# 915 ランドフェス仙川 2016

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2016年9月17日(土)~18日(日)
調布市仙川駅周辺
ディレクター:松岡大

Reported by Makoto Ando 安藤 誠
Photo by Masabumi Kimura 木村雅章

 

 

山海塾舞踏手の松岡大が主宰するランドフェスは、街を巡りながらダンサーとミュージシャンによるコラボパフォーマンスを体験するライヴイベント。8回目を迎えた今回は、昨年、一昨年に続き調布市せんがわ劇場での「JAZZ ARTせんがわ」と同じ日程で開催された。2日間に 亘って繰り広げられたイベントの中から、17日に行われた3つのセッションの模様を紹介する。

 

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daytime session #3

ハラサオリ(dance)×坂本弘道(cello)

台風接近に伴う悪天候が心配された初日だったが、時折晴れ間ものぞくまずますの空模様で一安心。雨が巧まざる演出となるケースもあるけれど、やはり街が舞台のイベントは好天が一番だ。駅前広場での京極朋彦(dance)×庄田次郎(tp)によるユーモラスなセッション、静謐さの中に滲み出る情念の表出が印象的だった細川麻実子dance ×ブルース・ヒューバナー(尺八)に続き、17日昼の部の締めくくりは地元消防団の建物でのライヴ。今回がランドフェス初登場のハラサオリは、ベルリンと東京の2都市を拠点に活躍する注目のダンスパフォーマー。かたや今や仙川の顔ともいえる坂本弘道は、自身がディレクションするせんがわ劇場でのセッション(因みにこの日はPhew、向島ゆり子、早川義夫との共演という豪華なもの)や「JAZZ ART せんがわ」のプロデューサーとしての仕事に加え、このランドフェスにも出演するという多忙ぶり。「JAZZ ART せんがわ」名物となっている前日の自由即興では、投げたシンバルが自分に当たって流血というアクシデントもあったが、幸いこの日のパフォーマンスには問題なさそうだ。会場に入ると、そこには真紅のドレスを纏い、流し台で何かを洗い続けるハラサオリと、チェロに小豆を撒き散らす坂本の姿が目に入る。地元住民の集会場といった風情のロケーションに置くと、それだけで異化効果を醸し出してしまう2人。ハラは流し台の鍋やホワイトボードなどを自由自在に活用して見えないストーリーを紡ぎ出していく。破壊の美学と平穏を希求する想いがないまぜになったかのような坂本のチェロはこの日も絶好調。ラストでは水を撒きながら外に出ていてしまったハラだが、果たしてあの後帰って来たのだろうか?

 

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evening session #1

小暮香帆(dance)×橋本孝之(as)

都内屈指のカフェ激戦区として知る人ぞ知る京王線仙川駅商店街。話題のサードウェーブ系から大手カフェまで、5〜6軒が密集して鎬を削る街の一角「ピポッド」が17日夜の部ファーストステージの舞台だ。ランドフェス初登場となる橋本孝之は、大阪・深江橋のアートギャラリー「ノマル」を拠点に活動する男女ユニット「.es(ドットエス)」のメンバーとしても知られる、異能のサックスプレイヤー。ハーモニカやギターを駆使したソロ作品も数多くリリースしている才人でもある。すぐれて空間的でありながら、あらゆるコンテクストへの帰属を拒絶し、サックス演奏の基本語法を力づくで断線させてしまうようなそのスタイルは、際立って特異なものだ。夜の帳が下りた商店街に、静かな立ち上がりから徐々に湿った空気を切り裂いていくようなアルトの一声が響き、ダンサー小暮香帆が呼応してセッション開始。その場に居合わせた少女が小暮の動きを終始追いかけ、二人芝居のように展開していく様子が楽しい。買い物客が憩うパティオを立体的に使い、激しく走ったかと思うと舗道に寝そべり、また立ち上がり…といったオーディエンスの予測を裏切る小暮の一連の動作が、スタイリッシュかつフリーキーなトーンを放射し続ける橋本と好対照ながら不思議な調和を生み出す。架空のシネマの1シーンが、架空の記憶として蘇ってくるようなセッションだった。

 

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evening session #2

伊東歌織(dance)×高原朝彦(10-string g)

17日夜の部2つ目のセッションでオーディエンスが案内されたのは、暗闇に浮かび上がるブティック。ショウウインドウの中に目をやると、そこには一人踊るダンサーが。「身体は所詮、お供えもの?」をコンセプトにしたダンスプロジェクト「アマキオト」を主宰するダンサー伊東歌織だ。共演のギタリスト高原朝彦の姿は見当たらず、街のノイズ以外の音も聴こえてこない。パントマイムのような時間がひとしきり続き、どうなっているのか?と訝しげにオーディエンスが見守る中、店のエントランスを開けて現れた伊東は、すぐ隣の店の扉を開けて中へ入る。それに続いてオーディエンスも移動。実はこのお店、ブティックと、世界中のビールを集めたバーが中でひとつながりになった「aZi」というお店。バーには高原が控えており、ここからミュージシャンとダンサーのセッションとなる。外部空間と断絶された空間を外から眺める形から一転、オーディエンスと接触しそうなほどの狭小空間を使った密度の濃いダンスが展開され、高原の重層的なギターの音色が絡みつく。アルトサックスの大御所・林栄一とドラムスのマルコス・フェルナンデスから成る自身のバンド「魚一」では、同じ10弦を使ってもパンク的な要素すら感じさせるアグレッシブなプレイを聴かせたりもする高原だが、ひとつひとつのノートに異なる物語性を込めたかのような、ここでの味わい深い演奏は圧巻。伊東も「動きが難しくて腕が攣りそうになった」と終演後に語るほどの熱演を披露してくれた。

 

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今回はこの他にも、18日昼の部ではヒカシュー巻上公一と舞踏家・大野慶人との共演や、松岡大(舞踏)と齋藤徹(cb)による1時間のスペシャルライブなど、各回ごとに異なる舞台や見どころが用意され、各回とも定員を上回るオーディエンスを集めた。「このフェスでしか見られない先鋭的なパフォーマンスを街場に持ち込む」というランドフェスのコンセプトが着実に根付きつつあることを実感できた2日間だった。

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安藤誠

安藤 誠(あんどう・まこと) ライター/コピーライター。広告制作事務所代表。音楽関連イベントや障害児向けワークショップの企画・運営も手がける。

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