュー。
インタビューによると、初めて同世代の二人が出会ったのは1979年。YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)ワールドツアーに参加した渡辺がボストン公演へ、そこにタイガー大越&タイガーズ・バクのメンバーだったマイクが訪ねて来たという。1980年にニューヨークで、マイク・マイニエリをプロデューサーに迎えた『To Chi Ka』レコーディングしていたところにマイク・スターンが訪れてきて、その後セッションをしたという。<Unicorn>の印象的なベースラインを弾いていたのが若きマーカス・ミラーで、1981年のマイルス・ディヴィス復活バンドにマイク、マーカス、アル・フォスター、ミノ・シネル、ビル・エヴァンスが参加していたという人脈になっていて、そのライブ盤が『We Want Miles』だ。1981年にはKAZUMI BAND(笹路正徳、清水靖晃、高水健司、山木秀夫)で、ブレッカー兄弟もオーナーだったジャズクラブ「Seventh Avenue South」に出演。そこには復活直前のマイルス・ディヴィスが来ていた。1983年には、ジャコ・パストリアス・バンドのマイクの代役で渡辺が出演する。それぞれ、ステップス・アヘッド、ブレッカー・ブラザーズにも参加している。この時代のマイクのアルバムでは『Upside Downside』が記憶に残る。当時来日したマイケル・ブレッカー・バンドでのレパートリーと重なる点も大きいと思う。

二人の人脈は近くで交叉しており、付き合いは37年に及ぶが、二人の間には距離感はあったようで、2016年1月にニューヨークの「The 55 Bar」のトリオライブに行くと、マイクに「今度、カズミと演奏するかも知れないけど、どうかな?」ときかれた。「それはアメイジングな夢のようなセッションです。カズミの曲を高校で演奏していたし、マイクの曲は大学で演奏していたくらい、大好きな二人の共演になります。」とかなんとか。近くて遠い、遠くて近い二人の共演が楽しみにしながら、その機会はやってきた。

1曲目は<Softly as in a Morning Sunrise>のコードに従ったマイクのオリジナル<One Liners>。ギターセッションにはぴったりな曲で、原曲にあるゆったり感が弱まり、スピード感のあるやりとりで楽しませてくれる。<You Never Know>ではブルージーなフレージングのやり取りを聴かせる。<What Might Have Been>でマイクの美しいバラードに身を委ねる。
今回の共演のきっかけになったのは、渡辺のデビュー45周年記念アルバム『Guitar is Beautiful KW45』でのデュオ。<All the Things You Are>のコード進行に基づいた、渡辺のオリジナル<Soleil>だ。今回のステージでもマイクと渡辺のデュオで演奏された。他の曲では、マイク・スターン・トリオに渡辺のソロが加わる印象があったが。<Soleil>は二人のインタープレイの中で音が繊細に立体的に組み立てられて行く印象で、間違いなく、今回の共演のハイライトだった。
締め括りは、マイクが故ボブ・バーグとのバンドでよく演奏していた<Chromazone>。久しぶりにライブで聴けたのは驚きだし、とても懐かしかった。元気になったデニス・チェンバースのドラムと、アゼルバイジャン出身、イスラエルで育った気鋭のテイマー・フェルのベースが光る。そしてまさか渡辺との共演で聴くことになるとは。
アンコール<Big Neigbourhood>は、マイク&リー・リトナーの共演でも演奏されていた、ギターの絡みを最高に演出してくれる一曲で、熱いソロの応酬を堪能することになった。
二人のプレイとソロをたくさん聴かせてくれたこの公演に会場のギターフリークはしっかり満足したに違いない。人数だけで言えば渡辺ファンの方が多いだろうか。比較すると、マイクは2〜3コーラス以上の長い時間の流れの中でフレーズが生まれ、ハーモニーを創り出すのを感じるのに対して、渡辺は各コーラスのそれぞれのパートで自在なテクニックを活かした高速フレーズを繰り出して来る。どちらが優れているということではなく、音の生まれ方の違いがわかって面白い。全体にマイクのトリオに渡辺が加わったという構造だが、これは今回に限らずランディ・ブレッカーとのバンドでも、小曽根真が加わってもそうだ。欲を言えば、渡辺の往年の名曲<Unicorn>なり<遠州つばめ返し>なり、マイクとの演奏を聴いてみたかった気はする。とはいえ、スタンダードの進行に従う曲も多かったから、ジャズのセッションとして違和感が少なかったとも言える。37年を経て満を持しての共演。二人の益々の活躍に期待して行きたい。

 

【関連リンク】
Mike Stern Official Website
http://mikestern.org

渡辺香津美 公式ウェブサイト
http://www.kazumiwatanabe.net

Mike Stern Trio at Blue Note Tokyo (2016.6.2)
https://youtu.be/rwInD07JUPg

【マイク・スターン× 渡辺香津美】スペシャル・トーク!Guitar is Beautiful KW45
https://youtu.be/Xlng0fufQf4

Mike Stern and Kazumi Watanabe / Jean Pierre
https://youtu.be/B-ioUAo9hKc

【JT関連リンク】
Mike Stern Group featuring Richard Bona – Exclusive Sneak Preview
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report845.html

Mike Stern Band featuring Victor Wooten, Bob Franceschini and Will Calhoun (2015.6.6-7)
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report833.html

Mike Stern Band featuring Makoto Ozone, Dave Weckl and Tom Kennedy (2013.8.27)
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report572.html

Tokyo Jazz 2014
http://www.archive.jazztokyo.org/live_report/report739.html

 

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神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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